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    hiim723

    @hiim723

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    hiim723

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    「その日が何の日なのかオレは知らない」
    失ったものを思い出しながら🐉と🐶が会話する話。足りないものを埋め合うみたいな補完的相棒関係が好き……。
    梵天軸、DDの🐉と🐶です。カプ要素は無いつもりですが、ココiイヌの民が書いているのでちょっと出てるかもしれないです。

    その日が何の日なのかオレは知らない普段は酒に弱い乾が龍宮寺にお世話されているが、一年に一回、龍宮寺がハメを外す日があることを乾だけが知っている。
    前日からやたらテンション高めの龍宮寺が「なぁ、イヌピー明日暇?」と話しかけてくる。毎年同じ言葉をかけられるので、いい加減覚えてしまった。
    あぁ、そろそろだったか。乾がそう思いながら「暇だよ」と返すと、「常連さんにいい酒貰ってさ。明後日休みだし、明日の仕事終わりにちょっと飲まねぇか?」といい笑顔で龍宮寺が続ける。
    乾は黙って頷きながら、長い金髪を束ねている青いシュシュを外した。

    ーーーーーー

    良いペースで酒を飲み進める龍宮寺の横で、乾は烏龍茶を口に含む。最初に注がれたビールは一口だけ飲んで机に置いていたので、とっくの昔に泡が無くなっていた。薄い麦茶みたいな色をしたそれを横目に色の濃い烏龍茶をコップに継ぎ足して、また一口飲む。それを繰り返しながら龍宮寺の話に相槌を打ち続けた。

    「はーー、やっぱ高ぇ酒はうめぇな。イヌピーも飲む?」そう言って日本酒をこちらに向けてくる龍宮寺に「これ飲み終わったらにする」と乾が返す。何度目かわからない会話でも、「コップ空いたら注ぐよ」と龍宮寺は機嫌良さそうに笑った。
    楽しそうな酔っ払いはもたれるように乾の肩に頭を乗せる。そして鼻歌を歌いながら、乾の長い金髪を手遊びするように触った。

    「イヌピーっていつから髪伸ばしてんの?」
    「けっこー前、覚えてねぇよ」
    「ふーん、でも手入れしてねぇからかな、枝毛だらけじゃん。トリートメントしてんの?」
    「いんだよ、よくわかんねぇし」
    「風呂上がりはちゃんとドライヤーしてんのか?乾かさねぇで寝ると髪が痛むぞ」
    「ドラケンはくわしいな」
    「いやこれくらい普通だろ。実家の女達はもっと色々つけてたぜ、風呂上がりのオイルとか、流さないトリートメントとか、なんかいい匂いするやつ」

    そういえば、昔は隣にいた男もなんだかよくわからないものを風呂上がりにベタベタとつけていた。乾は湿らす程度にお茶を口に含みながら、遠い昔の日々を思い返す。
    男の寝る前の支度があまりに長いので、いつも乾より先にシャワーに行かせていた。交代して、オレが風呂入ってる間にとっとと終わらせてくれ。そう思いながらシャワーを浴びて浴室から出てきても、男はまだ同じ場所に座って何かしている。いつもそうだった。「イヌピーが烏の行水なんだよ」と言われたこともあるが、絶対に男の方が長すぎるのだと乾は思っている。口では絶対に勝てないので、それを言ったことはなかったけれど。

    後ろから「なぁ、もう眠い」と声をかけると「いや待て、髪びしょびしょじゃん。ちゃんと乾かしてねーだろ」とタオルとドライヤーを持った男が近づいてくる。
    もう好きにしてくれ、とされるがままになっていると、爪先の整った指先が乾の頭を撫でるように乾かしていく。心地が良くてふわふわウトウトする乾に「昨日買ったオーガニックオイルつけても良い?」と声がかかるが、返事をする前に何だかいい匂いのするものを頭につけられた。いや本当、好きにしてくれ、オマエがやりたいならもう何でもいいから。
    昔の乾の髪は、だからサラサラだった。枝毛なんてなくて、手櫛を通しても引っかかったりしなかった。

    男の気が済むまでアレコレされて、それからようやく布団に寝転んだ。一つのベッドに二人寄り添い合うようにして眠るのが常だった。「イヌピーがいないと安眠できないんだ」という言葉を聞きながら、乾は男の抱き枕にされていた。それでも良いと思っていた。
    「こんなに綺麗なんだから、髪を伸ばせば良いのに」そう言って乾を抱きしめたまま、姉と同じ金髪を愛おしそうに撫でる男に何も返すことができない。だから寝たふりをして逃げた。それが正解だと思っていた。

    遠い昔の思い出に浸っていた乾は、龍宮寺に声をかけられて現実に引き戻される。

    「イヌピー、次何飲む?日本酒?」
    「これ飲み終わったらにする」
    「オッケー、コップ空いたら注ぐな」
    「うん、ありがとう」

    もたれかかってくる龍宮寺に相槌を返しながら、乾は烏龍茶を口に含む。龍宮寺は笑いながら酒瓶を机に置くと、手遊びの延長のように今度は乾の髪で三つ編みを作り始めた。
    そういえば、店を始めた頃の龍宮寺は金髪に染めた髪を三つ編みにしていた。いつのまにか三つ編みが一つにくくるだけになって、金髪は地毛の黒髪に変わっていた。それが何年前だったのかは覚えていない。

    「三つ編みってさ、人の髪でやる方が簡単なんだぜ」
    「ふーん」
    「ヘアアレンジ全般がそうだけどな。……できた、イヌピー、ゴム持ってる?」
    「ゴムはねぇ、コレはある」
    「シュシュじゃん、コレじゃ止めらんねーよ。つーか、なんでヘアゴムはねぇのにシュシュ持ってんの?」
    「この前、あゆみにもらった」
    「あゆみって、最近来てるギャル?イヌピー相変わらず女子供にモテるな」
    「子供はドラケンの担当だろ」
    「まぁいいや、髪型変えるワ。シュシュかして」

    せっかく作った三つ編みをなんの未練もなく解かれて、今度は前髪がオールバックになるように括られる。「本当はピンがいいんだけど」とブツブツ呟く龍宮寺の好きにさせながら、乾は烏龍茶をコップに注いだ。
    できた。と呟く龍宮寺は満足そうに乾の髪を見つめ、日本酒の入ったグラスを手にとって傾ける。乾は視線を避けるように烏龍茶をまた口に含んだ。

    「三つ編み作るの好きだっつーから、オレの髪は好きにさせてたんだ」
    「うん」
    「寝起きでボッサボサの髪を、今のイヌピーみたいにまとめてやってた」
    「ふーん」
    「自分でやる時より、やってもらった方が三つ編みが綺麗にできるんだよな。女子って手先が器用なんかな」
    「そうかもな」
    「てか、何回ドライヤーしてから寝ろって言ってもやらねーから、朝起こしに行くと毎日頭が爆発してんの。誰がまとめると思ってんだ」
    「やられる方は楽だぜ」
    「細い指でさ、器用にスイスイ髪を編むんだよな。口に咥えたヘアゴムで最後は止めて、ケンちゃん、出来たよ、って嬉しそうに笑うんだ」
    「へー」
    「傍若無人もいい加減にしろよ!って思いながら髪を引っ張ると、ケンチン、いてぇよ、ってキレてきてさ。そっからよく喧嘩になったワ」
    「いいじゃん」

    オレは喧嘩なんて出来なかった。あの日、別れた時が最初で最後の喧嘩だった。口に出せない言葉を烏龍茶と一緒に飲み込んだ。言うつもりはない、だって今日は龍宮寺の日だから。

    乾は何も知らない。一年に一回、龍宮寺が酒を飲んでハメを外すことは知っている。その日が何の日なのかは知らない。次の日になればいつもの笑顔で日常に戻ることは知っている。ハメを外した夜のことを覚えているのかどうかは知らない。

    毎年その日が来たら、乾はただ聞いて頷くだけ。
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    hiim723

    DOODLE8代目BD、ココイヌ
    アニリベ面白かったです。🚬と🎴のやりとりの最中にちょこんと座るチビーヌを見ていたら、🎴が犬猫をいじめる未来が見えました。
    🈁財布を手に入れて、🐶で憂さ晴らしをする🎴は絶対いる。

    この話の裏で、🎴が🈁に
    「🐶の値段、いくらが妥当だと思う?5000円?オマエならいくら出せる?」
    って煽るシーンがありました。
    30万の犬「オマエを一晩買った男がいる。逆らわずに、大人しくしていられるな?」

    イザナからそう言われた時、「ハイ」とだけ答えた。一晩を買う、それが何を意味しているのか分かっていたけれど、それがボスの言うことなら従わない理由なんてなかった。

    男同士でセックスできることも知っていた。
    族のセンパイ達が「下手な女よりイイ」って言っているのを耳にしたことがあったし、シンイチロウくんやワカくんからもそんな感じの話を聞いたことがあったから。

    「青宗にはまだ早いかな〜」
    「もう少し大きくなったらワルイコトなんでも教えてやるよ」

    そう言って笑う2人に「チビイヌに何を教えてるんだ」とベンケイくんがゲンコツを落として、パチンコで有り金をスったタケオミくんにもついでにグーパンしていた。「その金は家計に入れる用だったんじゃねぇのか」中々に最低なやり取りだ。最低だけれど、オレにとっては最高だった。たった一つの心が休まる大切な場所だった。一度知ってしまえば、失う事が怖くなった。
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    hiim723

    DOODLEココイヌ、なんでもいうことを聞くって、どこまで?
    至る梵バ軸
    なんでもいうこときく券「ココ、これ……」

     ある日ソファに座って仕事をしていたら、彼が横に突っ立ったまま目の前に何かを差し出してきた。なんだこれ? とよく見ると、真ん中に汚ねぇ字で「なんでもいうこときく券」とだけ書かれた白い紙だった。元々の紙をちぎって作ったのか、端の部分がヨレヨレになっている。
     顔を上げて差出人を見ると、気まずそうな瞳と目が合った。

    「……この前の取引、ぶち壊してわるかった」

     先週、かなりの大口の取引が山場を迎えていた。進捗はボスにも、もちろん特攻隊長の彼にも伝えていたはずだった。何があっても大人しく、穏便に、とにかくサインさせるところまで持っていくのだと何度も幹部会で確認した。
     取引相手のクソジジイは変態趣味で、オレらくらいの未成年に見境なく手を出すようなクズだった。オレの手を撫で回しながらにやける気持ちの悪い面を何度ぶん殴ってやりたいと思ったことが。オレですらそうなのだ。幼馴染の美しい顔、まだ完成しきっていない薄い身体は格好の餌食になるだろう。だから一度も連れて行ったことはなかった。うざいジジイのムカつく挙動についての愚痴だけ聞いてくれたらそれで充分だった。
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    hiim723

    DOODLE「好きを伝えてそれでおしまい」
    お互い言葉不足すぎて、上手く行きそうでなぜか上手く行かないココイヌ
    好きな子の告白に浮かれるポンコツノノコイと、何にも期待してないからその先なんて全然考えてなイーヌによる、すれ違いギャグのつもりです。
    好きを伝えてそれでおしまい黒龍の縄張りを荒らす新興チームのアジトに乗り込み、ひと暴れしておおよそ決着が着いた時だった。相手チームのボスの胸ぐらを掴んでその顔をボコボコに殴り続けていた特攻隊長が、ふと何かを思い出したように手を止めた。どうかしたのか、とそちらに目を向けると、青くてキラキラと光る瞳と目が合う。薄ピンク色の唇がそっと開く。彼は聞き心地の良い声で、しかし割と大きめな音でオレをまっすぐ見ながら言葉を発した。

    「好きだ、ココ」

    何を言われたのかすぐには理解できなくて、倒した相手を踏みつけていた足が止まる。
    思わず足をどかして身体を彼の方へ向け直し、真正面から顔をまじまじと見つめてしまった。相変わらず人形みたいに綺麗な顔は表情が読めないままだ。頬についた赤い血は返り血だろうか。口元が切れているのは誰かに殴られたのだろうか、帰ったら手当てしてやるからな。どうせ服の下も殴られて打ち身やあざがあるんだろう、オマエは隊長なのにいつも自分が一番前を突っ切っていくから。その姿に憧れてついていくヤツが多いんだ、特攻隊には。
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    hiim723

    DOODLE「トラウマの上塗り」
    ココイヌ、サイコパスハジメに絆される中学🐶の話。※嘔吐表現注意

    •上塗り: あることの上にさらに同じようなことを重ねること。悪い場合に使う。
    •上書き: 既に存在するデータを新しいデータに置き換えること。 「オーバーライト」と呼ばれることもある。

    ハピエンとは言い難いけど、花垣がタイムリープする前の世界線はこんな感じに一蓮托生エンドだったのかな。
    トラウマの上塗り乾が初めて「そういうこと」を見たのは、イザナの下にいる頃だった。イザナの指示に従って名も知らぬチンピラ供をボコした帰り道、見知った黒龍のメンツが路地裏でたむろしているのを見かけた。別に親しくもない、仕事のために一時話たことがある程度の関わりで名前も覚えていない。けれど向こうはこちらの顔も名前もバッチリ覚えていたらしい。「乾君、こっち来てみなよ」いつもなら無視するような声がけに、気まぐれに振り向いて近づいた。
    裏通りの暗闇を進むにつれて、高くて小さい女の悲鳴が聞こえて来るようになった。まさか数人の男がよって集って女をリンチでもしているのかと訝しみつつ覗き込むと、服がはだけた女が2人、男達の下で柔らかな肢体を淫らにくねらせていた。女はうっとりと蕩ける表情で目元を緩ませ、快楽に顔を歪ませている。男達が身体を動かし女の身体に触れるたび、甲高い声が路地裏にこだまする。
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    hiim723

    DOODLE「その日が何の日なのかオレは知らない」
    失ったものを思い出しながら🐉と🐶が会話する話。足りないものを埋め合うみたいな補完的相棒関係が好き……。
    梵天軸、DDの🐉と🐶です。カプ要素は無いつもりですが、ココiイヌの民が書いているのでちょっと出てるかもしれないです。
    その日が何の日なのかオレは知らない普段は酒に弱い乾が龍宮寺にお世話されているが、一年に一回、龍宮寺がハメを外す日があることを乾だけが知っている。
    前日からやたらテンション高めの龍宮寺が「なぁ、イヌピー明日暇?」と話しかけてくる。毎年同じ言葉をかけられるので、いい加減覚えてしまった。
    あぁ、そろそろだったか。乾がそう思いながら「暇だよ」と返すと、「常連さんにいい酒貰ってさ。明後日休みだし、明日の仕事終わりにちょっと飲まねぇか?」といい笑顔で龍宮寺が続ける。
    乾は黙って頷きながら、長い金髪を束ねている青いシュシュを外した。

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    良いペースで酒を飲み進める龍宮寺の横で、乾は烏龍茶を口に含む。最初に注がれたビールは一口だけ飲んで机に置いていたので、とっくの昔に泡が無くなっていた。薄い麦茶みたいな色をしたそれを横目に色の濃い烏龍茶をコップに継ぎ足して、また一口飲む。それを繰り返しながら龍宮寺の話に相槌を打ち続けた。
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