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    短い話を放り込んでおくところ。
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    POIPOI 192

    練習問題④
    問2 構成上の反復

    #PSYCHO-PASS
    ##文体の舵をとれ

    青い目の殺人 出島で連続して青い目の男女が瞳を切りつけられる事件が起こった。それは今のところ解決していない。被害者の共通事項を探しても、青い目以外には何もないのだ。年齢も、性別も、宗教も、日本にやってきた理由や出島にやって来た日本人の理由も。この奇妙な事件は連続して起こり、解決はまだ見えない。公安局だけでは手に余ると思ったのか、厚生省は俺たちにも協力を申し出て来た。移民が犯人とみたのかもしれない。ならば俺たちの方が良く知っているし、公安局には不利にはたらくだろう。しかし、俺たちの手に事件が渡って一週間経っても、犯人が見つかることはなかった。その間も青い目の人々は切り裂かれ続け、その美しい目を失った。幸い今は再正技術が発達しているから、彼らは新しい目元の皮膚も、新しい目も得ることが出来た。だが、切り裂かれた恐怖からは一生逃れられないのだ。
    「俺が囮になろうか?」
     冬のある日、狡噛はそう言った。事件が停滞して数日経った日のことだった。それにはもちろん花城も反対した。捜査員を危険には晒せない。というより、ここには青い目をした人間が多すぎて、囮捜査と行くには条件が少なすぎたのだ。
    「あなたじゃ無理よ。でも、あなたって綺麗な目をしてるのね。良く見てなかったけど」
     花城の言葉に、俺は胸を貫かれたような気分になった。青い目、狡噛の目、俺を見る目、それは青く、美しく、そう、美しかった。狡噛の目、セックスの最中に見る目。あれを切り付けるなんて、犯人は何を考えているのだろう。青い目、夜に見ると深くなる海のような目、美しい目。狡噛は美しいのだ、俺が犯人なら彼のトラップに引っ掛かっていることだろう。狡噛は美しい、身体のすべてが、どこまでも美しい。そして一番俺が惹かれる美しさが、彼の目だった。
     犯人はまだ捕まらない。俺たちには力がない。時間もない。そろそろ、タイムリミットだった。青い目を好む、または憎む殺人犯は、狡噛の目を美しいと思うだろうか? 俺はそんなことを思って、再びコンピュータに向かったのだった。隣に座る狡噛の青い目を見つめながら。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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