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    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

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    すずもち

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    フーデスと閣下
    DRPGのイワシカレーが元ネタ
    フーデスと閣下がイワシカレーを作る話

    #ディスガイア4
    disgaea4

    イワシカレーチャレンジ!一連の騒動に終止符が打たれ、すっかり平和を取り戻した魔界であってもフーカは大いに不満を抱いていた。それは結局この悪夢が覚めなかったことに対してもだが自分の夢だというのに自分の待遇が大きく変わらなかったことに対してである。
    「おねえさま~ヴァルっちさんから日給のイワシを貰ってきたデスよ」
     ちょっと姿が変わっているが健気で可愛い妹が目の澄んだ新鮮なイワシを携えてやってくる。別にイワシは良い、嫌いじゃ無いしでも。
    「あー!もう!なんで世界を救ったのに私の日給がイワシなのよ!?毎日毎日イワシってせめてチョコレートとかにしなさいよね!」
    「チョコレートなら良いんデスか?」
    フーカはデスコが持って来た艶々としたイワシの尾を摘まみあげると恨めしげに見つめる。そう、結局フーカの待遇はプリニーと大差無いままここまで来てしまったのである。イワシ自体は食べられるが、こうも毎日同じ魚が続くと飽きが来る。せめて高級和牛並みの味になってくれれば……。
    「おねえさま、それはイワシに求めるポテンシャルじゃないデスよ……」
    「でもアンタだって毎食イワシじゃあ嫌でしょ?こう良い感じに美味しくなってくれれば良いのに」
    生姜煮も甘露煮も炊き込みご飯も試した。他にどうしろというのかとフーカが頭を悩ませているとデスコが何か閃いたようにおもむろにリーフレットを取り出す。
    「何よ、それ?」
    「これはヴァルっちさんが監修しているイワシのレシピなのデス。イワシの布教のために毎週刊行してるらしいデスよ」
    「何でそこまでイワシに情熱を注げるんだか……。で、それには何の料理が載ってるの?」
    「なんとこれにはイワシカレーの作り方が載っているのデス!」
    「か、カレー?イワシの?」
    魚介類を使ったシーフードカレー自体は知っているし、食べたこともあるがあれはどちらかというと貝類やエビがメインの料理である。イワシを入れても美味いのかと半信半疑でリーフレットを覗き込むと、想像に反して美味しそうな見た目の写真が視界に映る。
    ただイワシ一匹がまるごと豪快にルーに載っていたのは驚いたが。
    「へー、美味しそうじゃない。カレーかぁそういえば最近食べてないわね」
    「今なら厨房借りられそうデスよ、作ってみるデスか?」
    「そうね!それにたまには乙女の嗜みとして料理するのも悪くないわね」
    時刻は夕刻を指していた、そろそろ有職の頃合いである。空腹もあってフーカとデスコは足早に厨房に向かった。

    「さーてクッキングの時間よ、じゃあまず食材を切らなきゃね。カレーなんだから人参とジャガイモと玉ねぎが欲しいわね」
    「食材持ってきたデス、デスコが魔チェンジして切った方が良いデスか?」
    「そんな大剣使ったら粉々になっちゃうでしょ。まぁ見てなさい、私だって実質一人暮らししてたんだからね、このぐらい朝飯前よ」
    自信満々に言うと腕まくりをしてフーカは包丁を握った。ゆっくりではあったが洗った食材を一口大に切っていき、食材をボウルに入れていく。さて次はと目線をさまよわせるとデスコがバットに入ったイワシを持って来た。
    「じゃあ次はイワシデスね」
    「任せなさい、って言いたいところだけど魚は流石に捌いたこと無いのよね。どこをどうすんのこれ?」
    「レシピによると一口大に切ったイワシと一匹まるごとのイワシの二匹を使うと書いてあるデスね。そのイワシはさっきみたいに切っていけば良いんじゃないデスか?」
     切り方そのものはそうだろうが確か魚は下処理とかいうのがあったはずとフーカは包丁片手に考えを巡らす。
    「うーん、えっとまず頭は食べないわよね。それから尻尾も良いはず……。あっワタも取るんだったわ!確か!ええと適当に腹を切ればできるはず」
    「おお流石ですおねえさま!ぽいデスよ」
    「ふっふーん、何とかなっちゃうのよね。じゃあこれでぶつ切りにして……、よし後は炒めて煮込めばできあがりよ」
    手頃な大きさの鍋に油をひき、食材を入れて炒めていく。イワシに火が通った頃合いをみて水を追加し煮込む。時々リーフレットを確認してイワシをまるごと入れたりアクを取ったりして最後にルーを溶かせば厨房中にカレーの匂いが広がった。
    少し冷ましてから食べようと思ったがカレーの香りに刺激された空腹を抑えることは難しく、味見だからと言って二人はカレーを少し取ってぱくりと口に入れた。
    口に広がるスパイシーなカレーの風味によく煮込んだ野菜の甘みが絶妙に混ざり合う。そしてそこにイワシの……イワシ……あれ?
    「な、なんかさー」
    「生臭い?デス、ね?」
    「ど、どうしてよ!ちゃんとレシピ通りに作ったのに!」
    「何か間違えちゃったんデスかね」
    途中までは間違いなく美味しいカレーだったはずなのに魚特有の生臭みが後から追い掛けてきてその味を破壊し尽くしてしまっていた。折角張り切って作った料理が明らかに失敗で、フーカとデスコはがっくりとうなだれる。
    この生臭いカレーをどうしたものかと二人が悩んでいるとそこに固い靴音が近づいてきてその靴音を響かせながらある人物が厨房の入り口から顔を覗かせた。
    「なにやらカレーの匂いがすると思って来てみれば、お前たちだったか。落ち込んでいるようだが、何かあったのか?」
     小首を傾げてそう尋ねてくるヴァルバトーゼにフーカはリーフレットを掴んでそれを広げた見せた。
    「あ、ヴァルっちー!ねぇこのレシピ不完全じゃ無いの?この通りに作ったんだけど美味しくなんなかったんだけど」
    「ふむ、ああイワシカレーかこれがお前たちが作ったものか?」
    「そうなんだけど、生臭いのよ」
    「イワシの生臭さを飲み込めぬとはなんと嘆かわしい、修行が足りておらんぞ。まぁ良い、どれ……」
    スプーンを取ってヴァルバトーゼがまだ鍋に残っていたカレーを掬って口に入れる。もぐもぐと咀嚼してじっくり味を確かめると静かにスプーンを置いた。どんな感想が出てくるやらと若干身構えていると意外にもヴァルバトーゼは悪くないぞと言った。
    「これはこれでイワシの素材そのままの味で良いと思うのだがな。恐らくお前たちはイワシをそのまま入れただろう。こういう魚料理の時は一度湯にくぐらせてから使うのだぞ」
    「えっ!そうなの!?」
    そんなことはレシピのどこにも書いていなかった気がするがと思っているとリーフレットを読んでいたデスコが後ろのページを向けてフーカに差し出す。そこには丁寧に図説的でイワシの下処理と生臭みの処理について記されていた。
    「おねえさまリーフレットの後ろのページにイワシの処理についてちゃんと書いてあったデス……」
    「そうだ、初心者向けにも食べやすい方法はいつも載せてある。確認不足だな」
    確かにそのページには初心者向けに簡単な方法での処理方法を示していた。けれど中身のレシピばかり見ていて後ろのページには気がつかなかったフーカ達にとっては今更どうしようも無くショックだった。
    「えぇー、でもこれもう食べるのキツいし……」
    「うぐっラスボス修行の一環と思えば……!デス」
    「全く、情けないぞ。そんな体たらくではイワシの力を十分に得ることはできないというのに。仕方ないなそこの冷蔵庫を開けてみろ」
    いっそ花を摘まんで食べるか?と考え始めていたフーカが何かあるのかと開けていない大型冷蔵庫の戸を開けると中には鍋が入っていた。そしてその鍋から食欲をそそる香りがふわりと漂う。
    「えっ、これって」
    「それは俺が昨晩作ったイワシカレーの残りだ。お前たちはそれを喰うと良い」
    「良いの?けどこれ生臭かったりは」
    「安心しろ、それはオレが初心者向けのレシピを考案する際に作った試作品だ。当然生臭さは取り除いてある」
    「そうなの、じゃあ貰っちゃうわね。ありがとヴァルっち!」
    失敗したイワシカレー鍋の横で火にかけて、温めなおすとフーカとデスコは今度こそほかほかの白飯にカレーをかけて手を合わせる。そして一口目を食べると口の中にスパイスの風味とそこに溶け込んだ魚の旨味が広がった。
    「すごい、美味しい!」
    「もうおかわりが欲しいくらいデス」
    さっき作ったものと一応同じレシピでできているとは思えないほどクオリティが違う。何ならお店に出せそうなくらいの仕上がりだ。もぐもぐと夢中になって食べていたがふと静かにしているヴァルバトーゼが気になったのでそちらを見るとヴァルバトーゼはフーカとデスコのカレーをもくもくと平らげていた。
    「えっヴァルっちそれ食べれるの?」
    「これはこれでイワシの味を感じられる、悪くない味だ。それに全てのイワシは美味しく食べねば失礼というもの」
    「普段から生食してるだけあるデス」
    「へ、へぇ~人間には分からない味覚だわ」
    既に半分程平らげてしまった自分のイワシカレーの皿に視線を落とす。1日経ってより味に深みが出たカレーはとても美味しいが正直悔しい。フーカだってそれなりに自炊の経験はあるし、食事を振る舞った友人からも美味しいと褒められたことだってあるのだ。今回はたまたま扱ったことのない食材を使ったから失敗しただけだと思うが、やはり納得がいかない。
    それにこれは乙女のプライドも掛かっているのだ。
    「むむぅ悔しいわ。まさかヴァルっちに料理の腕を越されるなんて、乙女としても許せないわ。後で絶対にこれより美味しいイワシカレーを作ってやるんだから」
    そう言ってから残りのカレーをぱくぱく口に入れる。そしてヴァルバトーゼは挑戦とも言えるような発言に小さく喉を鳴らして笑った。
    「ほぅ言ったな小娘、ならばやってみるが良い。言っておくが俺はイワシ料理においてはかなりうるさいぞ」
    「おおーこれがいわゆるクッキングバトルというやつなのデスね!おねえさま、デスコお手伝いするデス~」
    ラスボスの参考になるのかデスコはきらきらと目を輝かせて二人のやり取りを眺める。そんなデスコとは対照的に一心にカレーを食べ進めるフーカはこの後どうやってカレーを作っていくかの算段を立て始めていた。

    それから後日。執務室で業務に励んでいたヴァルバトーゼは腹の具合からそろそろ昼かと見当を付けた。昼食ならばいつものごとくフェンリッヒが運んでくるはずだがと思ってちらりと扉に目をやると丁度ノックが鳴った。フェンリッヒだろうと思って開いてるぞと声を掛けると入ってきたのは執事ではなくフーカとデスコだった。お盆に深皿を載せて持って来たようだがやたら得意げそうな顔をしているのが気になる。
    「何だ、お前たちか。何かあったのか」
    「ふっふーん、ヴァルっちお昼まだでしょ?私たちご飯作ったから今日はこれ食べてみてよ」
    「自信あるのデス、熱いうちにどうぞなのデス!」
    「珍しいこともあるのだな。まぁ良い、丁度腹が減っていたところだ。貰おうではないか」
    手を付けていた書類やらを脇にどけるとフーカが上機嫌に盆を持って来て机の上に置いた。盆の上には深皿とスプーン、そして肝心の皿の中身は。
    「む、カレーか。それも、これはイワシカレー!」
    「ふふ、前に言ったでしょ絶対に美味しいの作ってやるって。色々工夫したのよー。さ、食べて食べて」
    「そうかそれは楽しみだな」
    香りや見た目は非常に良い、特に煮崩れせずイワシまるごとを盛り付けているのは高評価できるだろう。問題は味だ、スプーンを手に取って早速一口分のカレーを掬う。そしてヴァルバトーゼは自信作というそれを食べ始めた。

    数日後、今週のイワシレシピリーフレットとして配られたそれにはイワシカレーの改訂版が載っていた。それを見てフーカとデスコは嬉しくて思わずハイタッチを交わした。

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    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

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    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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