ごまかしとあるメーカーのパーカーのCMに出演が決まった。ラクスの元々のスポンサーからの頼みであり、最初はキラとラクスだけだったのだが、ほぼ無理やりオーブ組の二人も極秘で招いていた。先方は勿論大喜びだった。
「キーラー・・・お前な!!!」
「まあまあいいじゃない。・・・平和になった証拠だし」
CM撮影中(ついでに雑誌の撮影も入った)アスランから文句を言われながらキラはカガリを探していた。ちょうど空き時間が出来たから、一緒に出掛けたいと思ったのだ。
ちなみにご指名がありキラとカガリは黒の揃いのパーカー。ラクスとアスランが白のパーカーを着ている。
すると、窓辺にカガリが居た。プラントの景色を見ながらボーっとしている。
トントンと肩を叩かれてビクっと反応してしまった。
キラが優しく笑ってそこにいた。キラがいるのだ。・・・そうだ、ここはプラントなのだと実感する。
「カガリ、今時間空いてるから、少し外に出てみない?」
「・・・そんなのボディガードとしてついて来たつもりのアイツが許すわけないぞ」
ボディガードはイコールアスランの事だ。キラはじゃーんとサングラスとマスクを取り出すと、カガリにつけて手を引いた。
「ちょっとならバレないよ。GPSも付いてるし」
「そうか・・・それもそうだな。私もプラントを歩いてみたいと思ってたんだ」
「うん・・・あ、でも」
キラはカガリの口元に指先を当てると「これだけは約束してね」と言った。
「これから先、例えば僕に何かあっても。カガリは何があっても何もしない事!」
プラントの街並みは綺麗だった。空も風も気候も作られた物だとしても。
キラと一緒にカフェに入ってテイクアウトのコーヒーを飲みながら街並みを見て回る。
キラに「あれはなんだ?!」「これは?!」と聞いて回り、それにキラはニコニコと返してくれる。せっかくだからとキラがお土産にネックレスを買ってくれた。
ちゃんとした物じゃなかったが、カガリはそれを首にかけて頬を染めて笑った。
「一生の思い出になりそうだ・・・」
「・・・そんなに大した物じゃないんだけど」
「いや!嬉しいさ・・・」
カガリがあまりにも綺麗に微笑みを浮かべるので、キラも真っ赤になった。
ドキドキと胸が高鳴る。
「カガリ・・綺麗になったね」
「・・・だったら、キラのおかげだな」
「・・・僕の?」
「ああ・・お前が・・・」
言いかけて、カガリは口に手を当てて止めた。告げた所で栓の無い事だ。
キラは首を傾げて、それから気が付いたように「あそこのお菓子美味しいんだ。ラクス達にお土産買って来るから」と言って行ってしまった。
カガリは壁に寄りかかって息を吐いた。ネックレスを指でいじる。
「・・・どれくらい、片想いしてると思ってるんだ・・・」
キラが好きだ・・・と。もう長い事想い続けている。今すぐその腕で抱きしめて欲しい。抱きついてしまいたい。
物思いに耽っていたら、周囲が慌ただしくなっていた。キラが走って行った方だった。キラは「准将ー!!」と呼ばれてどうやらファンに取り囲まれているようだった。
カガリはすぐに助けようと足を踏み出し、そしてここに来る前にキラとした約束を思い出した。
『これから先、僕に何かあっても。カガリは何があっても何もしない事!』
だが、何もしない訳にもいかない。カガリはずんずんと進んで行ってキラの腕を取った。
周囲が更にざわついた。中には「もしかしてアスハ代表・・・?」と言う声も上がる。髪の色やキラと居ることで姉である自分の事を連想する者もいるだろう。
バレてしまったのかと思い、カガリの心臓がバクバクと鳴った。
仕方ないと声を上げようとした所で、キラがそれを遮った。
「ゴメンね、僕今日恋人と久しぶりのデートだから」
「???!!」
「じゃ、僕たちを行かせてくれる?」
ドキンドキンと鼓動が身体中を響かせている。キラだけだ。こんなの。
キラと自分を取り囲んでいたファンたちが道を開けてくれた。都合よくペアルックで、サングラスでマスクなんてしてたから。きっと内緒の恋人だと思われた。
キラに手を引っ張られながら「好きだ・・・」と呟いていた。許される気がしたから。今は『恋人』として。そうしたら、キラもこちらを見ないで「僕も」と呟くから。幸せだった。
結局CMの撮影では、バレないようにと別パターンも撮ってもらい終わった。
お土産にお揃いのパーカーとネックレスと、それで充分だと思ったのに、別れ際強く抱きしめてもらって腕の中で幸せを感じた。次に会える日を心が待ちきれない。