手向ける花のひと筋もなく没案 行こう──と告げられた時京楽に浮竹の心中を汲む手掛かりなど何ひとつ与えられていなかった。ただいつものように会って、山本の指導をもらってくたくたのへろへろになるまで鍛えられて、夕食前にと饅頭のひとつふたつを与えられたところだ。一週間近く日は開いたがそう珍しいことでない。今日は夕食を共にする予定もなくこのまま二人、山本の邸を出て途中まで同じ道を歩き別れる予定である。だが京楽は、これは常と異なる誘いだと理解して、行こうか──と答えた。
夕暮れの道は薄暗い。かつては二人して雀部と手を繋いで歩かされていたしそれでもいつの間にか取っ組み合いや鬼事になっていて、雀部を探しに来た山本の手で逆さ吊りにされることもあった。数年前からは手を繋がれることこそなくなったが、京楽が街を放浪する術を知ってしまったことで、やはり時折は誰かしらが着いてくる。今日は幸いにして違った。雨催いの空の下では流石に真っ直ぐ帰ると思われたらしい。七夕が目前の梅雨時であった。
いつもより重たい足運びで進んでいれば浮竹も心得たようで、山本の邸が見えなくなった頃、昨日──と切り出した。
「父に逢った」
京楽は瞬きしただけで応えない。
浮竹の父を京楽は知らない。弟妹たちには会ったことがあるのだが母を含め親御とは都合がつかないままである。家に上がったことはあるのに……と苦笑してこなかったのは偏に彼の生育環境が為だ。上流貴族ともなれば子ども同士で遊ぶ折など父親は出仕しているし母親は人前に出てこない。そもそも他人様の家に上がる機会など裕福な家庭の見世の折以外では滅多にない。とはいえ浮竹家には足を運んだことがあり、母御の横顔は偶然見ることが叶ったもののお眼通りしたことはないので化粧の具合によっては見ても判らないだろう。年中行事で父御の顔を拝むことは叶ったかもしれないが京楽は中年以上の男になど興味がない。故に何も挟み込める感慨もなかったのだ。
浮竹はそれを気にかけるでもなく、またしばらくの沈黙を挟む。言うか迷っているというより如何説明したものか迷っているようだった。やがて言葉は継がれる。
「知らなかったが、……ウチはもともと貴族じゃなかったんだな」
京楽は目を瞬かせる。
「あれ。そうだったの?」
彼も知らなかった。いつ貴族になるかなど彼にとっては生まれつきとしかない。貴族を辞めることはできても成り上がりなど養子縁組や婚姻による個人の単位がせいぜいとしか念頭にない。ただ、浮竹家のような、言ってしまえば下級貴族如きなら商家の嫁入りや霊力の高い庶民の養子から乗取りの憂き目という可能性もあり──。
初夏の風が二人の髪を持ち上げる。深刻そうな面持ちからして後者を想像した京楽へ浮竹は告げた。
「俺の所為で」
京楽はその言葉の意味を理解できない。浮竹も説明を重ねない。ただいつもの岐路を浮竹は素通りしてしまった。京楽はそれを指摘せず、道なりに進むことを選ぶ。
「如何してまた」
質問の体裁を為したが聞いていると示す為のものでしかなく、返答の有無は気にしない。小遣いはそこそこにあったので、話し出したら其処らで団子でも購って落ち着かせればいい……適度にしか考えていなかった。
だが、口にした言葉というものは意識から逃れられない、浮竹は京楽を呼んだ。
「なあ。何処かに、……」
湿った風がその言葉の続きを攫ってしまう。京楽が歯噛みするのを歯牙にもかけずにひと通り激しい風が吹く。
凪いだ後、浮竹は口を開かなかった。
京楽は浮竹を連れて表通りまで行くと棒手振りから漬物を購う。無理やり沢庵のひとつを捩じ込むと通りを見せながら言ってやる。
「ね、明日はお祭りなんだよ。行こうよ」
瓢箪や西瓜、大福帳が立ち並び笹竹売りは明日を前に最後の断末魔を張り上げている。それを見て、気づいていなかったのだろう、浮竹が目を瞬かせるのを慎重に観察しながら京楽は続けた。
「七夕だから、ほら。僕らも明日は硯洗いをするだろ」
「……嗚呼、そういえば。そうだな。明日か」
「そう、そう。でも山じいがやってくれるのはそれくらいだし、家のはつまらないでしょ。こっちに来ようよ」
本音を言えばつまらなくはない。詩歌も管弦も得意とするところで、褒めてもらえる滅多にない機会だ。武芸に長けた家系ゆえ日頃の風向きの強さをひと時なりとも和らげてもくれよう。参加した面子が悪ければ兄の家に行ったっていい、あの義姉ならきっと硯洗もせず逃げ込んでも歓迎してくれる。だがそれより友人の方が心配だった。
浮竹と言えば京楽に言われて初めて思い至ったこともあり、慌てて飛び出したのがまず、妹の話だった。これには京楽も苦笑するほかない。
「それとも、会いに行くの?」
浮竹は俄然落ち着いて見せると静かに、否と首を振った。重症だと京楽はつい苦笑いをこぼした。下宿している彼が弟妹に会うにはそこそこ用意が要った、だからこそ父親と会う機会もそうなかった訳で。
「じゃ、明日はこっちだ。短冊とか西瓜とか、飾り物を川に流すらしいよ。見たことある?」
「ない。近所にそんな川なんてなかったし」
「そっかあ。二人とも初めてだね、うふふ」
京楽の聞き齧りに飽き足らずあれこれと夢想して語るのを店先の奉公人が微笑ましく見ている。仕事帰りの大工や死神が足速に過ぎ去る。寺子屋帰りに遊んでいたらしい子どもの手を引いて母親が叱りつけている。そんな中でも二人は二人だけで歩ける。
今日のところはまた明日──と言って別れる。背中が見えなくなってから浮竹の声が聞こえたかと思えば漬物を独り占めしてしまったとの由、今頃気付くかと腹を抱えてひとり笑いつつ京楽も諦めて帰路に着く。一日仕事の準備が必要だった。
翌日、京楽は兄の家に寄ってから朝帰りを装って道場に踏み込む。無論山本から盛大に叱られて竹刀を持つまでが長いこと長いこと、大人しく聞き流して首を垂れる殊勝な質でもなく、浮竹はおろか通いの弟子たちにさえ笑われる。
「せっかく統学院には入らず済んだのに」
そう呟けば言葉を失ったらしい山本から即座に拳骨が落とされて、それから今度は無言で竹刀を寄越される。入学の用意はしていたというのに直前、入試の前夜に黒塗り大門の向こうへ消えてしまった京楽を山本がどれほど叱ったかなど道場に出入りする者なら皆知っている。雀部が執りなしていなければ破門されかねないところだった。その頃の浮竹はと言えば宵の口に喀血して四番隊へ担ぎ込まれていた。同じ学年になりたいなら手段を選びなさい──と叱るでもなく呟いた雀部に、山本の折檻などものともせずのらりくらりと通い続けていた京楽も流石に押し黙ったものだ。それでいて折に触れまた話を持ち出すのだから、あれは構われたがりだ──と浮竹が呆れるのも当然である。雀部も心得てるぞと言わんばかりに、夕方になれば硯洗いの支度をと上申する。死神には鬼道を始め学も要るというのが山本の旨、止めろと言える道理もなく、雨雲と睨み合って夕方より少し早くに井戸水で硯と筆を洗う。雀部は分かりきっていたとはいえ水遊びを始めた二人を咎めてやって、山本が本格的に二人ともを叱る前に追い立てる。
「まっすぐ帰りなさい。雨に降られますよ」
「はあい」
「雀部さん、さようなら」
京楽に唆されて浮竹も食べ歩くことを覚えているし、そうでなくとも今日は予め計画していたこと、二人は同じように帰路へ着く死神たちをやり過ごすと顔をむき合わせて、ひっそりと笑い合う。
「行こっか」
「行こう」
京楽は街の入り口にある茶屋の店先に浮竹を待たせて丁稚となにやら話し出す。何だと浮竹が乗り出しても秘密だと言うので不貞腐れてやれば仕方ないと言うように荷物片手に戻ってくる。
「何それ」
「ナイショ」
「ケチ」
川辺はと云えばもう祭りは盛り上がっていて短冊を流し終えた子どもの泣き声など天麩羅や飴を捩じ込まれてとうに消えている。二人も眺めるよりは食うがよく、饅頭や揚げ菓子や麩菓子や練り物の屋台をアレもいいコレもいいと品定めする。京楽とて小遣いは有限だ。
花火が上がるとひとのさざめきが聞こえる。そう云えば、となるのが京楽だ。そうなのか、となるのが浮竹だ。人々は見晴らしの良いとこを求めて串や皿を片手に往く。二人も饅頭の包みを持って人の流れに乗った。
京楽は囁く。
「それとももっと遠いところまで行く?」
浮竹は京楽の顔を見たが拒まなかった。是と受け取り、京楽は彼の手を取るとゆっくりと足を進めることにした。幸いにして暑くも寒くもなく、雲は厚いものが散見されるものの、まだ明るくて都合が良かった。
「大変だね、人が多くて」
「賑やかだよなあ。なあ、あれ、何だろう」
「うーん、独楽売りと漬物売りの喧嘩だねえ」
「あれは何だ」
「見覚えがあるね、三丁目の悉皆屋じゃないかな。食べこぼしに便乗してるのかな」
「あれはいつもの玩具売りかな」
「本当だ。今日は団扇売りだねえ」
「……皆んな、元気だな」
ぽつりと呟いたが最後、浮竹は黙ってしまう。京楽はそんな彼を
何故京楽春水だったかと思えば京楽少年の祖父や父が山本丿字斎と懇意だった所縁で選ばれたという。育ちがよく、家督問題に直結しない立場で、序でに武芸に長ける男児なら良しとされたらしい。幸いにして彼は掴まり立ちを覚えた頃から竹刀を手に取らされ兄に隠れて走り逃げるものの礼節どころか風雅をひとと合わせるゆとりのある歳の近い子どもだった。現世にある乳兄弟とやらに当たるのかもしれない。齢三つにして神器と成った浮竹十四郎を、それが為に貴族として死神として育てるには都合良い隣人となれた。
勿論当人たちは何も知らない。どころか京楽の家のうち詳かに知る者がいたかすら怪しい。一番の可能性があるのは祖父だが彼はもう死没しており草葉の陰に尋ねても何も返ってこない。山本と、彼の麾下に加わると決めた逆骨しか知らなかったかもしれない。何も知らなかった二人の子どもたちは引き合わされ、紆余曲折あれど親友となった。諍いや取っ組み合いも珍しくなかったが山本他の隊長格を始めとする実力者或いは経験者に見守られたことで取り返しのつかない破局を迎えることなく長じて統学院へ共に入って共に出て、共に護廷隊へ入ることとなる。それは山本が決めたのみならず、病態が悪化して入学試験どころでなくなった浮竹に合わせるよう、京楽が入試前に逐電し半年以上の放蕩までしてみせたほどだ。
その統学院は寮暮らしを前提にしてあった。家の無い者も招き入れる為で、真央霊術院となったいま尚維持されている。つまり二六時中共に過ごしていた子ども二人は四六時中共に過ごせるようになる。ところが此処は生来の性が出るところで、京楽はちょうど兄の駈落ち騒ぎと前後して覚えた放蕩が災いして頻繁に寮や学院を抜け出すようになる。時間は増えたというのに共にない場面が増える。
加えて、二人の在学当時の統学院は未だ指導教程が確立していなかった。ようやく六年制と定まったのはいいものの授業内容はたいそう粗く、一組と二組では同じ学年だというのに彼我の差ができて、享楽と浮竹の属していた一組はひとつ上の学年の二組どころか一組さえ追い越していることもあったほどだ。それほど粗ければ都合危険な授業もあった。なにせ真央霊術院とて実地授業中に死者を出すのだから年に二人三人と欠けること、それを案じて五人六人と辞めることもままあり、ただでさえ成績による組の入替もあり、そして浮竹という長期不在の多い生徒の存在もあって、生徒の管理に教師陣は根を上げた。これは事実として処遇に出て、教程の確立は先送りされ、しかし書面上に影響はなく、つまり山本らの知るところではなかった。
教師たちは教えなければならないことと教えたいことを教えた。あまりにも詰め込む量が多くなり一度二組に落ちて返り咲く者はその六年間でひとりといなかったほどだ。どうしてそんなにまで……と訊ねられれば彼らはきっとこう答える、浮竹十四郎が望んで京楽春水も応えられたからだ──と。
京楽は忌々しく腹を立てながらも苦い顔で浮竹を見下ろした。勿論彼は寝台に横たわっている。恒例の発作であった。季節は初冬、年を通して寝込みがちな浮竹が殊更に倒れやすい季節だ。それは彼自身も知っている、筈だ。
それなのに──と京楽は目を細めた。
それでもだ──と浮竹は目を伏せた。
火鉢の中で炭が音を立てた。その傍では濡らした布巾が干されるがままになっている。明かり取りの向こうはもう夕方の色をしていた。丸一日寝込んでいた計算だなと浮竹はぼんやり考えながらもう一度繰り返した。そして呟く。
「どうせ俺は死なん」
それが虚の巣へ無茶な攻勢をかけ喀血するまで暴れた男の台詞だった。
とうとう京楽は浮竹の枕許に腰掛ける。足許でないのかと言わんばかりの視線など気づきもせず彼は昏い眼をしたままに口を開く。
「そこからだよ。どうしてそんなことになったんだい。ボクは聞いてないよ」
二人の学年で、いや六学年のうちで浮竹ほど謂わゆる死に近い者はいないだろう。週のうち酷い咳の出ない日は一日あるかないかだ。朝一番に貧血で倒れる回数は女子生徒が束になったって敵わない。熱が出たとか血を吐いたとかで十日以上休むことも珍しくないと知れてきた。京楽は覚えている、あの山本さえ幼い自分に覚悟を求めて傍に座らされた日の冷えた肚と鼻や口や喉から挿管され点滴に繋がれ不穏な音を立てる機械に見下ろされていた浮竹の白い顔、本当にこの友人はという恐怖、それでも意識を浮かび上がらせるや呟いた友人の台詞──。
死にたくない、とかつて浮竹は絞り出していた。その台詞に嘘があったとは到底思えない。それが今や如何したというのか、京楽にはさっぱり分からなかった。
浮竹はしばらく京楽と眼を合わせようとしなかった。それしきで揺らぐ京楽ではないので彼は浮竹を見下ろしたまま、待つ。
根比べは仕掛けた方が負けだというのが二人の間では通例だった。浮竹は小さく、付近の水気が飛ぶ音で消されてくれやしないかと願わんばかりの声を出した。
「父に逢った」
京楽は瞬きしただけで応えない。
浮竹の父を京楽は知らない。弟妹たちには会ったことがあるのだが母を含め親御とは都合がつかないままである。家に上がったことはあるのに……と苦笑してこなかったのは偏に彼の生育環境が為だ。上流貴族ともなれば子ども同士で遊ぶ折など父親は出仕しているし母親は人前に出てこない。年中行事で父御の顔を拝むことは叶ったかもしれないが京楽は中年以上の男になど興味がない。故に何も挟み込める感慨もなかったのだ。
浮竹はそれを気にかけるでもなく、またしばらくの沈黙を挟む。言うか迷っているというより如何説明したものか迷っているようだった。やがて言葉は継がれる。
「知らなかったが、……ウチはもともと貴族じゃなかったんだな」
*
遠目に浮竹を見つつも言葉を交わすことなく採寸を済ませて足早に兄の家へ赴く。夜だからと白湯が出され、ひと頻り話し込むと見送られる。
「御立派な死神になられるのでしょう」
幽けき笑みに後ろ髪を引かれつつ
また夕飯の御相伴に預かる気であったが義姉は珍しく首を振る。
「お兄様がお呼びでとのことした」
京楽は彼女を見る。彼女は京楽を、義弟として見ていた。
「ありがとうございます。それじゃあ、また明日に」
玄関先からいつまでも京楽を見送る義姉の影を何度も振り返る。残酷な言伝には流石にひと言物申そうとするも出迎えた使用人たちは何も知らぬよう、何がなんでも逃すまいとあれこれ手を出してくるのを躱しつつはてなと首を傾げていれば馴染みの顔が京楽の裾を引く。湯浴みするふりして兄の乳弟に手を引かれ、兄の部屋に入れば
家の中は空であった。
何か言葉が出ることもない。冬は終わった。この世の春の暖かさが赦され得ぬひととは思えない。だが如何だろうこの淋しいばかりの空き家は! 松の枝のひと振りが欠けて思えるのは願望か否か判断することもできない。空虚な胸の裡を紅い灯籠で満たす気にもなれず京楽は自ら望んで倉の中で眠る。起きれば身体の彼方此方が痛んだが素知らぬふりをして兄の部屋に忍び込むと彼の手に触れる。眼を醒ますことのない彼を惜しみつつ抽斗から勝手に制服を取り出して上半身に合わせて見て、これならと纏めてあった荷物とともに統学院へ向かった。
新入生代表の背中を支えつつ長広舌の年寄りを揶揄すれば浮竹からは忙しい奴めと詰られる。
「気が利くと言ってほしいね」
「なら、俺が倒れたら代わりに挨拶してくれ」
「うーん、それより君を療養室に運ぶよ。挨拶ぐらい欠けたって誰も困らないさ」
上級と下級に別れたとて霊圧含めで振り分けられれば謂わゆる社会的な階層を横断して構成される。むしろ貧民街からここまで流れ着くには霊圧なり霊威なりが必要だ。そして血筋でそれらがある程度担保されるため知った顔もそれなりに見え、何れ六年間を腹の底から楽しむのは難しそうだと苦笑しつつ貧血を起こしかける浮竹の手を背後で振り回してやった。
「目がまわるよ、春水」
「前見てれば大丈夫だって。十四郎てば、心配症なんだから」
「叱られるぞ」
「山じいより怖い先生がいたら考えるよ」
そう言いつつも壇上へ友を送り出すと京楽はそれを眼を細めて見る。入学試験の成績は浮竹が主席で京楽が次席だった。手を抜いたかと言われたが実力の範囲内、むしろひと通りのみで眠ってしまった身としては過ぎた席次である。三位から下を見てもよく知れないが一先ず、級内で浮竹が倒れても駆けつけるのは難しくないらしいと安堵した次第。導入で心構えだの汎用な譬え話だのばかりの日々が始まっても取り敢えずは席に着いていてやって、この教師は宿題が手強そうだこの講義は課題さえできれば問題なさそうだと品評すればまた浮竹からは苦言を呈されけらけらと笑って躱わすと布団に潜り込んでまたひそひそと消灯後の寮室で囁き合う。ひと通りの時間割を教え込まれ、いざ一年目と始めたところで忌々しくも覚えある呼出を受ける。兄が愈々直ぐ帰り来いとのこと。申し送りした覚えはないが下世話な噂ほどよく広まるもの、取次いでくれた教師たちはしたり顔で荷物を取ってこいと言ってくる。しかし京楽は