畏憚牡丹灯篭 ぽたりと水が垂れてきて目が覚めた。
正確には、布団に横たわっている自分の顔に水が垂れてくるのが見えた。
それはひどくゆっくりと落下してくるように思えて、(あぁ、落ちてくる)と考える時間まであったように感じたが、実際にはほんの一瞬のことだったろう。
何故だか避けなければとは考えず、頬に当たりはじけ飛んだ水滴を手で拭おうとして、腕が動かないことに気付く。あぁ、腹の上に針が乗っている。たった一本だ。たった一本の縫い針が垂直に乗っているだけで、まるで巨大な岩でも乗せられているかのように身動きが取れない。そこへもう一滴、水滴が落ちて来る。
今日は夕暮れから雨が降っていた。ここのところ、雨が降ることが多いように思う。
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