雨の街角林の細道、街角の小路、町中の四ツ辻。
そんな有り触れた場所に人知れず、ひっそりと設けられた小さな木のお社や石の祠に辻地蔵。
その存在自体何ら珍しいものではない。ある程度大きさがあれば花などの供物が供えられている事もあるのだが、ごく小さな出立のこれらは些か人々の目に留まり辛い様だ。
雨降り頻る中、傘を差し足早に目の前を通り過ぎる人々は足元に座す路傍の神々には目もくれない。
お社の扉に朽ちがあろうが、祠の屋根に罅が入ろうが、地蔵の前掛けが取れかかっていようが気にも掛けない。
しかしそれは、忙しなく日々を生きる現代人にとっては仕様の無い事なのかもしれない。けれど、どれだけ小さく、些細な物であったとしても『物』という時点でそれらには魂が宿るというもの。そして古来より、それらには幾つもの名がある。
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