【ハイバラユウの事】(さしすゆけ)【ハイバラユウのこと】
「灰原っていたじゃん」
突然出された名前。
七海建人は呪術界の復職手続き的なものにペンを走らせていたが、その動きをピタリと止めた。そして、暫しの沈黙を含んでから口を開く。
「いましたよ」
低く静かで、それでいて凛とした答えが、談話室に灯る。
八頭身どころではないでかい図体に必死に耐えていた椅子がキイと鳴り、問いかけの主である五条悟は七海が出戻りの手土産として持ってきた大福を三個平らげ、まだ足りないと包みに手を伸ばす。七海はそれを承知のうえで、手土産を二つ用意していた。一度疎遠になったというのに此処での彼ら個々の癖を覚えているなんて、と高専の門を潜りながら苦笑いしたのはつい数時間前。灰原が居れば、有名なおにぎり屋の詰め合わせなんかも用意しただろうし、日本酒も勿論用意している。
1807