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    mona5770

    Twitterに投げたネタをちょっとまとめたメモ置き場
    燭へしと治角名が混じっています。ご注意ください。

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    mona5770

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    (治角名)たとえばそんなオサスナもあったかも……ということで
    治→原作軸(稲荷崎→高校でバレー辞める→おにぎり宮)
    角名→稲荷崎のスカウトを断った→愛知の強豪校に行くけど全国には届かなかったという世界線の妄想。角名の進路はいろいろ。書けたものから追加。

    (治角名)たとえばそんな……●高校時代、全国に行った稲荷崎を見て大学から本気で大学からバレーやってEJP軸
    ●大学途中でスカウトされてモデルか俳優軸
    ●大阪転勤した社会人から珈琲店経営軸
    ●大学在学中に書き始めて小説家軸とかいろいろ妄想できそうじゃないですか?
    普通のリーマンやってる妄想はしたことあるけど、これが一番せつない展開になっちゃう気がするんですよね…

    (おに宮×珈琲店おさすな)
    オフィスビルが立ち並ぶ大通りから一本通りを入るだけで空気が一変した。
    真新しい高層ビルの裏手、ぎゅうとひしめき合うような小さな建物が立ち並ぶ。
    珈琲とだけ書かれた小さな立て看板がなければ見落とすような、目立たない扉を開く。
    カランという音とともに扉をひらくとふわりと珈琲の香りに包まれる。
    「いらっしゃいませ」
    ほとんど感情がのらない声が治を迎えた。
    「あの」
    「好きな席にどうぞ」
    5人も座ればいっぱいになるカウンターと4人掛けのテーブルがふたつだけ。
    4人掛けといっても椅子もテーブルも小ぶりで、大人の男性であればふたり座ればいっぱいになるだろう。
    どうやら昼休みも終わったばかりの時間が幸いしたのかほかに客はいない。
    テーブル席に腰を下ろすのがわかっていたかのように、グラスに入った水とおしぼりがさっとテーブルにおかれた。
    「ブレンドとドーナツお願いします」
    「かしこまりました」
    貼りなおされたらしい優しいアイボリー色の壁には水彩のイラストが何点かかかっているだけ、濃茶色のカウンターは長く使い込まれしっとりとした深みのある色になっている。
    治が座っているテーブルや椅子もそうだし、扉も天井も使い込まれた色合いだ。
    ガーという音をたてて豆を挽いている店主は店の佇まいとは対照的に若い、というか手つきこそ危なげないが、物慣れない感じがした。
    治と同じくらいだろうか。
    短めに切られた黒髪は両端が軽く跳ね、狐を思わせる細い瞳はマスカットのような色をしている。
    どこかで見たことあるような気がするな。
    あえてテーブル席を選び距離があるのをいいことに見つめる治の視線に気づいているのかいないのか、淡々と店主は豆を挽きフィルターにセットするとゆっくりと湯を注ぎ始めた。
    珈琲のふくよかな香りが強まり、治の身体を包むように広がっていく。
    「おまたせしました」
    カタンと置かれたのはわずかに赤みがかった灰色のカップ。
    同じ色のソーサーには木の匙がおかれている。
    別のトレイにおかれた砂糖とミルク、そしてドーナツが載った皿がおかれると「ごゆっくり」と定型の言葉を吐いて店主はカウンターに戻った。
    カップを持ち上げると香りを楽しみ、熱さを確認すると口に含む。
    香りのよさに負けないふくよかな味わいが口に広がる。
    これや。

    治がこの珈琲を初めて飲んだのはひと月ほど前のことだ。
    それはこの店ではなく、ここから北に少しいった場所で行われたイベントでのことだった。
    川にちなんだイベントに治が呼ばれたのは、いつも店に来てくれる常連さんの紹介だった。
    昼から夜までいくつかの出店と、ステージイベントがあるよくあるイベント。
    宣伝にもなるかと出店した隣がパンを扱うブースだった。
    「よかったらどうぞ」
    試食用らしい食パンと珈琲を口にして治は目を見開いた。
    「なにこれ」
    「珈琲でしょ?」
    「おん、これあんたの店の?」
    「ちゃいますよ。ここからちょい南にある店のんですわ。昔っからある店なんやけど店主がリタイアして代替わりしたんですけどね、ええ腕した子が来てくれてねえ」
    長く経営していた老人がリタイアする際に「引き継ぎたい」と手を挙げた男が今は店主なのだという。
    代替わりしてドリップコーヒーも作り始めたという店主に頼まれたわけじゃないけれどとこの出店にそのドリップコーヒーとサンプルがわりのポットを持ち込んだのだと隣の男は言った。
    「気に入ったんやったら行ったって」
    言われなくても行くつもりだった。これはちゃんと店で飲んでみたい。
    自分でもおにぎり専門店を開業して数年、本気でやってるとわかる飲食店には顔を出す癖ができていた。
    だから足を運んだ。
    店に入ってやる気のなさげな声がしたときは、わざわざ足を運んだことをわずかに後悔したけれどカップに口を付けた瞬間その気持ちは吹き飛んだ。
    「うまいな」
    「ありがとうございます」
    「昔とブレンドの味違うのん?」
    「そう、ですね。前の味をご存じですか」
    「いや知らんけど、なんかあんたらしい味やなあって思って」
    その言葉に表情らしい表情を見せなかった店主が虚を突かれたような顔をした。
    「あ、そ、うですか。ありがとうございます」
    「これもちゃうんやろ?」
    カップと同じ色目の皿に載せられたドーナツは懐かしい味ではあったけれど、サクサクとした歯ごたえや豆乳を使っているらしい柔らかい味わいもどこか新しい感じがした。
    「へー飲食店してるって噂は本当なんですね」
    「え?」
    「宮、治でしょ?稲荷崎の」
    にこりと笑う男の顔にどこか見覚えがあった。誰だ。
    「お前、名前は?」
    「角名倫太郎。知らないと思うけど」
    名前は憶えがあるようなないような。
    けれどその顔、その声、そしてこの叩き落す感じは知っているような気がした。
    「とびきりおいしいもん用意しとくから。店に来てや」
    だから連絡先教えて。その言葉に下心はなかったと思う。たぶん。
    続く?
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