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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    palco_WT

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    米三輪テーマアンソロのおまけの小話。
    特にネタバレにはならないですが拙作「遠い約束」を読んでからだといいかも。

    #米三輪
    riceTricycle

    きみに咲く 防衛任務で三輪隊の戦闘員たちが担当エリアに向かう道すがらだった。
     米屋がすでに四年人の手が入らなくなって雑草だらけになってしまった、どこかの家の庭先に咲いていた、三輪隊の隊服を思わせる色合いのそれに目を留めたのは。
    「お、リンドウじゃん」
    「……」
    「何その目」
     立ち止まった米屋より数歩先に行った奈良坂の端正な顔が驚いたような表情で彩られていた。
    「いや、タンポポやサクラ程度ならともかく、おまえが花の名前を知ってるなんて珍しいなと思って」
    「ひっでえ言い草」
     米屋はからからと笑い、だが少しだけ様子を改めて照れくさそうに告げた。
    「昔、教えてくれた人がいるんだ。薬にもなるし、こんなキレーな感じの花なのに竜の胆って書くんだろ、確か」
    「それなら聞いたことがあります。リンドウは花も葉もとても苦いとかで、だから熊の胆よりも苦いから竜の胆、って」
    「蛇ならともかく竜なんか食ったことある奴なんかいねーのに?」
    「例えですよ、つまりは」
     古寺が呆れたように応じる。
    「でも花屋で見るのに比べると少し小さくないか?」
    「……これはたぶん自然のリンドウだな。この家の人が山かどこかで見つけてくるかして庭に植えたんだろう。ああいう場所で売っているやつはそれ用に栽培されて背が高いものが殆どらしいから」
     それまで繁茂した草に埋もれるように咲いた小さく可憐な花を黙って見つめていただけの三輪が淡々と口にした。かすかに柔らかな気配を、その黎明がにじんだようなまなざしに浮かべながら。
     へえ、と奈良坂も古寺も三輪の言葉に感心したようにそれぞれ呟いた。米屋以外は。
    「姉さんが好きだった花だったからな。さあ、行くぞ。五分前には現着したい」
     感情の色を見せずにそれだけを言い添えた隊長の言葉に隊員たちはそれぞれ頷いて、止めた足を再び動かした。
    「なあ、秀次。あれの花言葉ってさ、『悲しんでいるあなたを愛する』って言うらしいじゃん」
    「……らしいな。本当によく知ってる」
    「ホント、オレもよく忘れなかったと思うよ。その・・・に教えてもらったのは五年以上前なのにさ。けどさ、オレは悲しんでようが怒ってようが、好きな奴は好きだけどな」
     それだけを三輪に囁くと、さて一番首を貰うかね!と米屋は視線の先にじわりと開こうとする門に向かって爽籟のように駆け出した。
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    palco_WT

    MAIKING折本にするつもりだったけど流し込んだらはみ出て笑うしかなかった……加減……分量の加減……狭い遠征艇での窮屈な環境と、門による跳躍が影響する三半規管だかトリオン臓器に由来する何かの器官に由来するもののせいなのかは分からないが、いわゆる空間識失調《バーディゴ》っていうのはこんなものなのかもしれない。
     シャバの空気を吸って半日以上経つのに、まだ本復しない体にハッパをかけながら、休暇明けには提出しないといけない仕事に手をつけては、もう無理と倒れ、いややらないといけないと起き上がり、しかし少し経ってはちょっと休むを繰り返していた冬島の携帯端末が着信に震えたのは、そろそろ空腹を胃袋が訴えかけた夕暮れ時だった。
    「おう、何だ、勇」
    「隊長、今からそっち行くけど、なんか買ってくもんあっか? どうせ、遠征から戻ってからぶっ倒れたままだろ」
     ありがてえ、とローテーブルを前に床にひっくり返って天井を見上げたまま、冬島は携帯端末に向かって矢継ぎ早に告げる。
    「弁当なんでも、あと甘い菓子パン何個か。ドーナツでもいい。それとチョコレート味の何か」
    「何かって何だよ。ケットーチ上がるぞ。カップ麺は?」
    「ハコでストックしてあるから大丈夫」
    「その分だと缶ビールもいらねえな。煙草《モク》は?」
    「そ 3454

    palco_WT

    PROGRESS冬コミ新刊の水王の、水上の過去の捏造設定こんな感じ。
    まあそれでも入会金十万円+月一万余出してくれるんだからありがてえよな……(ワが2013年設定だとたぶんんぐが小学生で奨励会にあがったとしてギリギリこの制度になってるはず。その前はまとめて払ってダメだったら返金されるシステム)
    実際、活躍してるプロ棋士のご両親、弁護士だったり両親ともに大学教授だったり老舗の板前だったりするもんね……
    「ん、これ、天然モンやで」
     黄昏を溶かしこんだような色合いの、ふさふさした髪の毛の先を引っ張りながら告げる。
     A5サイズのその雑誌の、カラーページには長机に並べられた将棋盤を前に、誇らしげに、或いは照れくさそうに賞状を掲げた小学生らしき年頃の少年少女が何人か映っていた。第〇〇回ブルースター杯小学生名人戦、とアオリの文字も晴れやかな特集の、最後の写真には丸めた賞状らしき紙とトロフィーを抱えた三白眼気味の、ひょろりと背の高い男の子と、優勝:みずかみさとしくん(大阪府代表/唐綿小学校・五年生)との注釈があった。
    「でも黒いやん、こん時」と生駒が指摘する。
     彼の言葉通り、もっさりとボリュームたっぷりの髪の毛は今のような赤毛ではなく、この国にあってはまずまずありがちな黒い色をしていた。
    1983