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    佳芙司(kafukafuji)

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    リンク集【https://potofu.me/msrk36

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    POIPOI 71

    園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965

    #京園
    kyoto-on

    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
     魚の食べ方にそんな細かい作法がある事など知らなかった。曲がりなりにも海に近い町で旅館業を営む両親の元に生まれておきながら、今まで気に留めた事さえ、なかった。
     茶髪のあの子はマナーや躾をしっかり学べるような家の子なのだなと、一瞬でもその外見や服装で判断しそうになった自分を恥じた。
     今思えばその瞬間には察していたような気もする。彼女はおそらく一般的なそれよりは厳格で裕福で、しかし自由な行動や意思は尊重されているような、理解のある家庭の人間であると。

    「驚かないのね」

     薄着のままで坂道を下る車から脱出し、雑木林を走って、抑えつけてくる男の手に抵抗した彼女の体は擦り傷が幾つも出来てしまっていて痛々しい。
     東京から迎えが来るからそれまで、と二人で話をしていて、その迎えというのが彼女の実家である鈴木財閥の者だと明かされても、あまり重要な情報だとは感じ取れなかった。数日の間に蓄積された彼女の印象とそれを元にした己の推測が、おおよそ見当外れでもなかったのだと判明したからであるし、ただただ彼女に怪我を負わせ怖ろしい目に遭わせてしまった事への不甲斐なさと遣り場のない口惜しさで他のすべてが些事に思えてならなかったからでもある。
     けれども、もし事件がなかったとしてもきっと自分は分かったのではないかと思う。
     ずっと見ていたのだから、その仕草と所作と言動と、すべて目に焼き付けようと必死になっていたのだから。
     あの日から、ひと時でさえ忘れる事のなかった、せめてもう一度ひと目見たいと、名前だけでも知れたならと、愚かしくも願った。彼女こそがその人なのだから。
     彼女に己を認識されて記憶された今、何かを明かされて知らされたところで、たかがそれしきで何が変わるというのか。

    「私の家の事を知っても驚かない人ってそんなにいないわよ。もしかして、思ってたより貴方って面白い人ね」

     知りたい事が増えていく。それは誉め言葉として受け取っていいのだろうかという戸惑いと、好奇心と探究心。彼女を知りたい。自分の事も知ってほしい。これから彼女にとっての自分がどんな存在になるのか、なれるのか。未来の事がこんなにも気掛かりで仕方ないのは初めての事だった。



    〈了〉
    貴女が貴女であること/2023/08/25


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    佳芙司(kafukafuji)

    REHABILI園子さんは正真正銘のお嬢様なので本人も気付いてないような細かなところで育ちの良さが出ている。というのを早い段階で見抜いていた京極さんの話。
    元ネタ【https://twitter.com/msrnkn/status/1694614503923871965】
    京園⑰

     思い当たるところはいくらでもあった。
     元気で明るくて表情豊か。という、いつかの簡潔な第一印象を踏まえて、再会した時の彼女の立ち居振る舞いを見て気付いたのはまた別の印象だった。旅館の仲居達と交わしていた挨拶や立ち話の姿からして、慣れている、という雰囲気があった。給仕を受ける事に対して必要以上の緊張がない。此方の仕事を理解して弁えた態度で饗しを受ける、一人の客として振る舞う様子。行儀よくしようとしている風でも、慣れない旅先の土地で気を遣って張り詰めている風でもない。旅慣れているのかとも考えたが、最大の根拠になったのは、食堂で海鮮料理を食べた彼女の食後の後始末だった。
     子供を含めた四人の席、否や食堂全体で見ても、彼女の使った皿は一目で分かるほど他のどれとも違っていた。大抵の場合、そのままになっているか避けられている事が多いかいしきの笹の葉で、魚の頭や鰭や骨を被ってあった。綺麗に食べ終わった状態にしてはあまりに整いすぎている。此処に座っていた彼女達が東京から泊まりに来た高校生の予約客だと分かった上で、長く仲居として勤めている年輩の女性が『今時の若い子なのに珍しいわね』と、下膳を手伝ってくれた際に呟いていたのを聞き逃す事は勿論出来なかった。
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    DONE第8回キスブラワンドロライ
    お題は『年の瀬』でキースの家を大掃除する話。甘々キスブラ

    読み切りですが、続きっぽいものを1日と3日(R18)で書く予定。
    「今日こそはこの部屋を片付ける。貴様の家なのだからキリキリ働け」

    年の瀬が差し迫った12月のある晴れた日の朝。
    キースがまだベッドに懐いていると、部屋まで迎えに来たブラッドに首根っこを捕まえられ強引に引きずりだされた。
    ジュニアの「キースが暴君に攫われる~」という声をどこか遠くに聞きながら、車の後部座席に放り込まれる。車には既に掃除道具を積んであったようで、すべての積み込みが完了すると、ブラッドは急いで車を発進させたのだった。

    「まずはゴミを纏めるぞ」
    家に到着早々ブラッドは床に転がった酒瓶をダンボールに入れ宣言どおりに片付けを開始する。次に空き缶を袋に集めようとしたところで、のそのそとキースがキッチンに入ってきた。
    「やる気になったか」
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    ぼーと歩くキースは、無言のままブラッドの背後を通り越し冷蔵庫の扉を開ける。
    水と缶ビールばかりが詰め込まれた庫内が見え、ブラッドは呆れた溜息を尽く。
    「ま 3484

    佳芙司(kafukafuji)

    MOURNING出来上がってるオスアキのオスカーが昨夜の名残をジェイに見られてしまう的なアレ。
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     エリオスタワー内のジム設備があるフロアにて、こそこそとロッカールームに入っていく背中を見つけた。人目を気にするような、それとなく周囲を伺っているような。ただそのたった今入室していった人物がオスカー・ベイルだったので、ジェイ・キッドマンは思わず、んん? と声に出して首を傾げた。
     ジェイは以前、同チームのグレイ・リヴァースとトレーニングをした際に『人の目があると落ち着かないからロッカールームに人のいない時に着替えている』と話していた事を思い出した。彼は自分の筋肉のつきにくい体質や筋力不足を気にしていたようだが、果たしてかのオスカー・ベイルが、それを気にするような男だろうか。否や寧ろ逆であろう。
     オスカーがシャツを脱いでエリオスタワー内のジム器具を利用している様子は何度も見かけているし、自己鍛錬と研鑽に妥協のない男だから、まだまだだと冷静に己を見つめる事はあれど、人目から隠れて着替えようとするほど卑屈になる事はないだろう。ここは間を置いてから入るべきかと思ったが、もし何か思うところがあって体を縮こまらせているのならば、その悩みを聞くくらいは出来るし、何か人にいえないような怪我を負っているならば早急に確かめなければならない。
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    佳芙司(kafukafuji)

    CAN’T MAKE【エリオ腐R】一進一退のお付き合い始めたばかりのオスアキ。書き続けるの飽きたので区切りのいいところでおしまい。
    恋人はじめ(オスアキ)あれ? と思った時には遅かった。
    たった今自分は何を言ったんだったか。思い返してアキラは瞬く間に顔を真っ赤に染め上げた。ぱくぱくと口を開いては閉じ、言葉にならない声が口から零れ落ちる。

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    言い訳しようとアキラは必死になって言葉を探ったが何も見つからない。熱が頬に集中してまともに頭が回らない。どうしようもなくなって両手で顔を覆うしか出来なかった。

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