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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    palco_WT

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    https://twitter.com/tsunapal/status/1414593875008651267の流れ。

    お盆に(肉親は)誰もいない三門にそれでも里帰りする神田。

    #ワールドトリガー
    WorldTrigger
    #かんゆば
    driedBeancurd
    #神弓
    sacredBow
    #神田忠臣
    tadanoriKanda
    #弓場拓磨
    takumaBowaba

    きみがいるだけで おめェーの図体だと食いたりねェーだろう。
     弓場家での夕食が済み、お客さんにそんなことをさせるなんてという弓場の両親に人たらしの笑顔でいなしながら、後片付けを手伝い終えた神田にかけられたのがその一言だった。
    「いえ、そんなことは……」
    「駅前のラーメン屋にちょっといってくる。ボーダーにいた頃からよく行ってたから神田こいつには懐かしい味だろうし」
     家族にそう断って、戸惑い顔の神田を弓場は強引に外へと連れ出した。防衛隊員として夜討ち朝駆けで出ていくことも多く、成人した長男とその部下だった青年の間で積もる話もあろうと推してくれたのか、父親も母親も黙って送り出してくれた。
     その道の途中。並んで歩きながら、弓場がぽつりと口を開いた。
    「悪かったな、うちのが調子乗って」
    「え、何がですか」
    「うちの子になっちまえば、なんてな。ガキにしても無神経な言い草だ。あとで〆とくから勘弁してくれ」
    「はは、俺は気にしてませんよ」
    「まあ、構わねェがどうする、なんてつい言っちまった俺も同罪だがな」
    「同罪だなんて大袈裟な」
     でもそんな第一印象には似合わぬ堅苦しいまでの生真面目さとこまやかさが、自分の心を奪った彼らしくて。
    「それに俺が誰んの子になっても、真っ当に生きてれば親父もおふくろもきっと文句は言わないと思いますから」
    「おめェーのご両親らしいな」
     一度会ってみたかったなァ、と弓場は体裁だけではないと分かる口調でつぶやいた。
    「俺も会わせてみたかったです。このひとが俺の想い人です、って」
     くくく、と弓場は柔らかく笑う。おろした前髪の下の顔は柔和な印象すらあって、じわりとした暑さが残るこんな宵でも触れたらさらりとした感触があるのではないかと思えた。
    「嬉しいです。弓場さんのご家族にそういうふうに思ってもらえるなんて。本当に」
     少しためらってから、神田は弓場の背中に腕を回して、唇を重ねながら笑ってみせる。
    「けど、俺はおめェーの名前が一揃いで気に入ってんだよ」
    「俺もですよ。ずっと弓場さんが呼んでくれたこの名前、好きですよ。でも弓場忠臣っていうのも悪くないでしょう?」
    「神田拓磨ってェのもそう味が悪い響きでもなくねェだろ」
    「ははは。だったら今度から拓磨さんって呼んでいいですか?」
    「好きにしろ。……忠臣」
     舌に乗せてはみたものの、それはまだ馴染むものではないらしく、弓場の珍しく少し困ったような顔がぼんやりとした街頭に照らし出される。
    「また、来年、お世話になってもいいですか」
    「ああ。遠慮なく来やがれ。親も、弟も妹も喜ぶ。当然、俺もな」
    「ありがとうございます」
     一年に一度、お盆の時だけ、神田は遠い九州から故郷である三門の街に帰ってくる。係累はすでにおらず、親戚たちも近界の襲来が絶えない三門の街から離れ、神田の父母が眠る墓地を参る人はいないはずだった。それでも神田がここを発つ時に供え、そして枯れているであろう花はすでに片付けられ、新しい花が活けられた名残があり、雑草や蜘蛛の巣も取り払われていた。
     誰が、とは察していたけれど、彼はそれを告げはしない。そんな不器用な優しさが愛しくて、ただ愛しくて。
    「弓場さん、もし好きな人ができたら一番に教えてくださいね。俺、おめでとうって言いますから。それこそ遠慮なく」
     彼にもし新しい恋人が出来たとしても構わない。迎えてくれるこの腕の記憶が、永遠に、この街を神田にとって故郷でいさせてくれる。
    「何言ってんだ。野暮天が」
     こつん、と弓場の拳が神田の厚みのある胸板をやんわりと叩き、ほのかな痛みだけを胸の深いところに残した。
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    palco_WT

    MAIKING折本にするつもりだったけど流し込んだらはみ出て笑うしかなかった……加減……分量の加減……狭い遠征艇での窮屈な環境と、門による跳躍が影響する三半規管だかトリオン臓器に由来する何かの器官に由来するもののせいなのかは分からないが、いわゆる空間識失調《バーディゴ》っていうのはこんなものなのかもしれない。
     シャバの空気を吸って半日以上経つのに、まだ本復しない体にハッパをかけながら、休暇明けには提出しないといけない仕事に手をつけては、もう無理と倒れ、いややらないといけないと起き上がり、しかし少し経ってはちょっと休むを繰り返していた冬島の携帯端末が着信に震えたのは、そろそろ空腹を胃袋が訴えかけた夕暮れ時だった。
    「おう、何だ、勇」
    「隊長、今からそっち行くけど、なんか買ってくもんあっか? どうせ、遠征から戻ってからぶっ倒れたままだろ」
     ありがてえ、とローテーブルを前に床にひっくり返って天井を見上げたまま、冬島は携帯端末に向かって矢継ぎ早に告げる。
    「弁当なんでも、あと甘い菓子パン何個か。ドーナツでもいい。それとチョコレート味の何か」
    「何かって何だよ。ケットーチ上がるぞ。カップ麺は?」
    「ハコでストックしてあるから大丈夫」
    「その分だと缶ビールもいらねえな。煙草《モク》は?」
    「そ 3454

    palco_WT

    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983