蘭みつ♀(仮)幼い妹たちに寝物語で読み聞かせた童話の数々。いつの日か王子様が――、なんて人並みにロマンティックな夢を見ていたのは、いつ頃までだったろうか。
初めて人を殴った時、痛みを知ると共に忘れたような気がする。でもそれよりもっと前、父親が家を出ていった時に、現実を思い知ったような気もする。
好き、大好き、愛してる。そのどれもが、三ツ谷にはピンとこない。家族や仲間を大切に思う気持ちとその感情は、よく似ているけれど違うものなのは分かる。
クラスメイトが頬を赤らめながら話す恋バナも流行りのラブソングも、ただ耳を通り抜けていくばかり。これっぽっちも共感なんてできないのだ。
だって、三ツ谷は知っている。
そんな感情がなくたって、人はセックスできるのだ。
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