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    すばる

    ヒッジとなぎこさんが好きです。

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    すばる

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    現パロ歳の差斎土の初対面です。割と最初からチョロ方さんだったな…?どんな風にヒジカタサンが絆され心を寄せていくのか楽しみです(頑張って続きを書こう)

    #斎土
    pureLand

    はじめまして、僕の恋 土方さんという人は、沖田ちゃんの『歳上の幼なじみ』らしい。近藤さんと土方さんには、小さい頃からとてもお世話になったという。
    「私の姉が忙しい時は、よく面倒を見てもらってたんです。私を部活の練習に連れてったりして。五歳児に沢庵食べさせるのはどうかと当時から思ってたんですけどね!」
     沢庵が好き、めちゃくちゃモテる、それでいて剣道は強い、高校の時は剣道部と文芸部を兼部していた、この大学のOBでもある。そんな土方さんの断片的な情報。
    「土方さんがいたから、私も自然とこの学校に行くんだろうなぁ、って思っちゃったんですよね」
     ちなみにこの学校は、『自然と思って』で入れない程度には難度が高い。それだけ沖田ちゃんが優秀だということだろう。
     沖田ちゃんとは、第二外国語のクラスで知り合った。うがった見方をするのが好きな連中は、僕と沖田ちゃんがつき合っていると思っている。
     沖田ちゃんは、確かに顔はいいのだけど……なんか違うとしか言いようがない。カノジョという柄ではない。性格がさっぱりしすぎていて情緒がない。
     土方さんはこの学校を出て就職し、今では激務に身を置いているという。
    「沖田ちゃん、土方さんのこと好きなの?」
    「いやいや そんなんじゃないですよ。あんな人を好きになったら身が持ちませんよ」
     即答だ。
     そこまで言わせる土方さんという人が気になった。なにしろ性別すらわからない。クールなタイプを想像するが、もしかしたら妖しい雰囲気の人かもしれない。
     そんなことを思っていたら、学年が変わってすぐ、沖田ちゃんにスマホのメッセージアプリを見せられた。
    「久しぶりに土方さんと会うんですよ、斎藤さんもどうです?」
    「いや、水入らずのとこに僕が入るのは申し訳なくない?」
    「ごはんおごってもらえますよ」
     その言葉に惹かれた。
     今週の土曜の午後六時、学校最寄り駅の駅前広場に集合。
     特に何も意識せず、長袖シャツにパーカーを合わせて向かった。
    『銅像の前です』
     沖田ちゃんのメッセージを頼りに、横断歩道を渡る。銅像に目をやると、沖田ちゃんが長身の男性の横で手を振っている。
     がつん、と頭を殴られた。
     それが錯覚だと思い至るのに、少し時間がかかった。
    「斎藤さん、土方さんですよ」
    「どうも、沖田が世話になってるようで」
     僕の目の前にいるのは、スーツ姿のスレンダーな成人男性だ。身長は僕より優に十センチほど高い。
     少し威圧的に感じるのは、僕を沖田ちゃんの『悪い虫』だと思っているせいかもしれない。
     けれど、そんなことはどうでもいい。
    「はじめまして、斎藤一といいます!」
     僕は思い切り頭を下げた。
    「お、おう」
     僕の勢いに、土方さんは少し引いたかもしれない。
    「僕とつき合ってください!」
    「……は?」
     頭を下げたまま、ほぼ条件反射で僕は右手を差し出していた。
     五秒ほどの沈黙の後、ゆるゆると頭を上げると、驚きを隠せない土方さんと、引きつった沖田ちゃんの顔があった。
    「……お前、大丈夫か?」
    「沖田さんドン引きですよ。初対面で話もせずに告白って、普通あります?」
     告白した相手から心配されるのも、友人からわかりやすく引かれるのも初めてで、僕も戸惑う。
    「おい沖田」
     土方さんが沖田ちゃんに耳打ちする。
    「お前の連れ、男も好きなのか。それなら早く言え、こっちにも準備があるんだ」
    「いや、そんな話一度も聞いてなかったです……準備ってなんですか」
    「フェロモンを抑える」
    「モテるイケメンはそんなこともできるんですね」
     少しだけ冷静になって、めちゃくちゃな羞恥に襲われた。頬が熱くなる。
    「……いや」
     僕が口を開くと、土方さんと沖田ちゃんは僕を見た。
    「僕、何言ってるんでしょうね……男がいきなり告白なんかして、気持ち悪いですよね」
    「男の人を好きになるのは気持ち悪くないですけど、第一印象で告白するのはちょっと……ですね」
     沖田ちゃんは、引いているなりに僕へ気を遣ってくれる。
     初めて顔を見た時は、あまりの情報量の多さに感受性がパンクしてしまったが、少しだけ落ち着いたので土方さんの顔のよさを言語化できる。
     まず、赤い目。ぎらりとした眼光には弱さはなく、意志の強さを感じさせる。どんな困難があっても折れない人なのだろう。
     その目を派手に縁取る、向かい合って見てもわかる長いまつ毛。根元は濃すぎて、アイラインを引いているかのように目を大きく見せている。
     この目に、十メートル先から射られた。
     土方さんは、特にこちらを向いたつもりはないだろう。沖田ちゃんの振った手の先を追っただけで。それでも僕にはてきめんに効いた。
     通った鼻筋、薄くて涼やかな唇、削げた頬。髪の長さに比べたらふさふさなもみあげ。
     全体的に見ても芸術点は高いが、目力の強さには何者も勝てない。
    「斎藤、って言ったな」
     低い、特徴的な声が僕へと向けられる。
    「はっはい! なんなりと!」
    「お前は一目惚れした相手に『気持ち悪い』もんを向けんのか?」
     額に拳を受けた気がした。
     確かにそうだ。僕が土方さんに感じた『強い想い』は、僕だけのものだ。それを僕自身が『気持ち悪い』ものだと規定してしまっては、想いを向けられた土方さんにも失礼に当たる。
    (この人、絶対にいい男だ……)
     沖田ちゃんも言っていた。『めちゃくちゃモテる』と。
     それは正しい。どうしようもなく正しい。この目で、この顔で、そんなことを言えるメンタルがあって、モテないはずがない。
    「僕のこと、気持ち悪くないです……?」
    「二度は言わねぇぞ」
     それはつまり。色よい返事を期待して、僕は唇を結ぶ。
     けれど土方さんは僕の顔を見て、にやり、と唇をつり上げるだけだ。
    「話だけなら、聞いてやってもいいぜ」
     この人、絶対に人を振り慣れている。
     でも、ここで折れるわけにはいかない。こんなに誰かを求める感情を抱いたのは初めてだ。かつてつき合っていた子たちには申し訳ないけれど。
    「連絡先! 連絡先交換しましょう! いろんなお話しませんか」
    「……それ、飲み屋に行ってからもできません?」
     沖田ちゃんが、呆れ顔で言った。
    「斎藤さん、私の存在忘れてるでしょ」
    「悪いな沖田、俺がモテるせいで」
    「土方さんも! 斎藤さんをからかわないでください!」
     沖田さんはお腹を減らして来たんですから、とご機嫌斜めで言う沖田ちゃんはいつも通りで、だからこそ土方さんという日常から逸脱した存在が際立つ。
     三人で並んで、歓迎会や追いコンで行く店よりも少しランクの高い居酒屋へ入った。僕と沖田ちゃんが隣り合って、その正面に土方さんが座る形だ。
     沖田ちゃんは、テーブル備えつけの端末にぽんぽんと飲み物と食事を入力する。その横で、向かい合った僕と土方さんはメッセージアプリの連絡先を交換した。
    『友だち』になったという通知に安心すると、早速メッセージが来る。
    『抱きたいか? それとも抱かれたいか?』
     一瞬、何も考えられなくなる。大学生には刺激が強すぎる。下半身に響く。
     十秒、自分を見つめ直す。得た答えを、震える指で打ち込んだ。
    『抱きたいです』
    「ふぅん……そうか」
     土方さんはメッセージではなく口で返し、赤い目で僕を見た。
     そうだ。僕はこの人をどうにかしたい。どうにかされるのではなく。抱きしめて、めちゃくちゃに僕の感情を伝えたい。
     十五分前には、自分が男の人を抱きたくなるなんて予想もしていなかった。
    『なんで、そんなこと聞いたんです?』
     僕の気持ちに応えるため?
     打ち込んだ文字に込めた僕の期待は、見事にはぐらかされた。
    『聞いただけだ。お前がどっちなのか知りたくて』
     スマホに表示される文字列。
     僕の落胆が顔に出ていたのか、土方さんは愉しげに笑う。
     それでも、連絡先を交換してくれたのだから、まったく脈がないわけではないだろう。人を口説くなんて、初めての体験だからやり方がわからないけれど、できると思わなければ何もできない。
    「土方さん、斎藤さん、こそこそしないでくださいね」
     お通しの無限キャベツに箸を伸ばしながら、沖田ちゃんは唇を尖らせる。
    「特に斎藤さん、がっつく男はモテませんよ?」
    「その通りだな、何に乾杯する?」
     土方さんは、運ばれてきたビールのジョッキを掲げた。未成年なので、沖田ちゃんはウーロン茶、僕はカルピスのグラスだ。
    「斎藤さんの失恋に」
    「まだ振られてないし!」
    「斎藤の失恋に」
    「振らないでください!」
     からかわれながら乾杯する。カルピスが不思議とほろ苦い気がして、すぐに自分の認識を訂正する。まだ振られてはいない。
     僕の恋は必ず成就する。
     この運命を掴んだ感覚は嘘じゃない。
     そう思いたい。いや、そうでなくてはいけない。
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