迷惑をかけるイコプリ【クラウチ編】「イコさんって、ぼくに夢見てるところがあるんだよね」
そう心の底から困ったような声音で、しかしその実まったく困っていない王子が、ため息混じりに言った。
学校を終えた、夜間防衛任務までの待機時間のことだった。俺が一人で隊室のソファに腰掛け、タブレットで先日のランク戦の映像データを視聴していると、音もなくドアが開いた。現れたのは王子だった。
「ねぇクラウチ、ちょっと話を聞いて欲しいんだ」
そう切り出しながら、王子は「いいとこのどら焼き」を軽く掲げた。おすそ分けだとのことで、小さめの紙袋に4つ、こしあんと栗あんの2種類が2つずつ。隊員皆の分を貰ってきたようだ。
「クラウチは栗のほうがいいよね。ちゃんと選んできたんだ」と殊勝なことを口にしながら、王子はローテーブルの上にどら焼きを置く。
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