Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    bell39399

    @bell39399

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 115

    bell39399

    ☆quiet follow

    永遠の時を植木鉢と旅する男の話。
    もしくはそういう世界線。

    #バンエレ

     男がいた。
     旅人に見える。が、旅をしているというよりは、家もなくさまよっているようにも見えた。相当な長身で見た目にも鋼のように鍛え抜かれたと判る肉体、何もかもを射殺すような目つきをしているが、端正な顔立ちと言えた。
     だがこの男、少々頭がイカれているようだ。
     男は頭陀袋の他に、荷物を抱えていた。おおよそこのような男が持ち運ぶものとは思えないような、淡紫色の愛らしい小花を咲かせた植物の植木鉢である。
     男はその花に向かってしきりに何かを話しかけている。その時ばかりはとても柔和な表情になるのだった。
     けれども植木鉢相手に喋る男になど誰も近寄らない。男のかんばせに釣られた女も、そのような様を見ると同時に薄気味悪いものを見たという顔をして去っていく。皆、遠巻きに男眺めては影でひそひそと囁きあうのだった。
     ある時、退屈を持て余したゴロツキが気の違った男をからかってやろうと例の植木鉢をかすめ取ろうと手を伸ばした。
     その瞬間男は烈火の如く怒り狂い、ゴロツキを滅茶苦茶に殴った。野次馬たちがゴロツキは殺されてしまうだろうと思った時、男はピタリと拳を止め、植木鉢に「でもよ……」と声をかけた。それから何事もなかったかのように、再び植木鉢を大切そうに抱えて街を去ったのだった。
     
    「だから言ったろ、ここはロクでもねぇ街だって。ん? そうか? 悪かったって、もうやらねぇ♪ それより次はどこに行こうか、なぁエレイン?」 
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭❤❤👍💕💞😭👏👍💗😭💗💞😭👏💘😭💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    bell39399

    MAIKINGバンエレ水浴び一人アンソロその1(2以降があるかは謎)

    途中まで書いたやつポイ。
    一人称に直すかも。なんとなく
    それを見た時、バンは幻を見たのかと思った。もしくはまだ寝ぼけているのか。
     

     夜中、水音を聞いた気がしてふと目が覚めた。もとより熟睡することのないたちだったが、この森に来てからは妙によく眠れる。にもかかわらず、だ。それに何故か少し冷える。
     その原因に気づき、思わず自嘲した。なんの事はない、隣で寝ていたこの森の聖女がいなかっただけの事だ。
     この森も、この森である秘宝を守っているという少女も奇妙な事だらけだった。安らぎやぬくもりとは無縁の生活を送ってきたバンだったが、ここに来てからは気持ちが凪いでいる。不思議なことだが本能で警戒する必要がないと感じていた。
     エレインと名乗る妖精少女(本人曰く千年は生きているらしいが)とのやり取りも実に愉快だった。彼女はバンの他愛のない話を夢中で聞いて、四季のようにくるくると表情を変えながらバンの言葉の一つ一つにいちいち反応する。時には金色の睫毛を伏せ、時には頬を膨らませ、そして何よりよく笑った。バンは彼女の笑顔で初めて「花が綻ぶような」という形容の意味を知った。
    1266