ザフォラ様の良きお人 ザフォラ様は自分に厳しく他人にもまた厳しい人だ。けれどその中に愛情が籠っていることを長年仕えていると分かることがある。クルトラ再興のために頑張っておられ、そして迷宮守就任の日が近づいたある日ふらっと出ていかれそして一人の少女を連れザフォラ様は帰ってきた。それはもう、私たちはそんな話の一つも出なかったザフォラ様には心に決めた人がいたんだと思った時の喜びと言ったら、今でも言葉で表すことはできないだろう。
「ザフォラ様、その方は…!」
「あーー……こいつは、」
そう言って恥ずかしそうに視線を外すザフォラ様。そう言った癖は全く変わっておらずにやけてしまいながらもザフォラ様の言葉を一生懸命待つ。
「だから…その、アレだ……ええっと、」
痺れを切らしたのか、横にいた少女はもう!と声を出してザフォラ様の背中を叩いた。
「いたっ…お前な、」
「ザフォラがはっきりしないのが悪いんでしょう?ええっと…ティファリアって言います。ザフォラを支えるために来ました、目指すはザフォラのお嫁さんなのでよろしくおねがします!」
「おい!」
「してくれるんでしょう?」
「そ、そのうち…そのうち、な…」
「待ってるからね」
「…ああ」
既に尻に敷かれているように見えるザフォラ様の様子にこんなにこの人は表情豊かだったかと本来の自分を出せる人と出会えていたのかとその喜びで部下たち一同は皆涙を流しながらティファリアさんに強くお礼を言い、各々その日の夜は強い酒を煽った。
ザフォラ様の未来に乾杯!とーー。
***
「ったくあいつらは…」
仕事を終えたザフォラの部屋でお茶会を開いていたザフォラとティファリア。部下たちの喜ぶ様子を思い返しこめかみのあたりを抑えるザフォラにティファリアはくすくすと笑った。
「それだけザフォラが慕われてるってことでしょ?いいことじゃない」
「まあ…それはそう、だが…」
そしてじっとザフォラはティファリアを見つめそしてその頬をつねった。
「ザフォラ!?」
「はは……、ほんと、夢じゃないんだな」
目の前に本当にティファリアがいる今を噛み締め手を離すザフォラ。そんなザフォラを安心させようと寄り添うように腕の中にティファリアは入り込む。ザフォラは驚きつつ、腕をティファリアの背に回し抱き締める。
「夢じゃないよ…本当だよ、ずっと…一緒にいるから」
「ああ…」
近くでは風精霊たちの飛び交うような音と花が舞う音が聞こえ、それはまるで二人を祝福してくれているようだったーー。
-Fin-