宇宙でたったひとりだけ③「レイに逢えて、本当に良かった」
「……そうですね」
アベラルドの掌をふにふにと弄びながら、レティシアは目を閉じる。その内に両手の動きが緩慢になっていき、やがてその左手がこてんと彼女の膝に落ちた。
「おやすみなさい、姫」
すうすうと寝息を立てるレティシアを丁寧に横たえてやる。
(髪が)
毛布を掛け直してやったとき、姫の銀糸の髪が鼻先にこぼれてむず痒そうにしていることに気付いた。右手を伸ばして耳に掛けてやろうとしてーー生身の指先に健やかな寝息が触れ、ぎょっとして身体ごと仰け反った。
レティシアに絆されて一瞬でも触れようとした事実に愕然とする。姫に(しかも寝ていて意識がない)触れるだなんて、そんな不敬なこと。出来やしない。出来るわけがない。ついさっき、身体に触れて寝かせてやったのに? そういう問題じゃない、違う、それとは。意味合いがまるで。
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