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    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

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    すずもち

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    主従の若干フェンヴァルみ
    酔った執事と可愛いやつめ的な閣下

    #ディスガイア4
    disgaea4

    酔月夜久々にフェンリッヒとサシで晩酌をした。何かと忙しなくしているシモベの労をねぎらうという意味もあってシモベの好みそうな酒をいくつか見繕って持って行った。何百年も連れ添った気の置けない関係でもある二人であればすっかり日を跨ぐ頃合いまで飲んだのも必然と言えるだろう。ただ明日は休みだしそれは別に構わない、たまには悪魔らしく心ゆくまで酔いに身を任せるというのも悪くない。
    ただ一つだけ誤算があったのは確かである。
    「酒に弱かったのだな……フェンリッヒは」
    下に目線を向けるとそこにはソファにもたれるヴァルバトーゼに抱き付いて穏やかに眠っているフェンリッヒがいた。先程数回名前を呼んだがまったく反応が無かったので寝ているのは確かだ。時折寝言で閣下と呟いているがどんな夢を見ているのやら。
    力ではヴァルバトーゼも負けていないので引き剥がすのは容易ではある、が流石に普段から働き詰めの男が酒に酔って寝ているのを不用意に起こす気はいくら悪魔とはいえ無かった。
    「ふふこんなに無防備でいるとは……珍しいな」
    胸に頭を預けているフェンリッヒの髪を払って寝顔をじっと眺める。これが数百年を共にした男の寝顔か、普段の常に策謀を張り巡らせている威圧的な雰囲気は欠片もなくただただ穏やかさだけがあった。
    「……かっか」
    「そう何度も呼ばずともここに居るとも、フェンリッヒ」
    日頃のきびきびとした雰囲気はどこへやら、すっかり脱力して寝そべっている姿は狼よりも猫のそれを連想させる。
    「ふふふ、たまにはお前とこんな風に過ごすのも悪くはないな」
    後ろの窓に目を向けると今夜は偶然にも満月が登っていた。まるでかつての夜の月を連想させるが今の状況と昔のあの時の状況があまりにも違いすぎていて、そのおかしさに吸血鬼は喉を鳴らして笑った。そしてゆるやかな眠気が忍び寄ってきたのを感じたヴァルバトーゼは力を抜くと目を瞑った。

    何だか良い夢を見ていた気がする。そう思いながらフェンリッヒは目を覚ました。一瞬ここがどこだか分からなくなったが、昨晩主と酒を飲み交わしたことに思い至る。どうやら情けないことに酒で眠くなり自室にも戻らず寝てしまったらしい。
    そういえば主はどこだろうと起き上がろうとしたとき何かをずっと抱き締めていたことに気が付く。何だと腕のなかに目をやるとそこにいたのは今探そうとしていた主だった。
    「……え?」
    主はフェンリッヒが身じろいだことで一瞬眉をしかめてもぞりと動く。不味いと反射的に思って、起きてくれるなと心の底から願ったが呆気なくヴァルバトーゼの目蓋がゆっくり持ち上げられる。
    「ん……?あぁフェンリッヒか、もう朝か?」
    眠たげな瞳でそう問うてくる主に対してまだ状況を咀嚼できていないフェンリッヒはしどろもどろに答えるしかなかった。
    「は、あ、えっとそうですね……」
    「どうした、朝から動揺してるようだが」
    「い、いえ何でもありません」
    「そうか?なら起きねばな、離してくれ」
    「も!申し訳ありません閣下!」
    ぱっと腕の拘束を解いてソファから飛び退くように降りるとフェンリッヒは直角に頭を下げた。恐らく酔った拍子の行為であることは想像に難くないがそれにしたってあり得ないことである。いくらなんでも主従の距離感ではないし完全に不敬に値する。とんでもないことをしてしまったと冷や汗が流れ主の顔をまともに見ることができない。
    「そこまで謝るほどでは無いぞ、起こさなかった俺にも責はあるしな」
    「酒に流された私が全面的に悪いことは前提として、今後もし私が酔っておかしなことをしたら殴ってでも良いので起こしてください!」
    「落ち着け、別にこのぐらい構わんぞ」
    ヴァルバトーゼの寛大な心がこの時ばかりは重ねてダメージを負わせてくる。今後はよくよく気を付けねばならないと執事は密かに心に誓った。そして酒に負けたことがよっぽど堪えたのかこの日は小言の多い執事がすっかりおとなしくなって過ごしていた珍しい日となった。
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    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    CAN’T MAKE11/5新月🌑執事閣下🐺🦇【俺の名を、呼んで】今、貴方を否定する。
    「呼んで、俺の名を」の後日談。お時間が許せば前作から是非どうぞ→https://poipiku.com/1651141/5443404.html
    俺の名を、呼んで【俺の名を、呼んで】



     教会には、足音だけが響いている。祭壇の上部、天井近くのステンドグラスから柔い光が射し込んで、聖女の肌の上ではじけた。神の教えを広め、天と民とを繋ごうとする者、聖職者。その足元にも、ささやかな光を受けて影は伸びる。
     しんと凍えそうな静寂の中、彼女はひとり祭壇へと向き合っていた。燭台に火を分け、使い古しの聖書を広げるが、これは決してルーチンなどではない。毎日新しい気持ちで、彼女は祈る。故に天も、祝福を与えるのだろう。穢れない彼女はいつか天使にだってなるかもしれない。真っ直ぐな姿勢にはそんな予感すら覚える眩しさがあった。

     静けさを乱す、木の軋む音。聖女ははたと振り返る。開け放っていた出入口の扉がひとりでに閉まるのを彼女は遠目に見つめた。風のせいだろうかと首を傾げれば、手元で灯したばかりの蝋燭の火が揺らめき、何者かの息によって吹き消える。不可思議な現象に、彼女の動作と思考、双方が同時に止まる。奏者不在のパイプオルガンがゆっくりと讃美歌を奏でればいよいよ不穏な気配が立ち込める。神聖なはずの教会が、邪悪に染まっていく。
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