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    周りに内緒で付き合っていたイコプリ。

    #イコプリ
    iconography

    イコプリ①事後、生駒の裸の胸に抱かれながら、ベッドの上で王子はまったりと幸せを噛み締めながら過ごしていた。
    「腹減ったな〜、これからなんか食べに行く?」
    天井をぼんやり眺める生駒に尋ねられ、王子は「いいね」と弾む声で答える。
    そのとき、部屋のチャイムが鳴り、生駒が「え?」と驚いたように起き上がる。チャイムを鳴らした癖にドアをどんどんと叩く慌しい音が響き、外から「イコさん、たこパしましょう〜!」「材料買ってきました」「起きてます?」というよく知った騒がしい声が聞こえてきた。
    「え? なんで今日いきなり?」と生駒自身も困惑していたが、もっと驚いたのは王子の方である。生駒隊が仲良いのは知っているが、プライベートすらないのだろうか。生駒と付き合っていることは他言していないので余計に焦る。
    生駒は裸の王子を脱ぎ捨てた服とともにクローゼットへ押しやり、「とりあえずここに隠れといてくれへん? すぐ帰すから」と有無を言わさず扉を閉めた。
    生駒はその後急いで着替えて部屋のドアを開け、急な来客へと応対する。
    「……なあ、たこパって来週やなかった?」
    開口一番にそう聞けば、「来週やるのはお好み焼きパーティーです」と誰ともなく返ってきた。
    「自分ら粉もんほんま好きやなぁ。でも今日はあかんで。これから大事なお客さんが来るからな」
    「お客さんも一緒にたこパすればいいじゃないですか! きっと仲良くなれるっすよー!」
    一体何を根拠に南沢はそう言うのか。しかしその一言で雪崩れ込むように南沢と水上と隠岐が部屋に入ってきた。
    「ちょ、まだええとは言ってへん……あれ、マリオちゃんは?」
    「誘ったけど用事あるって言われました!」
    最早手慣れた様子でたこ焼きの準備にかかる三人を止められず、どうしようかと生駒は思ったが、ここまで来ると受け入れるしかないなと思った。
    堪らないのはクローゼットの中で着替えながら隠れている王子である。これからご飯を食べに行くって誘われたから胃だって期待して待っていたのに、いつの間にか部屋の中はたこ焼きの匂いが充満してきていて、王子のお腹が小さく「くうぅ……」と鳴った。お腹の音が聞かれなかったか王子は焦ったが、それ以上に生駒隊の話し声の方が遥かに大きく、ほっとする。
    結局たこ焼きパーティーというのが終わるのを待つしかなく、王子はお腹を空かせたままクローゼットの中で座って隠れているしかない。
    絶望的な気分の王子とは対照的にクローゼットの外はめちゃくちゃ盛り上がっている。
    その内王子は、尿意を感じてきた。
    あ、どうしよう、今出られないのに……と焦って、様子を伺いながら早くみんなが帰るよう願うが、一度気づいてしまうと、膀胱がたちまち圧迫されていく感覚に陥る。
    「ところで王子先輩って、ほんまイコさんのこと好きっすよねぇ」
    様子を伺っていたら、自分の名前が出てきたので、王子は息を潜めて会話に集中する。発言したのは隠岐っぽかった。「あー、そうやな」と言葉を繋いだのは水上だった。
    「でも王子とイコさんって合わんぽくないか?」「王子先輩って気ぃ強いし我儘そうですもんねぇ」
    「ハイブランドとか好きそうっすね! お洒落なカフェとかじゃないと機嫌損ねそうな気がするっす!」
    生駒は好き勝手言う三人に「そんなことで怒らんとは思うけど……」とフォローをしてくれているようだった。しかし水上は目敏く「怒らんと思う……けど?」と詰め寄って聞いてくる。生駒は少し考え、続けた。
    「……けど、俺と一緒におると、知らず知らずのうちにオージは我慢してたりするんかもしれん」
    クローゼットの中で聞いていた王子は、我慢の限界だった。
    ……バァンッ……!
    突然部屋のクローゼットが大きな音とともに開かれ、「え?!」と一同そちらを見る。
    するとなぜだか生駒の部屋のクローゼットの中に王子がいて、三人は唖然とする。
    生駒も突然なんの脈略もなく出てきた王子に驚いて、クローゼットまで駆け寄った。
    「オ、オージ、出てきたらあかんやん……」
    「……おしっこ……」
    「え?」
    「おしっこ行きたくなったの!」
    「…………あ、トイレは右にあるけど……」
    「知ってる!」
    王子は部屋のトイレにどすどすと足音を立てて入っていき、しばらく経って、ジャー、というトイレを流す音とともに出てきた。
    「スッキリした」
    「……良かったね……」
    「ぼく、お邪魔みたいだから帰るね」
    「ま、待って、オージ……」
    生駒がその手を掴んで止めようとすると王子から、ぐぎゅるぎゅぎゅぎゅ〜というお腹の音が聞こえてくる。
    「……腹減ってんのか? たこ焼きならいっぱいあるから食う?」
    促され、我慢出来なくなった王子はテーブル前に座り「お邪魔します」とたこ焼きを口の中へと放り込んだ。
    「イコさん」
    「はい……」
    「ぼく、ずっと我慢してたんだよ」
    「……え」
    「イコさんと付き合う前は、イコさんのこと、ずっと我慢してた。だけど今はイコさんのこと我慢しなくていいから、ぼく、何も我慢なんてしてないよ」
    「オージ……」
    「後、オッキー、みずかみんぐ、カイくん。例えきみたちのイメージどおりだとしても、ぼくの嗜好でイコさんに迷惑かけることはしないから安心して」
    王子はたこ焼きを食べ終えると、ティッシュで口を拭き、「ごちそうさま」と手を合わせた。
    しばらく驚きで動けなかった三人は、話しかけられてようやく居住まいを正すことが出来た。
    「「「……ご、ごめんなさい」」」
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    水鳥の

    MOURNING初のイコプリSS。大半が十九歳。関西弁は空気で読んでください。 付き合ってからと言うもの、王子は事あるごとに生駒に好きを伝えたがる。
    「好きだよ、イコさん」
     時も場所関係なく伝えられる言葉に、生駒は不思議そうに尋ねたことがある。
    「なんや、王子、どないしたん?」
    「うーん、何でもないよ。ただ言いたいだけ」
    「それなら、ええ」
     にこにこといつもと変わらない笑顔を張り付けて、王子は生駒に言う。生駒は、本当にそうなら問題ないな、と頷いた。
     
    「で、今も続いてる、と」
     生駒から経緯を聞いていた弓場は、片眉を器用に持ち上げて嫌そうな表情をした。
    「そうや」
     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
     日差しの気持ちよい午後、ボーダーのラウンジの一角に何故か十九歳組が集まり、何故か近況はどうなのかと言う事になり、何故か、王子と付き合っている生駒の悩み相談が開始された。
    「王子も可愛いところあるじゃないか」
     嵐山が、どこが悩みなんだ? と不思議そうに言う。
    「いや、何回も続くと生駒も鬱陶しいんじゃないのか?」
     嵐山の問いに柿崎が答える。
    「いや、そんなんないな」
     生駒は、当たり前だと言うように柿崎の言葉を否定した。
    「ないのかよ」
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