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    hiim723

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    hiim723

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    「めんどくせぇ男達」
    めんどくせぇ女みたいなキレ方をする🈁と、何にもわかってない馬鹿🐶の話。
    ココイヌ、幹部軸

    #ココイヌ
    cocoInu

    めんどくせぇ男達「イヌピーはどうして自分の事を雑に扱うの。オレの好きな人のことを大切にしてって前も言ったよね? いつもいつも、なんでオレの言うこと全然聞いてくれないの」
    ココは怒ると面倒臭い。オレが返事を考えている間に質問が重なって、もはや最後の方は質問ではなく普通に詰められている。まるでオレが悪いみたいに話を持っていかれるのだ。

    昔からそうだ。ココが怒っている時、最初はやたらニコニコした顔で話しかけてくる。
    「イヌピー、昨日どこに居た? バイクで海まで流して来たんだ、へぇ! そっかぁ、教えてくれたらよかったのに。オレが忙しそうだったから? いやいや、イヌピーよりも優先させることなんてねぇよ。オレも行きたかったな、ツーリングデート。え? デートだったんだろ? 佐藤から聞いたぜ、乾さんが走りに行くのに付き合ってくれたって。気がついたらいつのまにかそう言う流れになってた? そんなわけねぇだろ」

    ココの話は質問なのか、会話なのか、たまによくわからなくなる。相変わらずいい声で長い言葉を流暢に話すなぁ、と感心しながら聞いていたら、ココの片眉がヒクリ、と上がった。あ、くる。それまでの笑顔が嘘みたいに表情がなくなるので、ココが怒るタイミングはすぐわかる。どうせならもっと最初からわかりやすく怒ってくれたら、オレだってもう少し返事とか言い訳とかを準備する時間があるのに。そんなことを言うとさらにヒートアップさせてしまいそうだから言わないけど。
    「……それ、イヌピーのことを狙ってるんじゃないの?」
    そんなわけない。清水は(佐藤だっけ? どっちでもいい)たまたまそこにいて、バイクのカスタムをしたばかりでこれから試走をするところだと言っていたから、走りたい気分だったオレはテキトーに後ろをついて行っただけだ。別に最中会話を楽しんだわけでも、後ろに乗せたわけでも、海辺でホットココアを飲んだわけでも、寒いからポケットの中で手を繋いだわけでもない。そんなココとするようなこと、誓って清水とはやっていない。でもオレが言い返すとココはもっと怒るから、こう言う時は黙って聞くが吉。うん、ごめん、ココの言う通りだ。そんな相槌を繰り返して終わりを待つ。長年の付き合いだからわかる、オレたちの最適解だ。

    一時間くらいそのまま聞いていると、ココもちょっとずつ落ち着いてくる。オレが話しても良さそうな間というか、ココがオレの答えを聞きたいみたいに「ね、わかった?」と目で問いかける仕草が増えてくるので、そこですかさず謝る。
    「ココ、ごめん。ココの嫌がることはもうしない。許して」
    この時、ココの好きなこの顔を最大限利用するのがポイントだ。ごめん、の時は目線を下げて、許して、の時に見上げながら目を合わせる。オレの方が背が高いので、顔を俯けて身長差を調整してやる必要がある。ココはオレの顔に弱い。こうすると「しょーがないな、もうオレの嫌がることすんなよ!」と茹蛸みたいに真っ赤な顔で言うのだ。ちょっと可愛い。
    ようやく解放されるというホッとした気持ちと、ココは本当にこの顔が好きだなぁという、なんだろう、悔しさなのかな。悲しいのかな。うまく言葉にできないぐちゃぐちゃな感情がオレの中に芽生えていた。

    昔のことを思い出したら思わず口元が微笑んでしまった。目の前でぷんすかしているココにバレませんようにと思いながら視線を戻す。ココは反社の大幹部を務めるくらい金も権力もあって、昔は可愛かった顔が今はカッコ良くなった。なんでも持ってて、なんでも卒なくこなして、オレと違っていい男だと思う。それなのに怒り方だけは今も昔も変わらずめんどくせぇ女みたいだ。うーん、これはまだまだかかるな。オレにはわかる、付き合いの長い幼馴染でマブだから。
    ぼんやりしているオレのことなんてお見通し、とでも言うようにココがジロリと睨みつけてくる。どうやらオレはまたココの地雷を踏み抜いたらしい。

    「イヌピー!! 聞いてんの?! オレ、今回は絶対に許さねぇからな。前もやめてって言ったじゃん、なんでオレの嫌がることするの!」

    前、前か。いつだったかな、今日と同じ理由でココが怒ったのは。確か、10代目黒龍を結成してすぐの頃にデカい抗争があった日だ。特攻隊長のオレと親衛隊長のココ、背中を預けて喧嘩をするのは楽しかった。ココは頭がいいから効率の良い動きをする。オレの動きはココからすると無駄に大振りで雑らしい。攻撃を受ける前提で動くな、と注意されたことは何度もある。でも、オレから言わせると相手が一番油断するのは攻撃する瞬間だ。当たったと思わせた瞬間に、無防備な頭に向かって鉄パイプを振り抜くのが1番効くんだ。でもこのやり方はココのお気に召さなかったらしい。白い特攻服がドロドロに汚れるたびにココは顔を顰めて、小言をぐちぐち言いながらオレの服を剥いで、ぐちゃぐちゃになった特攻服をゴミ箱に投げ入れる。
    「イヌピー、お疲れ様。今日のボス凄かったな。ブルドーザーみたいにモブが蹴散らされていくのは見てて楽しかったよ。イヌピーはボスとは違うから、何回かガタイいいのにぶつかって吹っ飛ばされてたよな。しかも途中で頭にくらってただろ。喧嘩場でいきなりイヌピーが見えなくなったと思ったら、相手に乗り上げられて頭揺すられてて……オレ、気が動転しちゃったよ。なぁ、なんであんなことになってたの。オレが助けなかったら、オマエ、ヤバかったんだぜ」

    言いながら、ココの怒りゲージはどんどん上がっているらしかった。途中から顔を俯かせて、ココの声から作り笑いみたいなものが消えて、いつものパターンに入りそうな気配を察知した。
    今日の抗争は黒龍にとって大切な一戦になるってココが言ってたから絶対負けられなかったし、オレは勝ってココに喜んで欲しかった。イヌピー、お疲れ様! 凄いじゃん、さすがオレのイヌピー! そう言って頭を撫でて欲しかった。それだけの理由でオレは前に向かって走り出せた。頭の良くないオレがココの役に立てるのはこう言う時しかないから。この顔じゃなくて、オレがココに褒められたかったんだ。でもココの様子を見るにオレは失敗したらしい。結局勝てたし、ココは相手の幹部みたいなやつを蹴り上げてたし、オレだってココの背中を守っていたのに、何がダメだったんだ。

    「イヌピー、なんでオレが怒ってるか分かってんのっ?!」
    「オレの動きが雑で、攻撃を受ける前提で動くから」
    「そうだよ。分かってんのに、なんでオレがやめてって言ったことを、オマエはやるの!」
    「うん、ごめん」
    「もうあんな闘い方はしないで。喧嘩する時はオレから離れないで。そばにいて、どこにも行かないで!!」
    「うん、わかった」

    全然わかんねぇけど、ココの言うことはなんでも聞いてあげたい気持ちになるから不思議だ。惚れた弱みかも。
    ココが顔を上げた。目がキラキラしてる、もしかしてちょっと泣いた? 怒ったり、泣いたり、ココは忙しいな。
    「ココ、ごめん。これからはココの隣にずっといる。離れない。だから、許して」
    ココが涙を拭うように目元を腕で擦っているので、その手を取って一生懸命伝えた。ココの顔は涙と鼻水でくちゃくちゃになっている。目が真っ赤に充血していて、拭われない涙がポロポロとこぼれ落ちていた。髪型とか、表情管理?とか、周りから自分がどう見えるかを普段はあれだけ気にするくせに、オレと2人きりになった時のココはそれが出来なくなるらしい。
    イヌピーに見つめられるとダメになるんだ、と以前ボスにこぼしているのをこっそり聞いたことがある。ボスは嫌そうな顔をしていた。オレはなんか嬉しくて、その日はココを愛機のケツに乗せて海まで走った。冬の寒い風に凍えるココをコンビニに連れてって、2人であったかいココアと肉まんを分け合った。海辺に着く頃には夕陽が沈みかけで、海がキラキラして綺麗だった。オレの手にそっと触れてきたココの手が冷たいので、引っ張ってポケットの中に引き摺り込んだ。ココは何も言わなかったけど、ぎゅっと手を握り返してくれたから多分正解だったんだと思う。
    あの日の海と同じくらい涙で濡れたココの瞳はキラキラしている。可愛いな。でも、その可愛い目がだんだんとつり上がっていくのが分かった。
    「イヌピー、いつも分かったって言うくせに何が悪いか全然分かってないよね?! 今日は誤魔化されないからなっ! オレ、悲しいよ。オレの好きな人のことを、イヌピーに大切にしてもらえないのがツライ。お願いだからもっと大事に扱って」
    そうか、と気がついた。この顔はもっと大切にしなきゃいけなかったんだ。オレが攻撃に全振りして、頭に一撃喰らったからココは怒っていたらしい。そりゃ怒るよな、ココの好きなものをオレは適当に扱ってたんだから。これからはもっと大切に守ろう。心の中でそっと誓った。

    決意をするオレをよそにココはぐちぐちと言葉を重ねている。わかった、もうわかったから。今度こそわかった。そう思いながら相槌を打つのに、ココは全然納得していない様子でオレに小言をぶつけてくる。どうしたもんかな。前は手を繋ぐのが正解だったけど。今のままでは話にならないので、ひとまず口を塞ぐことにする。
    「んむ」
    オレの両手はココの手を押さえるのに使ってしまっていたから、口で押さえた。ココがさらに何か言おうと口を開いたので、そうはさせるかとさらに深く吸いつく。ココが暴れなくなってから解放すると、ココの顔は茹蛸みたいに真っ赤になっていた。フフ、可愛い。
    「ココ、話聞いて。ごめん、もうわかった。オレ、これからはココの好きな人のことを大切に守るよ」
    「それってオッケーってこと?」
    「うん、オッケー」
    そっからのココはビビるくらい上機嫌だった。「これからは2人でずっと一緒にいような」とオレの手を取って嬉しそうに笑っている。よかった。怒っている顔も泣いている顔も嫌いじゃないけど、オレはココの笑った顔が好きなんだ。オレは今度こそ満点解答ができたらしい。嬉しそうなココを見ていたらオレも嬉しくなった。目があって微笑むと、ココはオレの頬に手を添えてニコニコと眺め始めた。本当にこの顔が好きなんだなと寂しい気持ちで見つめ返していたら、そのままキスをされた。オレのファーストキスはココの涙の味がした。

    それから約束通りオレはココのそばにいたし、この顔に傷がつかないように立ち回る術を覚えた。それからもココに何度も怒られることはあったけど、手を繋いだり、キスして宥めて許してもらっていた。オレはずっとココのものになりたかったから、そう言う関係になるのもあっという間だった。ココがオレの中に入って来た時、「痛くない?」と声をかけてくれたのがすごく嬉しかった。オレのことを気にかけてくれているみたいで。それから何度も一緒に寝たけどココはずっと優しかった。本当にいい男だ。怒ると途端に女々しくなるけど。
    そうして2人で過ごすうちに、気がついたら反社の幹部になっていた。オレ達は誰にも引き離されないくらい強く結びついているから、きっとこれで合ってたんだと思う。

    美しい思い出に一区切りをつけて、目の前にいるココに目線を戻す。いつもあれだけ他人から見られることを気にかけているくせに、今日のココはボロボロだ。目のクマがひどいし白いメッシュを入れた髪が艶を失ってボサボサになっていた。顔も青白くて、涙の跡も見える。というか、現在進行形で涙がポロポロと落ちてきている。泣くなよって涙を拭ってやりたいけれど、できない。オレの腕も足も、包帯でぐるぐる巻きになって動かないから。襲われたココを助けようとして負った名誉の負傷だった。けど、ココに言わせると、ココの言うことを聞かなかったオレが悪いらしい。なんでだ。

    ココはオレと違って頭も良くて、誰からも欲しがられる価値のある男だったからしょっちゅう命を狙われていた。オレがココにぴったりくっついて離れないウチは問題ないけど、諸々の関係でココだけが仕事を受けることもある。一昨日がそうだった。この怪我の原因でもある。
    イザナがココを呼び出した。「ついていこうか」と目で聞くと、「イヌピーは先に家に帰って、温かいお風呂と布団を準備して待ってて。オレ、帰ったらイヌピーとぬくぬくしたいな」と言葉で返された。ココは寒がりだしなと思って力強く頷くと、横にいたイザナに頭を叩かれた。イザナはそのままオレを無視してスタスタと歩き出し、ココはそれについていった。なんで殴られたんだ、オレ。イザナは昔から理不尽な暴力しかオレに与えない。
    その日はココを囮にしてラットを引き摺り出すという仕事だったらしい。らしい、とつけた理由はオレがそんなこと聞かされてなかったからだ。イザナの意地悪かもしれない。または、ラットがオレの側近だったからかもしれない。オレがココを裏切るわけなんてないし、ココに害を及ぼすと教えてもらっていればさっさと切り捨てたのに。何にも知らされてなかったおかげで、タワマンの部屋で言われた通りに風呂を沸かしていたオレはココが襲撃されたという連絡を受けて飛び上がった。慌ててその辺にあった服を着て、バイクに飛び乗って現場に向かった。護衛や部下を呼ぶことも忘れていた。大切な人が傷つくかもと想像してかなり気が動転していたんだと、今ならわかる。

    側近だった佐藤は(清水だっけ? 忘れた)ココを罠に嵌めて複数人で取り囲んでいた。本来なら移動した先にココの手配した東卍構成員が待ち構えており、数の暴力で奴らを押さえてそれでおしまいという簡単な話だったらしい。
    でもオレはそんな出来上がったストーリーを知らなかった。だからココを連れ去ろうとする奴らと派手にやり合った。ココは車の中で手足を縛られて動けない。オレに向かって何か叫んでいたけど、頭に血が昇ったオレには何も届かなかった。散々暴れ回って、首謀者を殴り倒す。オレに拳銃を突きつけられた清水は「乾さん、オレはあなたのために」そんな陳腐で響かない言葉を最後に言い残し、事切れた。
    ひと息つく暇もなく残党に囲まれて、殴られる。殴り返す。骨の折れる音がする、これはオレの骨か? わからん、もはや痛みも感じない。しばらく暴れていると東卍の構成員達が駆けつけてきた。本来囲む予定だった場所から慌てて移動してきたらしいが、おせぇよ。ほとんど終わってんだけど。
    ふぅ、と一息ついてココを振り返る。かっこよく助けに来たら喜んでもらえるかなと期待していたけど、オレが思ったよりボロボロにやられたせいかココは縛られたまま車の中で怒り狂っていた。窮屈な思いさせてごめんな、と手足の拘束を解いてやる。

    「ちゃんと計画があったのに! ていうかイヌピーに言ったよね、今日は遅くなるから先にお風呂入って布団温めておいてって! 大人しく待っててって言ったじゃん、なんで言う事聞いてくれないのっ!」

    そう言って怒るココをなんとか宥めようとする。「ごめん、ココ、帰ったら話そう」しかし全然収まらない。流石に一人で大人数相手に立ち回ったので疲労困憊というか、おそらく何本か骨も折れている。正直立っているのがやっとでココの小言を聞く余裕がない。叶うことなら車のシートでいいから今すぐ寝たい。でも今寝たら確実にココは怒る。「イヌピー、話聞いてる?! なぁ、オレの気持ちちゃんと伝わってる? オレは約束守ってもらえなかったことが悲しいんじゃないの。イヌピーが自分のことを守ろうとしないのが嫌なの!」ほらな。
    ふと視線を上げると、ココの背後に鉄パイプを持った男がにじり寄っているのが見えた。思い切り振りかぶっている。咄嗟にココを抱えて引き寄せる。ガツン、目の前に星が飛び交った。頭が割れるように熱い、いや痛い。無様に地面に倒れ込んだ身体はピクリとも動かせない。ボヤける視界の中、なんとかココに視線を寄越すと、目を見開いたままオレの顔をまっすぐ見ていた。怒っているのかもしれない。この顔を大切にするって約束したのに。
    これは家に帰ったら説教コース3時間だ。オレはいつもオマエを怒らせてるな。今日だけじゃない、きっとあの火事の日も。ずっと申し訳ないと思ってるよ。ココにも、赤音にも、2人に謝りたいって思ってる。でもあの日のことを話題に出すのはなんとなくダメな気がして、ずっと言いそびれてるんだ。ごめん、ごめんな、ココ。オレ、バカでほんとごめん。せめて約束くらい守りたかった。でも、この顔よりもココの方が守りたい大切なものなんだ。オレはオマエが好きだから。
    そして暗転。



    目が覚めたら病院にいた。身体は麻酔が効いているのかわからないけど何故か痛くない。痛くないかわりに少しも動かせない。そして目の前にいるココはものすごく怒ってる。散々だ。泣きながら怒るなんて器用なことするなって思うけど、実はちょっとだけオレのことで泣くココが見れて嬉しい。そんなことを言ったら爆竹よりもひどい癇癪を起こすから、オレだけの秘密にしておく。
    今日はココと手を繋ぐための両腕が動かせないし、呼吸器をつけているからキスもできない。身体中ボロボロなのでココを受け入れることもできない。何にもできないオレは、ただココの怒りを受け止めることしかできない。

    「イヌピーはどうして自分の事を雑に扱うの! もっとオレの好きな人のことを大切にしてって、前も言ったよね?! いつもいつも、なんでオレの言うこと全然聞いてくれないの!」

    「イヌピー!! 聞いてんの?! オレ、今回は絶対に許さねぇからなっ! 前もやめてって言ったじゃん、なんでオレの嫌がることするの!」

    「イヌピー、話聞いてる?! なぁ、オレの気持ちちゃんと伝わってる? オレは、約束守ってもらえなかったことが悲しいんじゃないの。イヌピーが自分のことを守ろうとしないのが嫌なの!」

    うん、うん、ごめん、視線でなんとか伝わらないかな。そう思いながらココを見つめていると、ココはまっすぐオレの目を見つめ返して来た。オレの考えが伝わったのかも。けど、ココは「もうオマエの言葉は信じない!」とでも言うようなジト目になっていた。

    「イヌピー、テメェ退院したら覚えてろよ。今度こそオレはオマエにわからせてやるからな」

    何を? とは聞かなかった。声が出なかったので。でも退院したら教えてくれるらしいし、まぁいいか。

    1週間後、退院したオレは今までにないくらい優しい目をしたココに散々「わからせ」られた。詳しくは割愛する。なんでって……、そんなの言えるわけないだろ。
    どうやらココはオレの顔じゃなくてオレのことが好きだったらしい。それならそうと、もっと早く言って欲しかった。そしたらオレだって気の利いた返事とか、なんかかっこいい言葉とかを考えたのに。
    あと、オレの思っていることの半分もココには伝わっていないことも判明した。目を見たら全部わかってくれると思ってたけど、そんなことはなかったらしい。「ココのこと、スゲェ好き」声に出してみたらココはその場に膝から崩れ落ちた。嬉しかったんだって。こんなに喜んでもらえるならもっと早く言えばよかったな。

    それ以来、オレはココと、ココの好きな人のことをちゃんと大切にするようになった。約束したからってだけじゃない。どっちも大切にすればココは怒らないし嬉しそうに笑ってくれることを、今のオレは知っているからだ。
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    hiim723

    DOODLE8代目BD、ココイヌ
    アニリベ面白かったです。🚬と🎴のやりとりの最中にちょこんと座るチビーヌを見ていたら、🎴が犬猫をいじめる未来が見えました。
    🈁財布を手に入れて、🐶で憂さ晴らしをする🎴は絶対いる。

    この話の裏で、🎴が🈁に
    「🐶の値段、いくらが妥当だと思う?5000円?オマエならいくら出せる?」
    って煽るシーンがありました。
    30万の犬「オマエを一晩買った男がいる。逆らわずに、大人しくしていられるな?」

    イザナからそう言われた時、「ハイ」とだけ答えた。一晩を買う、それが何を意味しているのか分かっていたけれど、それがボスの言うことなら従わない理由なんてなかった。

    男同士でセックスできることも知っていた。
    族のセンパイ達が「下手な女よりイイ」って言っているのを耳にしたことがあったし、シンイチロウくんやワカくんからもそんな感じの話を聞いたことがあったから。

    「青宗にはまだ早いかな〜」
    「もう少し大きくなったらワルイコトなんでも教えてやるよ」

    そう言って笑う2人に「チビイヌに何を教えてるんだ」とベンケイくんがゲンコツを落として、パチンコで有り金をスったタケオミくんにもついでにグーパンしていた。「その金は家計に入れる用だったんじゃねぇのか」中々に最低なやり取りだ。最低だけれど、オレにとっては最高だった。たった一つの心が休まる大切な場所だった。一度知ってしまえば、失う事が怖くなった。
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    hiim723

    DOODLEココイヌ、なんでもいうことを聞くって、どこまで?
    至る梵バ軸
    なんでもいうこときく券「ココ、これ……」

     ある日ソファに座って仕事をしていたら、彼が横に突っ立ったまま目の前に何かを差し出してきた。なんだこれ? とよく見ると、真ん中に汚ねぇ字で「なんでもいうこときく券」とだけ書かれた白い紙だった。元々の紙をちぎって作ったのか、端の部分がヨレヨレになっている。
     顔を上げて差出人を見ると、気まずそうな瞳と目が合った。

    「……この前の取引、ぶち壊してわるかった」

     先週、かなりの大口の取引が山場を迎えていた。進捗はボスにも、もちろん特攻隊長の彼にも伝えていたはずだった。何があっても大人しく、穏便に、とにかくサインさせるところまで持っていくのだと何度も幹部会で確認した。
     取引相手のクソジジイは変態趣味で、オレらくらいの未成年に見境なく手を出すようなクズだった。オレの手を撫で回しながらにやける気持ちの悪い面を何度ぶん殴ってやりたいと思ったことが。オレですらそうなのだ。幼馴染の美しい顔、まだ完成しきっていない薄い身体は格好の餌食になるだろう。だから一度も連れて行ったことはなかった。うざいジジイのムカつく挙動についての愚痴だけ聞いてくれたらそれで充分だった。
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    hiim723

    DOODLE「好きを伝えてそれでおしまい」
    お互い言葉不足すぎて、上手く行きそうでなぜか上手く行かないココイヌ
    好きな子の告白に浮かれるポンコツノノコイと、何にも期待してないからその先なんて全然考えてなイーヌによる、すれ違いギャグのつもりです。
    好きを伝えてそれでおしまい黒龍の縄張りを荒らす新興チームのアジトに乗り込み、ひと暴れしておおよそ決着が着いた時だった。相手チームのボスの胸ぐらを掴んでその顔をボコボコに殴り続けていた特攻隊長が、ふと何かを思い出したように手を止めた。どうかしたのか、とそちらに目を向けると、青くてキラキラと光る瞳と目が合う。薄ピンク色の唇がそっと開く。彼は聞き心地の良い声で、しかし割と大きめな音でオレをまっすぐ見ながら言葉を発した。

    「好きだ、ココ」

    何を言われたのかすぐには理解できなくて、倒した相手を踏みつけていた足が止まる。
    思わず足をどかして身体を彼の方へ向け直し、真正面から顔をまじまじと見つめてしまった。相変わらず人形みたいに綺麗な顔は表情が読めないままだ。頬についた赤い血は返り血だろうか。口元が切れているのは誰かに殴られたのだろうか、帰ったら手当てしてやるからな。どうせ服の下も殴られて打ち身やあざがあるんだろう、オマエは隊長なのにいつも自分が一番前を突っ切っていくから。その姿に憧れてついていくヤツが多いんだ、特攻隊には。
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    hiim723

    DOODLE「トラウマの上塗り」
    ココイヌ、サイコパスハジメに絆される中学🐶の話。※嘔吐表現注意

    •上塗り: あることの上にさらに同じようなことを重ねること。悪い場合に使う。
    •上書き: 既に存在するデータを新しいデータに置き換えること。 「オーバーライト」と呼ばれることもある。

    ハピエンとは言い難いけど、花垣がタイムリープする前の世界線はこんな感じに一蓮托生エンドだったのかな。
    トラウマの上塗り乾が初めて「そういうこと」を見たのは、イザナの下にいる頃だった。イザナの指示に従って名も知らぬチンピラ供をボコした帰り道、見知った黒龍のメンツが路地裏でたむろしているのを見かけた。別に親しくもない、仕事のために一時話たことがある程度の関わりで名前も覚えていない。けれど向こうはこちらの顔も名前もバッチリ覚えていたらしい。「乾君、こっち来てみなよ」いつもなら無視するような声がけに、気まぐれに振り向いて近づいた。
    裏通りの暗闇を進むにつれて、高くて小さい女の悲鳴が聞こえて来るようになった。まさか数人の男がよって集って女をリンチでもしているのかと訝しみつつ覗き込むと、服がはだけた女が2人、男達の下で柔らかな肢体を淫らにくねらせていた。女はうっとりと蕩ける表情で目元を緩ませ、快楽に顔を歪ませている。男達が身体を動かし女の身体に触れるたび、甲高い声が路地裏にこだまする。
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    hiim723

    DOODLE「その日が何の日なのかオレは知らない」
    失ったものを思い出しながら🐉と🐶が会話する話。足りないものを埋め合うみたいな補完的相棒関係が好き……。
    梵天軸、DDの🐉と🐶です。カプ要素は無いつもりですが、ココiイヌの民が書いているのでちょっと出てるかもしれないです。
    その日が何の日なのかオレは知らない普段は酒に弱い乾が龍宮寺にお世話されているが、一年に一回、龍宮寺がハメを外す日があることを乾だけが知っている。
    前日からやたらテンション高めの龍宮寺が「なぁ、イヌピー明日暇?」と話しかけてくる。毎年同じ言葉をかけられるので、いい加減覚えてしまった。
    あぁ、そろそろだったか。乾がそう思いながら「暇だよ」と返すと、「常連さんにいい酒貰ってさ。明後日休みだし、明日の仕事終わりにちょっと飲まねぇか?」といい笑顔で龍宮寺が続ける。
    乾は黙って頷きながら、長い金髪を束ねている青いシュシュを外した。

    ーーーーーー

    良いペースで酒を飲み進める龍宮寺の横で、乾は烏龍茶を口に含む。最初に注がれたビールは一口だけ飲んで机に置いていたので、とっくの昔に泡が無くなっていた。薄い麦茶みたいな色をしたそれを横目に色の濃い烏龍茶をコップに継ぎ足して、また一口飲む。それを繰り返しながら龍宮寺の話に相槌を打ち続けた。
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