年の初めに行う交尾は《姫初め》って言うんだぜ♫ とバンから聞いたエレインは、まぁ人間は何にでも催しを求めるのねと感心しつつ、では宜しくお願いしますと言う訳で、二人は盛大に盛り上がった。
元々泥酔していたバンは事が済むとエレインを抱きまくらにして、色気もへったくれもなくすぐにいびきをかき始めた。いくら愛しい男の腕の中とはいえギュウギュウに抱きすくめられは呼吸もままならない。ごめんなさい、と謝罪しつつ魔力で大男をふっ飛ばし、シュミーズだけを頭から被って手ぐしで髪を整えた。バンは全く起きる気配もない。
「うふふ、ぐっすりね!」
でも真っ裸じゃお腹痛くしちゃう。人間は裸でいると風邪をひいてしまうって兄さんが言っていたもの。
彼女は兄の言っていたことを思い出し、ウンウン唸ってバンの脚を持ち上げてスラックスを履かせようとしたけれど、余りにも重たいので魔力を行使した。
「これでよし」
そして満足したエレインは、今度はバンの腕を持ち上げてその中にまあるくなって納まった。
というのが昨晩の話。
日が昇りきった頃に目覚めたエレインは、もぞもぞバンの腕の下から這って出た。ちょこんと脇に寝そべって、やっぱり起きる気配もないバンの寝顔を眺めて楽しむ。それが彼女の日課だった。
それにしても、だ。
「ぜんぜん起きない……」
凄まじい爆睡ぶりだ。眺めるだけでは物足りなくなってきたエレインは男の顔をつついたり、起きよう、と囁いたりしたが反応は皆無。むうと頬を膨らまして鼻を摘むと漸く反応があったが、へらりと笑っただけだった。
「もー! 起きましょうってば!」
業を煮やしてバンの上にまたがり乗ってみたけど、恋人はうへへと変な笑いを漏らすだけ。夢の中の私と会ってるのね? エレインは面白くない。寂しさも感じた。不意に昨夜の熱が身体の芯にぽっと灯る。下腹が熱い。
彼女が空で指を動かすと、触れもしないのに昨夜閉じてあげたスラックスのフロントフライが開いて、生理的に持ち上がった肉棒が顔をのぞかせた。
「いたずらはじめ、よ。バン」
二人の一年はまだ始まったばかり――。