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    とりっこ

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    とりっこ

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    1月大阪イベントの無配現パロカム隼です。こんなどうでも良い話ある??? と思いながら書きました。でも好きカプのどうでも良い話いくらあっても困らないので……私だけじゃないと信じてバラ撒きましたが受け取ってくださった方ありがとうございました!

    #カム隼
    commonBuzzard

    ハイルベカラズ「神さん」
    どうかしましたか? というカムイの言葉が最後まで届く前に、扉は閉められてしまっていた。
    バタンという音と少しばかりの風圧だけを残されて、カムイはいったいどういうことだろうと隼人の部屋の前で考える。

    昼食を食べるところまでは、いつも通りだったと思う。
    カムイの作った料理を食べ終えた隼人はいきなり立ち上がると自室へと去ってしまったが、席を立つ時も不機嫌そうな様子ではなかった。
    今日は冷凍うどんに、正月の残りの餅やら野菜類やらをありったけ入れ土鍋で煮込んでみた。
    お互いあまり食べることに興味があるわけではないが、インスタントや出前ばかりで済ませられるほど何でも良いというわけでもなく。
    かといって外食を好むわけでもない。そこが揃って面倒臭い奴らだと言われる所以だ。
    それでもカムイが子供の頃は忙しい隼人に毎食作ってやる時間があるわけもなく、冷凍食品をレンジでチンして食べたり買い置きを用意したりしていた。
    生活が次第に変わっていったのは、カムイが成長してガスコンロと包丁を使う許可が降りてからだ。
    その頃には人間とハチュウ人類の味覚の違いも理解し折衷案を出せるようになっていたので、覚束ないながらもカムイの料理作りはスタートした。
    きっちりと軽量し、レシピ通りに作るので大幅に失敗することはまずない。
    困るのは「少々」や「弱火」など数値化されていないところだったが、これも数をこなすうちに慣れてきた。
    調味料はカムイの舌では味の分からないものもいくつかあったが、これも隼人の反応を見て理解できるようになっていった。
    隼人は作ったものに不満を言うことも残すこともなく、ごく稀に「うまい」ということがある他はリアクションを起こすことはない。
    あまりにも口に合わない場合は眉間に皺が寄るので、それがなければ及第点だと判断している。
    カムイ自身は料理をすることが好きというわけではなかったが、化学の実験に近いのだと気付いてからは苦ではなくなったように思う。
    食材と調味料を組み合わせ、人間とハチュウ人類双方の舌に合うよう調整をする。
    もちろん自身で気付かぬ失敗も多かったと思うが、隼人の様子を見る限り、最近は随分と減ってきたのだろうと思っている。
    隼人だけでは反応がわかりかねるため、人類代表として拓馬と獏に食わせ「美味い!」と言われた料理を、ハチュウ人類代表としてバイスたちにも振る舞ってみたことがあるが。
    「カ、カムイ様の手料理……」と号泣されてしまったので、相変わらず判断出来かねることも多かった。

    (おかしな様子はなかったと思うが)
    それでも、ドアの前から動くことができなかった。
    鍵がかかっているわけではないので、ドアノブをひねれば扉は開く。
    しかし中から何やらゴソゴソと音がしているので、開けることは躊躇われた。
    ここから声をかければ良いだけの話だと、理解はしている。
    しかしカムイはドアの前で隼人を待っていた。
    十年近く共に暮して特に遠慮することなどなくなっていたつもりだったが、こういう時にそうでもないのだなと気付いてしまう。
    カムイとしては心当たりはないので、どうしたのだろうと考えていると。ガチャリと音がして、ようやくドアが開いた。
    出てきた隼人は手に何やら小袋を持っている。
    「神さん?」
    首を傾げるカムイに、隼人はそれをずいと渡してくる。
    「これはなんですか?」
    「山椒だ」
    聞いたことがある。調味料の一種のはずだが、何故このタイミングで。
    「翔から土産でもらったものを出し忘れていた」
    カムイの作ったうどんを食べて、これが必要だと思い出したのだという。
    「はぁ」
    カムイの口から出たのは何とも間の抜けた音のような返事だったが、隼人はうどんには山椒が必要だと言って機嫌が良いように見える。
    「これで次からは大丈夫だ」
    「はぁ」
    (何が大丈夫なんだ)
    あの深刻に考えた時間は何だったのだろう。
    こんなことで振り回されるのはこの人のことが気になって仕方がないからだが、自分は隼人に振り回されすぎではないだろうか。
    一つ悩みが解決したと思ったらまた別の問題に気付いてしまった。
    そしてこの悩みはおそらく解決することはないだろう。
    カムイはコーヒーを淹れてやるとキッチンに向かう隼人の後ろについて歩きながら、聞こえるのも構わず小さなため息を吐いた。

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