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    ナンナル

    @nannru122

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    ナンナル

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    腹違い兄弟🎈×🌟
    結構前に書きかけだったやつをキリがいいところまで書いた。飽きた( ˇωˇ )
    雰囲気で読み流してください

    先生、可愛い弟は要りませんか?―神代先生は神山高校の数学担当教師である。

    「次、神代先生の授業じゃん」
    「そういえば昨日、B組の吉田さんが先生に告白したらしいよ」

    くあ、と一つ欠伸をするオレの耳に、クラスメイトの話声が聞こえてくる。B組の吉田さんと言えば、確か男子の中で可愛いと噂の女子だ。んー、と口をへの字に曲げて記憶を辿るが、顔は思い出せない。髪の長い女子だった気がするような、しないような…。

    ―27歳独身。車で学校に出勤している為、登下校の際に生徒が会うことは殆どない。

    (……“また”告白されたのか…、さすが、おモテになることで…)

    ざわざわと騒がしい教室の中をちら、と見るも、目当ての人はどこにもいない。
    女子は噂話が大好きだ。お陰で、知らなかった情報もすぐに入る。きっと、本人は一切そういう事を周りに話さないのだろう。こちらが問いかけない限り、絶対に。
    と言っても、なんて返事を返したかは分かりきっているので、聞く必要もないが。

    ―女子生徒に人気の高い、顔の良い先生で、性格も穏やかな少し変わったところはあるが話しやすい先生だ。

    「『他に好きな人がいるから』って、断られたんだって」
    「神代先生、告白される度にそう言って断ってるんだっけ」
    「そう。誰なんだろうね、先生の好きな人って」

    予想通りの返事を返していたらしい。
    誰にも気付かれない様に小さく息を吐いて、スマホを取り出した。ぽちぽちとメッセージアプリを起動させると、数分前に送られてきたメッセージが一番下に表示される。『今日は手伝いはいらないよ』と一言送られてきたメッセージをもう一度見て、机に突っ伏した。つまらない。

    ―そんな先生には、とても可愛がっている“弟”がいる。

    ぽちぽちとメッセージアプリの入力欄に了承の返事を打ち込み、送信ボタンを押す。マナーモードにしている為、無音でメッセージが送信された。ついでに、お気に入りのスタンプも送れば、すぐに既読のマークがつく。数秒後に送られてきたのは、オレがさっき送ったのと同じスタンプだ。それがなんだか嬉しくて、顔を隠すようにスマホを額へそっと当てた。

    (今夜は、兄さんの好きなオムライスにしよう)

    んへ、とだらしなくにやけた顔は誰に見られることも無く、始業のチャイムと共に引き締めた。

    【義兄弟】

    「それじゃぁ、この問題は…、天馬くん」
    「はいっ!」
    「前に来て解いてくれるかい?」

    そう問いかけられ、大きな声で返事を返して席を立つ。
    後ろの席から、『助かった〜』という声が聞こえてきた。誰だって、指名されるのは嫌だろう。オレもあまり勉強が得意なわけではないので、嬉しくはない。
    ただ、この授業は別である。

    「……ぇっと…」

    白いチョークを手に取って、黒板に向かい合う。書かれている問題は、前回の授業で習った公式を使うやつだ。復習を何度もしたので、よく分かる。カッ、カッ、カッ、とチョークで公式を当てはめて解いていく。クラスメイト達は、オレが問題を解いている中黙って黒板を見ていた。半分程書き込んだ辺りで、左手に何かが触れる。ぴく、とチョークを持つ手が一瞬止まり、そのまま続きを書いた。指先に、オレより少し冷たい指が触れて、掌が重なる。何か固いものが握らされるのが分かった。きっと、いつものあれだ。
    そわそわとしながらも、触れた手をそっと握り返す。最後まで書き切ると、その手はあっさりと離れていった。

    「終わりました、先生」
    「…うん、ありがとう。席に戻っていいよ、天馬くん」

    ひらひら、と手を振る先生に背を向けて、席に座る。戻る途中で見えたクラスメイトの何人かは、ふんわりと柔らかく笑う先生から視線が逸らせなくなっているようだった。それはそうだ、神代先生は女子生徒に大人気のかっこいい先生なのだから。その先生があんな風に綺麗に笑うなら、見惚れるだろう。
    ふふん、と口元が緩んで、なんだか得意気な気分になってくる。

    (そう言えば、先程手紙を貰ったが……)

    手に握らされた紙をこっそりと開くと、見慣れた綺麗な字で『よく出来ました』と短く書かれている。ぶわわっ、と胸の奥から何かが溢れる様な感覚に、緩みそうになる顔を組んだ腕に押し付けて隠す。その場で書いたわけではないだろう。なら、オレが答えられると信じて用意してくれたのかもしれない。そう思うと、胸が苦しい程いっぱいになってしまう。
    にへ、と緩んだ表情を手の甲で隠しながら、貰った一言だけが書かれた手紙を筆箱にしまう。そんなオレに構わず、授業はどんどんと進んでいく。先程の問題の解説を終えた先生は、ぱら、と教科書の次の頁を開いた。

    「次は三十七頁の問題を各自解いてみようか。時間は五十分までにしよう」

    先生の言葉に、えー、というブーイングが小さく聞こえてくる。
    教科書の頁を一ページ捲り、問題に目を通した。五問ほどあるが、どれも昨日やった問題と殆ど同じだ。よし、と意気込んで、ペンを握り直す。褒められた事で、やる気は十分だ。ノートに一問づつ式を書き込んで問題を解けば、あっという間に五問なんて終わってしまう。簡単に確認もして顔を上げれば、ぱちりと先生と目が合った。

    (……眼鏡姿も、かっこいい…)

    んへ、と表情がまた緩んでしまう。ふわりとオレに向けて口元を緩めた先生は、そんなオレに声を出さず口の動きだけで『お疲れ様』と言ってくれた。優しい先生のそういう所も、好きだ。だんだんと解き終わった生徒が顔を上げると、先生はオレから顔を逸らしてしまう。それでも、オレは先生から目が逸らせなかった。

    (…好きだなぁ……)

    ふわふわと胸の内が暖かくなるのを感じながら、手で口元を覆った。誰にも打ち明けた事の無い想いを飲み込んで。
    聞こえてきたチャイムの音で、授業があっさりと終わる。問題の解説を終えた先生は、教科書を閉じると日直に声をかけた。号令がかかり、ガタガタと椅子を鳴らしてクラスメイトが立ち上がる。大きな声で礼をして、休憩時間となった。オレも教科書やノートを片付けて、椅子を立つ。廊下に出ると、先生が教員室の方へ向かうのが見えた。
    駆け寄りたい気持ちを抑えて、どうしようかと じっ、と見つめていれば、くるりと先生が振り返る。ぱち、と目が合い、慌てて顔を逸らそうとすれば先生が口を開いた。

    「丁度良かった。配布したいプリントを教員室に置いてきてしまったから、良ければ天馬くんも、ついてきてくれるかい?」
    「い、行きますっ!」
    「ありがとう」

    反射的に返事を返したオレに、にこ、と先生が笑う。慌てて駆け寄り、先生の後ろを着いて歩いた。先生の歩くスピードが、いつもの様に少しゆっくりになっていて胸が きゅぅ、と音を鳴らす。「後で宿題だって皆に配っておいておくれ」と、何気ない会話をふってくれる先生に相槌を返す。それだけでも、とても楽しかった。
    あっという間についてしまった教員室からプリントを持ってきた先生が、オレにそれを手渡す。受け取ってしまえば、この時間ももうおしまいだ。「よろしくね」という言葉に、こく、と頷いて、プリントを持ったまま先生に背を向ける。
    と、不意に肩が掴まれて、体がほんの少し後ろへ傾いた。

    「残りの授業も頑張ってね」
    「っ……」

    小さな声でそう言われ、びくっ、と肩が跳ねる。
    悪戯っこのような、少し楽しそうな声だった。じわぁ、と顔が熱くなり、慌てて顔を後ろへ向ければ、先生がひらひらと手を振って教員室の中へ入っていってしまう。そんな先生の後ろ姿が見えなくなるまで、オレはその場で立ちつくした。
    次の授業の予鈴が聞こえて慌てて教室にもどるオレの顔は、一向に熱が引かない。こんな状態にした先生に心の中で文句を言いつつ、それでも嬉しいと思ってしまった気持ちに口元が自然と緩んだ。

    ―――

    『今夜は病院に行って遅くなるから、夕飯は二人で食べてね』

    母親からのメッセージに返信を返し、コンロの火を止める。食器棚からお皿を取り、フライパンの中のオムライスをくるりとひっくり返しながら乗せる。綺麗に巻けた卵に、ふふん、と胸を張った。
    もう一つ、と卵を割って菜箸でかき混ぜていれば、玄関の方から鍵を開ける音が聞こえてくる。それに顔を上げて玄関まで駆けて行けば、開いた扉から兄さんが入ってきた。

    「おかえりなさい、兄さんっ!」
    「ただいま、司くん」

    ぎゅ、と帰ってきたばかりの兄さんに飛び着けば、兄さんも抱き締め返してくれる。ぎゅーっと抱き締められると、兄さんの匂いがして、胸の奥がほわほわした。やっと触れられた満足感に、表情が緩む。ぎゅむぎゅむと抱き締めていれば、兄さんにそっと肩を叩かれた。

    「そろそろ家に入ってもいいかい?」
    「あ、あぁ…!」
    「ふふ、ご飯の途中だったのかな? とてもいい匂いがするね」
    「今夜は兄さんの好きなオムライスだぞ! すぐ食べられるから、しっかり手を洗ってくるんだぞ!」

    はーい、と間延びした返事をした兄さんが、洗面所の方へ消えていく。それを見送って、オレは台所へと戻った。フライパンを温め直し、卵を引く。チキンライスを乗せて卵を巻き、くるりとひっくり返してお皿に乗せれば完成だ。簡易のスープもお椀によそり、それをダイニングテーブルへ持っていく。スプーンとコップも用意すれば、スーツを脱いで部屋着に着替えた兄さんがリビングに入ってきた。
    座って座って!と兄さんを席につかせて、オレも自席に座る。ぱちん、と二人で手を合わせ「いただきます」と口にした。

    「司くんのオムライス、久しぶりだね」
    「今日のは自信作だぞ!」
    「ふふ、楽しみだね」

    ケチャップをかけたオムライスをスプーンで掬って、兄さんが一口食べる。咀嚼して飲み込むその顔を、じっと見つめた。一口飲み込んだ兄さんが顔を上げると、ふわりとその顔が優しく笑顔を浮かべる。

    「とても美味しいよ」

    その言葉に、ぶわっ、と胸の奥が温かいものでいっぱいになった。

    兄さんは、オレと十歳年の離れた腹違いの兄だ。オレの母さんと再婚した父さんの連れ子で、兄さんの本当の母さんはオレが産まれる前に亡くなったそうだ。
    身体が弱くて入退院を繰り返す妹咲希に両親が付きっきりになる代わりに、オレは兄さんに育てられた。保育園の送り迎えや、小学校の授業参観、夜は殆ど兄さんと一緒にお留守番で、教員を目指す兄さんに沢山勉強を教わった。そんな兄さんに昔から懐いていたオレは、気付いた時には恋をしていた。大好きな兄さんと一緒にお留守番するこの時間が大好きで、兄さんに勉強を教わりたくてこっそり兄さんが先生を勤める高校にも入学した。幸い、兄さんは仕事の時だけ旧姓である『神代類』を名乗っているので、クラスメイトに気付かれることも無い。

    「そういえば兄さん、また女子生徒に告白されたと聞いたぞ」
    「相変わらず、噂は早いね」
    「兄さんに好きな人などいないのに、毎回その理由で断るのはどうなんだ?」
    「それが一番手っ取り早いじゃないか。生徒と付き合う気なんて無いからね」

    苦笑する兄さんを ちら、と見て、オレは大きく掬ったオムライスを自分の口へ押し込んだ。
    兄さんはモテる。容姿も性格もとてもモテる。だが、片想いをするオレがそれに不安にならないのは、兄さんがこういう性格だからだ。兄さんは恋愛というものに興味が無いのだ。『好きな人がいるから』と断る兄さんに、好きな人なんていない。ただ、早く諦めて貰うためにそう言っているらしい。
    それならば、いっそ『付き合っている人がいる』と返せばいいのに。

    (嘘であっても、その相手役を買って出る程には、オレも本気で好きなのだがな…)

    なんて、そんな事を兄さんに言えるはずもない。腹違いとはいえ血の繋がった兄弟であるオレを、兄さんがそういう対象として見る事なんて絶対にないからな。ましては同性。望みなどあるわけがない。
    オムライスの最後の一口を口に入れて、咀嚼する。先に食べ終わった兄さんは、にこにことした笑顔で「美味しかったよ」と言ってくれた。それがなんだか照れくさくて、ほんの少し下へ視線が下がる。

    「……後で、また勉強を教えてくれ」
    「勿論、いくらでも」

    ぱちん、と手を合わせて「ご馳走様」と挨拶し、席を立った。
    恋人にはなれないが、兄さんに恋人が出来るまで、オレは兄さんの中で一番大切な“弟”だ。その特別で、今はいい。いつか兄さんに恋人が出来たら、諦める。その準備だって、少しづつしているのだから。
    それまでは、兄さんの一番はオレのものだ。

    「…兄さん、大好き」
    「ふふ、僕も司くんが好きだよ」

    兄さんらしい優しい顔に、オレは小さく溜息を吐いた。
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