私の宝物 「きゃあっ!?」
手からガラガラと崩れるように壊れていくバレッタに思わず小さくない悲鳴が上がった。悲鳴を上げた後、壊れてしまったことが理解でき私の瞳から自然と涙が溢れて止まらない。
「ティファリア!?おい、どうした、一体何がーー…」
遅れて私の声を聞いて駆けつけたザフォラがやってくる。涙はまだ止まらず涙を浮かべたまま私はザフォラの顔を見上げた。
「何泣いて…おい、一体何が…」
そう言いかけて私の手のひらにあるバレッタを見て小さく驚きの声を上げる。
「お前、それ…」
「…ザフォラにもらったバレッタ、壊れちゃったの…ごめん、ごめんね…」
「…泣くな。それによく持ったほうだろ、それもう長いこと使ってただろ」
そう言ってザフォラの指先が私の涙を拭った。
「で、でも…っ」
「ものはいつか壊れる。こいつはそれが今だっただけの話だ。だからお前は泣かなくてもいい」
「だ、だって…」
だってこれはーーザフォラが初めて贈ってくれたものだから。そう言えば意表をつかれたように目を丸くした後困ったようにザフォラは笑い、優しく私の髪を撫でた。
「バカだな、お前は」
「バカって……ーー」
「また、贈る。俺はお前の、【パートナー】なんだから」
夫ではなく、パートナー。ザフォラらしい物言いに思わず笑ってしまう。
「…笑ったな。お前はそうやって能天気に笑ってる方がいい」
「な、なにそれ!」
頬を膨らませるとおかしそうにザフォラは笑う。
「全く同じとはいかないが、今度バレッタを見繕って来よう。何がいい?」
「…だったら二人で選びたい。ザフォラと、デートがしたいの」
我ながら素直すぎる言葉が出て驚いてしまうけれど目の前のザフォラはそれに嬉しそうに笑った。
「わかった、時間を作ろう」
そして涙の跡を残す私の目の下にそっと口付けを落とす。
「あんまり擦るなよ」
そう言ってまた仕事へと戻っていく。そんなザフォラの背中を見つめたまま私は壊れたバレッタを抱きしめ頬を赤く染めた。
「…ずるいんだから」
次のデートが楽しみとなり、さらにザフォラのことが好きになった日だった。
-Fin-