寝言・アイスクリーム・「私はパス」「私はパス」
彼女の怜悧な声が、広いリビングに響いた。
――
よく晴れた休日。ポアロのバイトを切り上げた僕は、阿笠邸にやってきた。コンビニで購入した棒付きバニラアイスの箱を手に下げて。
「あー! おやつ買ってきてくれたのかよ!」
「わーい! ちょうどお腹すいてたの!」
「安室お兄さん、ありがとうございます!」
計算通り、子ども達がわらわらと群がり、喜んで唐突な訪問者である僕の居場所をつくってくれた。アイスの箱は六本セットで、ちょうどこの家にいる人数と同じ数だ。子ども達三人、博士、僕、そして――
「私はパス」
灰原哀。最後の一本を渡そうと思っていた彼女は、そう言って地下室に降りてしまった。
*
アイスを食べ終えた子ども達は、いつのまにかTVゲームに夢中になっていた。
1987