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    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

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    目金君と化身の話。

    #目金兄弟
    meginBrothers
    ##目金兄弟
    ##CP無し

    僕と兄貴とラストベガ化身。サッカー選手の気力が高まるとその姿を現すオーラの一種であり、円堂守が活躍した時期からおよそ十年後の世界では、ごく限られた選手がその才能を開花させ試合をより白熱したものへと導いている。化身を活用した試合は中学生たちが繰り広げているとは思え無い程迫力がある展開を観戦者に魅せ、プロリーグよりも中学サッカーに熱を入れた応援をする者も多数いるほどだ。そう、化身とは技術だけで身に付く物ではない。選ばれた者だけがその力を手に出来る極めて希少な能力なのである。

    「今、何か出ましたよね。僕何か出しましたよね⁈」
    「へ、は……」

    とは言っても。化身というものが広く知れ渡るのは前述したとおり十年後の世界である為、あの日河川敷で兄貴と草サッカーをしていた目金一斗は、その凄さに気付くことは無かったのだが。

    僕と兄貴とラストベガ

    「今のは一体?……はっ、まさか!僕にも遂にコンビネーション技でない必殺技が?!」
    「…………」

    FFI優勝の熱が日本中を覆い、その興奮がまだ冷めやまぬ初秋のある日。兄弟そろって放課後に何の用事もなく、且つ互いに寄り道がしたい気分だった為特に何も示し合わせることもなく自然な流れで河川敷へと足を運んだ。サッカーブームも相まって普段は人であふれかえっている河川敷もその日は運のいいことに親子連れが二、三組いるだけで、パス練習をするだけなら問題ないだろうと二人穏やかにボールを蹴りあっていた。しかし、久しぶりの兄弟水入らずであったのに加えてサッカー部加入前と比べて格段にスキルアップした兄貴から受けるパスは普段共に練習する面々のそれより気持ちが良いもので次第にこちらも熱が上がり、段々とボレーパスが本気のパスに、パスがシュートの打ち合いへと変化していき、いつの間にかFWとDFを交互に行う草サッカーに収まらない力の入った練習となった。そして、互いのボルテージが最高潮に到達した瞬間、兄貴の背後から謎の靄が出現したのだ。

    (いや何あれ何あれ何あれ何か変な靄が出て来たんだけど、滅茶苦茶怖い)

    自身の背後から謎のオーラが出て来たことに高揚感を見せる兄貴に対し、一斗は声にこそ出さなかったものの内心滅茶苦茶動揺していた。なお、声に出さなかったのは興奮しきっていた兄に気を使ったわけでも何でもなく、ただただパニックになっていただけである。

    「後ろから何か出ようとしていたと言うことは、もしや僕も円堂君や豪炎寺君のように魔人を呼び出せるようになったのでは?発動条件は?うーん……。僕さっき何やっていましたかね一斗」
    「え、あー……何だったかな」
    「ちょっと、しゃんとして下さいよ。この僕の新たな才能が開花するかもしれない瞬間なんですからもっと真剣に思い出して下さい」

    未だ目の前で起きた光景に頭が追い付かず混乱した状態の一斗に対して兄貴はポコポコと怒りをあらわにする。こちらからしてみれば双子の兄が突如謎の力に目覚めようとしているのだからこの混乱具合も察してほしいものであるのだが。

    「えーっと……。確か兄貴が僕のシュートをブロックした瞬間に変な靄が出て来た、ような、気がする」
    「ふむ。となるとさっきのあれはブロック系の必殺技なんですかね。ううん、もっとはっきりとした姿が分からないと必殺技に名前を付ける事すらままなりません……」
    「あ、名前つけるのは確定なんだね」
    「当たり前じゃないですか!必殺技の名前を付ける為に行ってきた特訓の成果を僕自身に生かさないで何だというのです!最っ高にクールな名前を付けてみせますとも」

    メラメラとやる気をたぎらせ胸元でぎゅっとこぶしを握る兄貴。なんだか趣旨がずれている気がするが兄貴に当てられたのかいつの間にか恐怖心は消え去り、ワクワクとした気持ちが一斗の心中を占めていた。

    「兎に角、ブロック技だと分かればこちらの物です。一斗、僕にガンガンシュートを打ってください。それらを全て止めてみせます」
    「え、良いけど、兄貴大丈夫?」
    「勿論です。必殺技修得の為です。多少のケガも厭いません!」

    そう言ってやる気に満ち溢れた表情を見せる兄貴。必殺技を修得するまでシュートを防ぎ続けるという危険極まりない練習に抵抗を抱きはしたが、こうなった兄貴はテコでも動かないと身をもって知っている。一斗は「怪我だけはしないでよ」と言うに留めシュートを打つ準備を整える。

    「じゃあ、行くよ兄貴」
    「ええ、いつでも来て下さい」

    兄貴と目線を交わし、互いのリズムが整ったタイミングでシュートを打つ。兄貴がボールをブロックした瞬間、再び黒い靄は姿を表しはしたが明確な形を成す事なく霧散した。

    「兄貴、また何か出たよ!」
    「やはり、ボールをブロックした瞬間だというのは間違いないようですね。ですがあくまで発動条件が明確になっただけ。一斗、次のシュートを」

    再びこちらにシュートを打つよう頼む兄貴にこちらもそれに応えるように二本、三本とシュートを打ち続ける。互いにやる気こそ満ち溢れていたものの中々必殺技は形に成らず、シュートの本数が50を超えた辺りで一斗は兄貴とほぼ同時に芝生の上へと座り込んだ。

    「やり方、これであってるのかな……」
    「分かりません……。ですがあと少しな気はするんです。一斗、次お願いします」
    「ええー、もう今日は止めようよ兄貴ー」
    「いいえ駄目です。……今を逃すと、この必殺技が一生完成しない気がするんです。ですので、一斗」

    そう頼み込む兄の顔は今まで見たことが無い位真剣なもので、長年双子の弟として兄の姿を見てきた一斗の気力を回復させるには十分すぎるものであった。

    「ああもう、分かったよ。……どっちかが倒れたら終わりだからね」
    「有り難うございます」

    疲れがたまり切った足を無視やり立たせ一斗は再びシュートを打ち込む。しかし、疲れからなのかシュートの軌道は反れ、ボールは兄貴の顔面へと向かっていった。

    「しまった、兄貴よけて」

    息の切れた疲労困憊の体でとっさに避けることなど出来る訳もなく、せめてもと兄貴は手を前にだし顔を庇うように構えた。すると。

    「___、え」

    ずっと靄の形しか現さなかったオーラが明確な姿を形取り、ダイスの幻影が見えたかと思えば、兄貴の手の中にボールが収まっていた。

    「……。今のは、一体」
    「…………」

    予想だにしない展開に呆然とする二人。かろうじて言葉を絞り出した一斗に対し、兄貴は言葉一つ発さず今起きた出来事を咀嚼するかのようにただただ立ち尽くしていた。

    「何か、人みたいなのが出てきて、ダイスが見えて、それで……」
    「……一斗」

    目の前で起きた出来事を何とか理解しようと自身の視界に映った物事を反復するように声に出していると、兄貴はぽつりとこちらの名前を呼び、ぱあっとはじけるように目を見開く。

    「~~~~~!ついに、ついに修得しましたよ、僕の必殺技を!」

    嬉しさが顔全体にあふれ出た表情でこちらに笑いかける兄貴。その無邪気ともいえる喜びようを見ているとこちらも自分の事のようにうれしいと思う気持ちが心中にじわじわと湧いてきた。

    「……うん、うん!やったね兄貴!」
    「有り難うございます!いやあ、ゴールキーパーの必殺技とは予想外でしたがこれも僕の才能によるものなのですかねえ。この必殺技はラッキーダイスと名付けましょう!」

    (___あ、そうか。兄貴が修得した必殺技はゴールキーパーのポジションにつかないと活用できないのか)

    良かった良かったと、練習に付き合った甲斐があったと素直に喜んでいたが兄の『ゴールキーパーの必殺技』という単語に冷や水をかぶせられたかのような心地に襲われた。だって、兄貴は。

    「にしても、後ろの何かに名前を付けないのは勿体ない気がしますね。うーん、幸運のラストベガ、とかどうですかね?どう思います一斗」
    「……いいんじゃない?かっこいいと思う」
    「そうでしょうそうでしょう!我ながらいい名をつけられたと思いますよ」

    生き生きとした様子で必殺技の修得を喜ぶ兄貴。だが、その必殺技を活用する機会なんてあるのだろうか。兄貴は控えで、今の雷門ではベンチにすら入っていなくて。そもそも、兄の所属するサッカー部のキャプテンは日本代表をFFI優勝へと導いた円堂守じゃないか。

    「……ねえ兄貴、悔しくないの」
    「へ?悔しい?何がです」
    「だって。必殺技を覚えたって言っても、ゴールキーパー技でしょ?兄貴ゴールキーパーなんて練習でもやらないじゃん。雷門には円堂君が居るし、まず兄貴の能力が生かされることなんてない。いくら凄い必殺技を身に付けたってゴールキーパーの技じゃ何の意味もないよ」

    こんなにも兄貴が喜んでいるというのにこの口から出てくる言葉はネガティブなものばかりで嫌気がさす。それでも折角必殺技を覚えたというのに、シュート技でもなく、ドリブル技でもブロック技でも無い、よりにもよってゴールキーパーの技を習得するなんて、兄貴は虚しさを覚えないのだろうか。そんな考えを言葉に出さずにはいられなかった。せめて、せめてシュート技と言わずとも、ブロック技やドリブル技なら活躍の場があったかもしれないのに。

    「ふ、あっはははは!一斗は相変わらずですねえ」

    だが、兄貴は弟のうじうじとした考えを馬鹿馬鹿しいと言わんばかりにケラケラと笑う。

    「こうは考えられませんか?碌に練習してこなかったゴールキーパーという立ち位置の必殺技を修得できたという事は、僕にはとんでもない才能が隠されていたのだと!」

    今日一のドヤ顔と共にポジティブを通り越し楽観的とも取れる発言をする兄貴。ただ目を瞬かせることしか出来ないこちらのことなど視界に入っていないのか兄貴は更にこう続ける。

    「それに、何も修得できる必殺技は一つとは限りません。この必殺技を機に様々な必殺技を身に付けていくかもしれませんからね。……いや、身に付けていきますとも。絶対に!」

    そう高らかに宣言する兄貴に一斗は呆然とした後呆れ笑いをするしか出来なかった。そうだった、僕の兄は、この目金欠流という男はこういう人間であった。どこから湧いているのか分からぬ絶対的な自信、これこそが兄貴の真骨頂。それを改めて一斗は理解させられた。

    「はいはい、僕の考えが間違えてました。身に付くといいねえ、他の必殺技」
    「む。一斗、投げやりじゃないですか?」
    「ははは、そんなことないよ」
    「いいえ絶対投げやりです。いいですよ、見ててください。一斗がアッと驚くような必殺技を必ず修得して見せます!」

    ビシッとこちらに指をさし、謎の宣戦布告をしてくる兄貴。その必死な様子がなんだかおかしくて、一斗は初めは堪えるように、次第に堪えることも諦め、ケラケラと笑い続けた。
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    ROM

    REHABILI「嘘はまことになりえるか」https://poipiku.com/4531595/9469370.htmlの萌目の2/22ネタです。22日から二日経ちましたが勿体無い精神で上げました
    猫の日「……えっと、つまり。漫画君は猫耳姿の僕を見たいのですか?」
    「今日は2月22日だろう?猫の日に因んだイベント事をこう言う形で楽しむのも、恋人がいるものならではの体験だと思うよ」

    2/22。2という数字を猫の鳴き声と準えて猫の日と呼ばれているこの日。そのイベントに乗じてインターネット上では猫をモチーフとしたキャラクターや猫耳姿のキャラクターが描かれたイラストが数多く投稿されている。そして、猫耳を付けた自撮り写真が数多く投稿され、接客系のサービス業に勤めている女性達が猫耳姿になるのもこの日ならではの光景だろう。
    古のオタクを自負する萌にとって、猫耳とは萌えの象徴であり、身に付けたものの可愛さを最大限までに引き出すチートアイテムである。そんな最強の装備である猫耳を恋人にも身につけて欲しいと考えるのは自然な流れの筈だ。けれど、あくまでそれは普通の恋人同士ならの話。萌と目金の間に結ばれたこの関係は、あくまで友として萌と恋人のごっこ遊びに興じる目金と、目金に恋慕する萌という酷く歪な物であった。
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