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    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

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    すずもち

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    D6 ゼトメロ
    メロディアのハッピーエンドについて話す二人

    #ディスガイア6
    disgaea6

    未完のおとぎ話昔々、ある魔界にそれはそれは美しいお姫様がおりました。お姫様は歌を歌うことを何よりも好み、毎日森や野原で歌っては蝶や花、悪魔達をその歌で喜ばせておりました。
    そんなある日、破壊神という恐ろしいものがお姫様の住む魔界に攻めてくるという話がやってきます。魔界中混乱に陥りました。なにせその破壊神に狙われた魔界は全て滅んでしまっていたからです。お姫様も大きな不安を感じました。お姫様の歌はあらゆる生き物の心に届きますが破壊神とくれば歌でどうにかすることはできなかったからです。
    ですがお姫様は魔界の希望であり、幸せの象徴でした。お姫様が不安な顔をしていれば他の悪魔や生き物も不安になって希望を失ってしまいます。
    お姫様は誰よりもハッピーエンドを望んでいました、ですからお姫様は破壊神が来てもハッピーエンドになるように行動を起こしました。それは運命の王子様を見つけることです。
    運命の王子様が現れれば破壊神を倒すことができ、お姫様も魔界も幸せになれます。それこそがお姫様の望むハッピーエンドの形でした。
    お姫様は来る日も来る日も王子様を待ちました。そして何人もの個性的な優れた若者と出会いましたがその誰もが破壊神に挑み、破れていきました。
    それでもお姫様は待ちました。ずっと待ちました。いつかハッピーエンドに導いてくれる王子様に出会えると信じて。
    そして倒れていった王子様の数が665人に達した頃、お姫様は666人目の王子様に出会います。その王子様は今までで一番王子様らしくなくて、けれど誰よりも諦めない強い心をもったゾンビでした。

    「ってちょっと待て」
    「どうしたのかしら?ゼット様」
    メロディアは首を傾げて、隣に座るゼットに顔を向ける。ゼットはメロディアの手元にある本を覗き込みながら言った。
    「オレはビーコが好きそうな本を教えて欲しいって言ったんだぜ、それ絶対違うだろ!ってか何だその本!?」
    「あら、これは私とゼット様の出会いからハッピーエンドに至るまでを書いた本よ。素敵でしょ?ビーコちゃんならきっと気に入るわ」
    膝の上の本を閉じてゼットに表紙を向けて見せる。題名はレジェンドオブゼットと記されており、それを見たゼットは大きく目を見開いた。
    「なんでそんなもんがあるんだよ!」
    「私が書いたからよ。だってゼット様と私の馴れ初めのお話はみんなに教えておかなくちゃでしょ?安心してこれはきちんと出版して、国中の本屋と図書館に置いて貰う予定だから」
    「馴れ初めって……お前って何でそういう方面の行動力はやたらあるんだよ……」
    呆れているのかゼットは深々とため息を吐く。しかしよくよく見ると土気色の頬にすこし赤みが差しており、照れが混じっているようだった。
    「善は急げって言うじゃない。でもね、この本まだ未完成なの」
    「書き終わってないってことか?」
    「ええ、なんて言ったってまだハッピーエンドを飾る結婚式を挙げていないんですもの。だ・か・らゼット様」
    にっこりと微笑みながらゼットの瞳をまっすぐ見つめる。けれど顔を赤らめたゼットは明後日の方向に顔を背けてしまった。
    「あー!聞こえないからな!っていうかそんなに結婚式にこだわらなくたって良いんじゃないのか?別にハッピーエンドなんて悪い奴を倒してめでたしめでたしじゃ駄目なのかよ」
    「駄目よ、それだけじゃハッピーエンドとは言えないわ。ハッピーエンドっていうのはね、みんなが本当に幸せになるところまでよ。悪い奴を倒したら平和は訪れるかもしれないけど幸せになったかどうかまでは分からないじゃない」
    「いや、そんなことねぇって思うけど」
    「そう?でもゼット様は破壊神を倒しただけじゃ幸せになんてきっとなれなかったわ。ビーコちゃんとケルベロスの三人で一緒に居られるようになったから幸せになれたんじゃないの」
    「それはまぁ……そうか、確かにお前の言うとおりだな。破壊神を倒してもオレはちっとも嬉しくなんかなれなかったからな」
    当時のことを思い出すようにゼットの眼差しはどこか遠くを見るようだった。彼に似合わない哀しみに彩られた諦念の表情にメロディアは少し胸が落ち着かなくなる。
    「だから、その、お前には感謝してるよ。色々助かったし……。で、でもだからって結婚はちょっと……」
    顔を伏せ、しどろもどろに言葉を続けるゼットにメロディアは優しく語りかける。
    「ねぇゼット様、私今でも幸せだけど、もっともっと幸せになりたいの」
    「随分強欲なんだな」
    「人聞きが悪いわ。そうじゃないの、私はハッピーエンドを追い求めるプリンセスよ、そんな私が愛する人とも結ばれずに終わるなんてちっともハッピーエンドじゃないわ!」
    「あ、愛するって」
    「それにゼット様はもっともっと幸せになるべきだわ、ラララ~私と~結ばれて~ハッピエンドを~迎えましょう~」
    立ち上がり、メロディアは即興で軽やかに歌い出す。そんなメロディアをぽかんとした表情で眺めてゼットは小さく笑った。
    「オレはこんな風にまたビーコとケルベロスと一緒に暮らせるなんて思わなかったからさ、これ以上の幸せってのが分かんねぇんだけど、お前を見てるとこれ以上の幸せってやつが何となく分かる気がするよ」
    メロディアはぱっと表情を輝かせてゼットの方に視線を向ける。
    「本当!なら良かったわじゃあ早速式場選びからね!ゼット様に今日こそは付き合ってもらうんだから」
    そう言ってどこからともなく式場の載ったカタログを何冊も取り出してメロディアはゼットの前に広げてみせるとゼットは固まった。しかしそれに頓着することなくメロディアは付箋のついたページを指さす。
    「こことか綺麗で良いんじゃないかって思ってるの。海が近くで見られるのよ、それにここは天気が良い日が多いらしいし」
    「あ、あー悪くないと思うぜ、でもオレはお前のとこの魔界みたいな場所も良いと思うけど……」
    ゼットの視線の先にはメロディアと初めて会った場所に似た木々に囲まれた花畑の写真があった。それに気が付いてメロディアは嬉しそうに微笑む。
    「私の故郷を気に入ってくれてるのね、とっても嬉しいわ」
    「まぁビーコも好きな場所だし……オレもその、好きだと思うし……」
    声は尻すぼみになるがメロディアにはその言葉ははっきり聞こえた。ゼットの好きという言葉にメロディアは思わずゼットに抱きつく。
    「うわっ!何だよ急に!?」
    「ふふゼット様から好きって言葉が聞けて嬉しくなっちゃったの!」
    「そ、そーかよ……お前は本当オーバーだな」
    ゼットは戸惑ったような声を出すが、メロディアに離れろとは言わなかった。冷たい身体を抱き締めて望んでいたハッピーエンドとはちょっと違うけれど、これもこれで一つのハッピーエンドかもしれないわねとメロディアはふふと笑った。
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    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
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    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923