額に何かあたたかいものが触れた感覚で目を覚ます。
「……ごめんなさい、起こしちゃいましたね」
そう言う今井の顔は、言葉では謝っている割に柔らかく微笑んでいた。その唇が額に触れると、山本は先ほどのあたたかい感覚も今井だったのだと理解する。
「おはよう」
照れくささに何と返してよいかわからずそれだけ言うと、「おはようございます」という返事とともに今度は唇同士が触れ合った。触れて、離れたと思う間もなくまた触れ合う。何度も繰り返されるキスに、山本の寝起きの頭は夢見心地のまますっかり『旬くん』に支配されてしまう。触れるだけのキスから今度は下唇を吸われると、頭の真ん中から心臓の辺りに心地よい痺れが走る。中毒性のあるようなその甘い痺れに感化され、山本は誘うように今井の上唇を舌でなぞる。今井もそれに応えると、唇を吸う音と荒い呼吸、絡まる舌と唾液の湿った音が、ベッドの中のふたりだけの小さな世界を満たしていく。
1103