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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    狙撃される宜野座さんと看病する狡噛さんの話。

    #PSYCHO-PASS

    神頼みなんてらしくないな ギノが狙撃された。任務中の出来事だった。彼はビルの高層階でターゲットを狙っており、スポッターとなった須郷とともに行動していた。まだ須郷がいて良かった。捕虜にでもなれば目も当てられない悲惨な状況に落とされただろうから。だが、俺はそこにいなかったことを後悔した。俺は出島の街を歩き、ギノが狙っていた敵に接近しようとしていた。当初はギノは撃つつもりはなかっただろう。だが、俺のターゲットはギノを確認し、自分が殺されるかもしれないと部下に命令してギノを撃った。そうして彼は今集中治療室にいる。花城は大丈夫だと言った。俺もそれを信じている。信じて彼の手を握っている。包帯を頭に巻かれた、彼の手を握っている。
     ギノは頭を撃たれたのだそうだ。あちらの狙撃手も腕が良かったのだろう。俺は彼が後遺症を残さないことを祈って、ただ、ただ神に祈った。かつては無神論者とドッグタグに書いた俺がである。神頼みなんてらしくないなと思いつつも、それでも祈らずにはいられなかった。ただ助かってくれと静かに祈る時、人は神を見るのだろう。静かに誰かの無事を願う時、人は神を見るのだろう。神なんて信じないって言ってられたのは自分が一人だった時だ。いや、俺は神を信じているのだろうか? 神かどうかなんてどうでもよくて、ただ大きな力に祈っているのではないか。俺はそんなことを思い、静かに息を吐いた。
    「ギノ、愛してる……愛してる……」
     花城たちは俺たちを二人きりにしてくれた。ICUはあちこちで泣き声が聞こえたが、俺はそんな気分にはなれなかった。もし泣いたとしたら、ギノに笑われるだろうから。
     
     ギノが一般室に移されたのは、病院に運ばれて二、三日経った頃のことだった。容体は安定し、後遺症は残るかもしれないが命に別状はないだろうとの医師の言葉に、俺は心底安心した。あとは彼が目覚めるだけだ。だが、ギノはすぐには目覚めなかった。俺たちはその間にも仕事に走り回ることとなり、いくつかの事件を解決した。ギノの代わりに入った新人は便利だったが、俺は彼女と組むことはなかった。それは花城も気づいてくれたのか、彼女は俺と組み、新人を須郷と組ませた。それは須郷にとって苦痛だっただろう。スポッターだった自分だけが助かり、スナイパーだったギノが病院なのだから。そして新しい部下に全てを説明せねばならないのだから。けれど俺はもう限界で、それすら出来なかった。ただ仕事をこなし、それが終わればギノの病室に行った。部屋には誰が置いたのか綺麗な花が飾られており、果物や何やらもバスケットに入って置かれていた。ドーナツやマフィンもある。俺はそれを一つとってむしゃむしゃと食べながら、ギノの頭の側できょうのできごとについて語った。今日は花城がターゲットを狙撃した。ああ見えて大物を扱うのが上手いんだ。昔花城と海外で組んだ時もすごかった。今度お前にも見せてやりたいよ。あぁ、その時俺がどうだったかは聞かないでくれ。散々な目にあったんだから。
     
     ギノが退院したのは一ヶ月後だった。もうこれ以上の回復は見られないとのことだった。目覚めないのが不思議です、そう医師は言った。あとは医療用ドローンに監視させ、何かあったら診察しようとのことだった。花城は何も俺に言わなかった。須郷は辛そうだった。その頃になると俺はどうやって職場に出ていたのかも分からなくなって、新人の女はいつの間にか辞めていた。俺は仕事が終わるとギノの部屋に通い詰めた。彼がついぞおれに見せなかったギノの母親と同じようになった彼は、痩せ細った体を椅子にかけて、大きくとった窓を見つめていた。出島の風景は沖縄のそれとは違う。見せてやれるものなら、もっと美しいものを見せてやりたかった。だが、俺にはそんな権限はないのだった。それにそんなことをしたって、彼が目覚めるわけではない。だがそんなある日、彼の指がぴくりと動いた。俺は歓喜して医師に連絡した。腕が動きました、俺を見て手が動いたんです。しかし、医師はそれは不随意運動であろうと言うだけで診察しなかった。俺は憤怒したが、きっとそちらが正しかったのだろう。
     
    「宜野座の部屋にはまだ行ってるの」
    「まだってなんだ、もう助からないって言いたいのか」
    「ごめんなさい、そんなつもりはないの。あなたがあまりにも根を詰めているように見えたから」
     花城はそう言って俺を慰めた。俺は数ヶ月が過ぎてからもギノの部屋を訪ねて語りかけ、キスをして、手のひらをもんだ。足も硬くなってしまってはいけないからマッサージをした。しかしギノは目覚めなかった。医師はゆっくり行きましょうと言った。きっとそれが正しいんだろう。家族にとっては絶望的なだけで。でも、希望が突然やってくることもある。俺が彼に本を読んでやっていた時、彼が笑ったのだ。そればかりじゃつまらないと。俺は必死に彼にしがみついた。理由は分からなかった。ただ神に祈った。このままでいてくれと祈った。このまま彼を現世にとどめてくれと祈った。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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