冷めない 余興だとは思う。
学園祭というお祭りだから、出し物の世界観に寄り添った格好をして盛り上げるのはたしかに大切だ。時には奇をてらった衣装を着て思い出作りをするのも。
たとえば、女子が学ランを着る。意外性があっていい。男子がセーラー服を着る。これは人を選ぶ。引くほど似合うか、視角への暴力だとウケるか、可もなく不可もなく反応に困る出来具合でスベるか。
スベったな、と忍足侑士はスース―する自分の足元を見下ろしながら思う。上は普段と変わらない自前のワイシャツ・ネクタイ・セーター姿であるが、下はクラスの女子に「忍足くんはこれ」と渡された氷帝学園のチェック柄スカートに学園指定のハイソックス姿である。
どうしてこうなった、と心を閉ざしたくなる暇を与えず仕切りの向こうから忍足に衣装を渡した女子生徒が「忍足くん着替え終わったー? 次ヘアメイクあるから急いでね」と声を掛けてくる。仕方なく侑士は急遽教室内に設けられたパーテーションで区切っただけの男子更衣室から出ていくしかなかった。
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