バンと旅に出たエレインが改めて強く感じたのが《金》と言う物の魔力だ。比喩でなく街の人間はこれなしに生きていくのは困難なのだと知ったし、この為にいきいきと働く人間もいる。そして、身を持ち崩す人も。
バンはゲームが好きらしい。エレインにもいろんなゲームを教えてくれたし、二人で遊びもした。エレインは心が読めてしまうので圧倒的に有利に見えたが、
一喜一憂がまるごと顔に出るので勝敗はトントンだ。
酒場でもしばしばエレインを膝に乗せたまま、他の客ともゲームをしては旅の小銭を稼いでいた。
しかしその日は良くない日らしく、バンは負け続けだった。賭け事に強い方だが、酔っぱらいの上に万能ではない。そんな日もある。
「なぁエレイン……いや、俺は何考えてんだ、お前にそんな事させられねぇ♪」
「そうよ。インチキはダメです!」
心を読めば勝てる、そんなバンの心の声を感じ取ったエレインはピシャリと言った。が、「でも」と思案するように顎に指を当てる。
「向こうもインチキなら話は別かも」
「なんだって?」
「いかさましているわ、彼」
すっ、と聖女の琥珀の瞳が眇められた。
「何だよ、道理で妙に勝てねぇと思ったら……やっぱりか♪」
「バンもそう思ってたのね」
「ああ♫ でも証拠がなぁ」
「証拠なら見せられる」
その大きな瞳はいつになく不敵に輝いている。
「排除しましょう」
「流石俺の女だ♪」
にっ、とバンはその場に似つかわしくないくらいに、無邪気に笑った。