今年の梅雨明け早すぎませんか「梅雨、明後日には明けるみたいです」
などと、どことなく寂しげに言うものだからつい手を差し伸べたくなってしまった。俺様が絆されたなんて、認めたくはないがそもそも犬に無体はできない。
「……明日」
「え?」
「休みを取れ。そうしたら一日中付き合ってやる」
「うぇ、あ、あの、ってことは」
「休みが取れんなら今のは無しだ」
取ります! と彼は勢いよく立ち上がって、俺様の手を握りしめ(痛い)、
「今夜、迎えにきます」
と、真っ赤な顔でくさい台詞を吐いた。
それからまた椅子に腰を下ろすと、そのまま俺様をギュウと抱きしめ甘え始めた。くすぐったいやら痛いやら。そもそも何故立ち上がった。気合いか?
「……まぁ、無理して仕事を休む必要はないが」
「いえ、有給まだあるんで」
無いはずの尻尾がブンブン動いてるように見える。幻覚か? まぁどちらでもいいが。
……周りにはなんと言って休むんだろうか。大体「私事により」で済むことだが。まさか、
「忙しくなる前に恋人と一日中セックスしたいから休む」
とか言わんだろうな?
「どうかしました?」
「いや」
俺様も存外凡夫だ。
明後日の自分が果たしてまともにラボに戻って来られるか、白い大型犬の髪を気ままに撫で回しながらふと思った。