Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
    Pixiv https://www.pixiv.net/users/3373730/novels
    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🎵 🍆 🍇 💘
    POIPOI 76

    palco_WT

    ☆quiet follow

    https://twitter.com/tsunapal/status/1414593875008651267の流れ。

    お盆に(肉親は)誰もいない三門にそれでも里帰りする神田。

    #ワールドトリガー
    WorldTrigger
    #かんゆば
    driedBeancurd
    #神弓
    sacredBow
    #神田忠臣
    tadanoriKanda
    #弓場拓磨
    takumaBowaba

    きみがいるだけで おめェーの図体だと食いたりねェーだろう。
     弓場家での夕食が済み、お客さんにそんなことをさせるなんてという弓場の両親に人たらしの笑顔でいなしながら、後片付けを手伝い終えた神田にかけられたのがその一言だった。
    「いえ、そんなことは……」
    「駅前のラーメン屋にちょっといってくる。ボーダーにいた頃からよく行ってたから神田こいつには懐かしい味だろうし」
     家族にそう断って、戸惑い顔の神田を弓場は強引に外へと連れ出した。防衛隊員として夜討ち朝駆けで出ていくことも多く、成人した長男とその部下だった青年の間で積もる話もあろうと推してくれたのか、父親も母親も黙って送り出してくれた。
     その道の途中。並んで歩きながら、弓場がぽつりと口を開いた。
    「悪かったな、うちのが調子乗って」
    「え、何がですか」
    「うちの子になっちまえば、なんてな。ガキにしても無神経な言い草だ。あとで〆とくから勘弁してくれ」
    「はは、俺は気にしてませんよ」
    「まあ、構わねェがどうする、なんてつい言っちまった俺も同罪だがな」
    「同罪だなんて大袈裟な」
     でもそんな第一印象には似合わぬ堅苦しいまでの生真面目さとこまやかさが、自分の心を奪った彼らしくて。
    「それに俺が誰んの子になっても、真っ当に生きてれば親父もおふくろもきっと文句は言わないと思いますから」
    「おめェーのご両親らしいな」
     一度会ってみたかったなァ、と弓場は体裁だけではないと分かる口調でつぶやいた。
    「俺も会わせてみたかったです。このひとが俺の想い人です、って」
     くくく、と弓場は柔らかく笑う。おろした前髪の下の顔は柔和な印象すらあって、じわりとした暑さが残るこんな宵でも触れたらさらりとした感触があるのではないかと思えた。
    「嬉しいです。弓場さんのご家族にそういうふうに思ってもらえるなんて。本当に」
     少しためらってから、神田は弓場の背中に腕を回して、唇を重ねながら笑ってみせる。
    「けど、俺はおめェーの名前が一揃いで気に入ってんだよ」
    「俺もですよ。ずっと弓場さんが呼んでくれたこの名前、好きですよ。でも弓場忠臣っていうのも悪くないでしょう?」
    「神田拓磨ってェのもそう味が悪い響きでもなくねェだろ」
    「ははは。だったら今度から拓磨さんって呼んでいいですか?」
    「好きにしろ。……忠臣」
     舌に乗せてはみたものの、それはまだ馴染むものではないらしく、弓場の珍しく少し困ったような顔がぼんやりとした街頭に照らし出される。
    「また、来年、お世話になってもいいですか」
    「ああ。遠慮なく来やがれ。親も、弟も妹も喜ぶ。当然、俺もな」
    「ありがとうございます」
     一年に一度、お盆の時だけ、神田は遠い九州から故郷である三門の街に帰ってくる。係累はすでにおらず、親戚たちも近界の襲来が絶えない三門の街から離れ、神田の父母が眠る墓地を参る人はいないはずだった。それでも神田がここを発つ時に供え、そして枯れているであろう花はすでに片付けられ、新しい花が活けられた名残があり、雑草や蜘蛛の巣も取り払われていた。
     誰が、とは察していたけれど、彼はそれを告げはしない。そんな不器用な優しさが愛しくて、ただ愛しくて。
    「弓場さん、もし好きな人ができたら一番に教えてくださいね。俺、おめでとうって言いますから。それこそ遠慮なく」
     彼にもし新しい恋人が出来たとしても構わない。迎えてくれるこの腕の記憶が、永遠に、この街を神田にとって故郷でいさせてくれる。
    「何言ってんだ。野暮天が」
     こつん、と弓場の拳が神田の厚みのある胸板をやんわりと叩き、ほのかな痛みだけを胸の深いところに残した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🇱🇴🇻🇪💯🙏❤😭❤❤🙏💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    palco_WT

    DOODLE合コンの頭数合わせに呼ばれてうっかりした弓場ちゃんが神田に回収されるの巻。
    (https://twitter.com/palco87/status/1331039561263181824)
    合鍵を貰っておいて良かった、と居酒屋から何とかか彼の部屋まで連れて帰ってきた弓場をベッドに横たえて、水やタオル、万が一嘔吐した時のことを考えてバケツと新聞紙をその傍らに用意する。
    「すまねェ」
     一度も聞いたことのない弱々しい弓場の声に、神田は眉をひそめながらもベッドの近くに引き寄せた椅子に腰かける。
    「大丈夫ですか?」
    「こんなことなら手ェすべったフリでもしてグラスを倒すほうが利巧だったかもしんねェな」
    「?」
     意味が分からずきょとんとした顔の神田に、店に迷惑かけるしなァと、弓場は言い足し、
    「俺の隣に座ってた女が化粧直しに立った隙に、反対側に座ってた奴が一服盛った気配があってな」
    「は!?」
     話には聞いたことはあるがそれは犯罪では???と神田はまなこが落ちそうなくらいに目を剥いた。
    「胸倉掴んで鼻骨のひとつもへし折ってやっても良かったんだが、幹事の知り合いの諏訪さんたちの顔ォ潰すわけにも行かねェーからな。間違ったフリして俺が呑んじまえばいいやと思って、一気に空けちまったんだが、睡眠導入剤ってやつだっけ? 結構効くもんだな。未成年だってェーのは言ってあったから酒呑むわけにはいかね 966

    palco_WT

    MAIKING今宵星がきみに降りるから

    高三弓場ちゃ、神田や蔵内、王子たちが二年のまだ旧弓場隊の頃のクリスマス前後。
    弓場が大学進学が内定したあたりで王子は独立する予定。六頴館だからもう決まってるのかな……
    六頴館高校から本部へと、部下の神田と蔵内を共に向かう道の途中、弓場がふと足を止めたのは青果店の前だった。
    「神田、蔵内、おまえら、リンゴ好きか?」
    「……? 好きですよ」
    「ええ。王子がたまに淹れてくれるアップルティーを楽しみにするくらいには」
    「そうか。なら、キャラメリゼして……」
     何事か小さくつぶやいた弓場は少し考えてから、一見梨にも見えそうな薄い黄色の皮の林檎を幾つか買い求めた。
    「煮るんなら紅玉みてェな酸いリンゴのほうが味が際立つんだが、甘みが強いならキャラメルソースにも負けねェだろ」
     星の金貨、と書かれた林檎を掌に納めて、弓場は透明なレンズの奥の天鵞絨《ベルベット》のようなしっとりした夜の色でありながら品の良い光沢を備えた瞳を細めた。
    「星の金貨……? っていうと昔のドラマの?」
    「関係ねェよ。見た目が金貨みたいな淡い色だからそう名付けたって話だ。品種名はあおり15だったかな」
    「弓場さん、農学部にでも行くんですか」
    「ねえだろ、三大《サンダイ》には」
     何言ってんだと弓場は笑いかけた蔵内にひとつ手渡し、もうひとつには軽くキスをしてから、神田へと放り投げた。お手玉をするよ 720

    recommended works

    palco_WT

    MAIKING折本にするつもりだったけど流し込んだらはみ出て笑うしかなかった……加減……分量の加減……狭い遠征艇での窮屈な環境と、門による跳躍が影響する三半規管だかトリオン臓器に由来する何かの器官に由来するもののせいなのかは分からないが、いわゆる空間識失調《バーディゴ》っていうのはこんなものなのかもしれない。
     シャバの空気を吸って半日以上経つのに、まだ本復しない体にハッパをかけながら、休暇明けには提出しないといけない仕事に手をつけては、もう無理と倒れ、いややらないといけないと起き上がり、しかし少し経ってはちょっと休むを繰り返していた冬島の携帯端末が着信に震えたのは、そろそろ空腹を胃袋が訴えかけた夕暮れ時だった。
    「おう、何だ、勇」
    「隊長、今からそっち行くけど、なんか買ってくもんあっか? どうせ、遠征から戻ってからぶっ倒れたままだろ」
     ありがてえ、とローテーブルを前に床にひっくり返って天井を見上げたまま、冬島は携帯端末に向かって矢継ぎ早に告げる。
    「弁当なんでも、あと甘い菓子パン何個か。ドーナツでもいい。それとチョコレート味の何か」
    「何かって何だよ。ケットーチ上がるぞ。カップ麺は?」
    「ハコでストックしてあるから大丈夫」
    「その分だと缶ビールもいらねえな。煙草《モク》は?」
    「そ 3454