Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    すずもち

    ディスガイア4、6の話を書いて置くところ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    すずもち

    ☆quiet follow

    D6 ゼトメロ
    メロディアのハッピーエンドについて話す二人

    #ディスガイア6
    disgaea6

    未完のおとぎ話昔々、ある魔界にそれはそれは美しいお姫様がおりました。お姫様は歌を歌うことを何よりも好み、毎日森や野原で歌っては蝶や花、悪魔達をその歌で喜ばせておりました。
    そんなある日、破壊神という恐ろしいものがお姫様の住む魔界に攻めてくるという話がやってきます。魔界中混乱に陥りました。なにせその破壊神に狙われた魔界は全て滅んでしまっていたからです。お姫様も大きな不安を感じました。お姫様の歌はあらゆる生き物の心に届きますが破壊神とくれば歌でどうにかすることはできなかったからです。
    ですがお姫様は魔界の希望であり、幸せの象徴でした。お姫様が不安な顔をしていれば他の悪魔や生き物も不安になって希望を失ってしまいます。
    お姫様は誰よりもハッピーエンドを望んでいました、ですからお姫様は破壊神が来てもハッピーエンドになるように行動を起こしました。それは運命の王子様を見つけることです。
    運命の王子様が現れれば破壊神を倒すことができ、お姫様も魔界も幸せになれます。それこそがお姫様の望むハッピーエンドの形でした。
    お姫様は来る日も来る日も王子様を待ちました。そして何人もの個性的な優れた若者と出会いましたがその誰もが破壊神に挑み、破れていきました。
    それでもお姫様は待ちました。ずっと待ちました。いつかハッピーエンドに導いてくれる王子様に出会えると信じて。
    そして倒れていった王子様の数が665人に達した頃、お姫様は666人目の王子様に出会います。その王子様は今までで一番王子様らしくなくて、けれど誰よりも諦めない強い心をもったゾンビでした。

    「ってちょっと待て」
    「どうしたのかしら?ゼット様」
    メロディアは首を傾げて、隣に座るゼットに顔を向ける。ゼットはメロディアの手元にある本を覗き込みながら言った。
    「オレはビーコが好きそうな本を教えて欲しいって言ったんだぜ、それ絶対違うだろ!ってか何だその本!?」
    「あら、これは私とゼット様の出会いからハッピーエンドに至るまでを書いた本よ。素敵でしょ?ビーコちゃんならきっと気に入るわ」
    膝の上の本を閉じてゼットに表紙を向けて見せる。題名はレジェンドオブゼットと記されており、それを見たゼットは大きく目を見開いた。
    「なんでそんなもんがあるんだよ!」
    「私が書いたからよ。だってゼット様と私の馴れ初めのお話はみんなに教えておかなくちゃでしょ?安心してこれはきちんと出版して、国中の本屋と図書館に置いて貰う予定だから」
    「馴れ初めって……お前って何でそういう方面の行動力はやたらあるんだよ……」
    呆れているのかゼットは深々とため息を吐く。しかしよくよく見ると土気色の頬にすこし赤みが差しており、照れが混じっているようだった。
    「善は急げって言うじゃない。でもね、この本まだ未完成なの」
    「書き終わってないってことか?」
    「ええ、なんて言ったってまだハッピーエンドを飾る結婚式を挙げていないんですもの。だ・か・らゼット様」
    にっこりと微笑みながらゼットの瞳をまっすぐ見つめる。けれど顔を赤らめたゼットは明後日の方向に顔を背けてしまった。
    「あー!聞こえないからな!っていうかそんなに結婚式にこだわらなくたって良いんじゃないのか?別にハッピーエンドなんて悪い奴を倒してめでたしめでたしじゃ駄目なのかよ」
    「駄目よ、それだけじゃハッピーエンドとは言えないわ。ハッピーエンドっていうのはね、みんなが本当に幸せになるところまでよ。悪い奴を倒したら平和は訪れるかもしれないけど幸せになったかどうかまでは分からないじゃない」
    「いや、そんなことねぇって思うけど」
    「そう?でもゼット様は破壊神を倒しただけじゃ幸せになんてきっとなれなかったわ。ビーコちゃんとケルベロスの三人で一緒に居られるようになったから幸せになれたんじゃないの」
    「それはまぁ……そうか、確かにお前の言うとおりだな。破壊神を倒してもオレはちっとも嬉しくなんかなれなかったからな」
    当時のことを思い出すようにゼットの眼差しはどこか遠くを見るようだった。彼に似合わない哀しみに彩られた諦念の表情にメロディアは少し胸が落ち着かなくなる。
    「だから、その、お前には感謝してるよ。色々助かったし……。で、でもだからって結婚はちょっと……」
    顔を伏せ、しどろもどろに言葉を続けるゼットにメロディアは優しく語りかける。
    「ねぇゼット様、私今でも幸せだけど、もっともっと幸せになりたいの」
    「随分強欲なんだな」
    「人聞きが悪いわ。そうじゃないの、私はハッピーエンドを追い求めるプリンセスよ、そんな私が愛する人とも結ばれずに終わるなんてちっともハッピーエンドじゃないわ!」
    「あ、愛するって」
    「それにゼット様はもっともっと幸せになるべきだわ、ラララ~私と~結ばれて~ハッピエンドを~迎えましょう~」
    立ち上がり、メロディアは即興で軽やかに歌い出す。そんなメロディアをぽかんとした表情で眺めてゼットは小さく笑った。
    「オレはこんな風にまたビーコとケルベロスと一緒に暮らせるなんて思わなかったからさ、これ以上の幸せってのが分かんねぇんだけど、お前を見てるとこれ以上の幸せってやつが何となく分かる気がするよ」
    メロディアはぱっと表情を輝かせてゼットの方に視線を向ける。
    「本当!なら良かったわじゃあ早速式場選びからね!ゼット様に今日こそは付き合ってもらうんだから」
    そう言ってどこからともなく式場の載ったカタログを何冊も取り出してメロディアはゼットの前に広げてみせるとゼットは固まった。しかしそれに頓着することなくメロディアは付箋のついたページを指さす。
    「こことか綺麗で良いんじゃないかって思ってるの。海が近くで見られるのよ、それにここは天気が良い日が多いらしいし」
    「あ、あー悪くないと思うぜ、でもオレはお前のとこの魔界みたいな場所も良いと思うけど……」
    ゼットの視線の先にはメロディアと初めて会った場所に似た木々に囲まれた花畑の写真があった。それに気が付いてメロディアは嬉しそうに微笑む。
    「私の故郷を気に入ってくれてるのね、とっても嬉しいわ」
    「まぁビーコも好きな場所だし……オレもその、好きだと思うし……」
    声は尻すぼみになるがメロディアにはその言葉ははっきり聞こえた。ゼットの好きという言葉にメロディアは思わずゼットに抱きつく。
    「うわっ!何だよ急に!?」
    「ふふゼット様から好きって言葉が聞けて嬉しくなっちゃったの!」
    「そ、そーかよ……お前は本当オーバーだな」
    ゼットは戸惑ったような声を出すが、メロディアに離れろとは言わなかった。冷たい身体を抱き締めて望んでいたハッピーエンドとはちょっと違うけれど、これもこれで一つのハッピーエンドかもしれないわねとメロディアはふふと笑った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞💞💞💞🙏🙏🙏💖👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    LastQed

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    LastQed

    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897

    LastQed

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
    2926