我が名は人間!官ナギ大好き!『好きです…!!』
ヘルパシからの帰り、パトロール中のカンタロウが知らない女に告白されていた
『あの辻田さんって方とお付き合いしてないのは知ってます!だから私が…!』
なんで俺の名前が出てくるのかはわからないが、もしカンタロウがあの女と付き合ったら、と考えたところで体が勝手に動いていた
「やめとけ」
カンタロウと女が驚いた顔で俺を見る
頭では、俺は何をしてる?なんで飛び出た?何を言うつもりだ?なんて考えながら
「こいつは声がデカくて喧しいし、しつこいし、バカみたいに食うから食費も掛かるし、帰った時に弁当箱出し忘れるし、洗濯を出す時は裏返したままだし、汗っかきだから夏は洗濯の量が倍になる」
口から勝手にスラスラ出てくる言葉に女も、カンタロウも呆気にとられた顔をしていた
俺だって何言ってるかわかってない
「吸対だからよく見えたかもしれないが、好き嫌いは多いし、泣き虫だし、…第一、こいつは俺(辻斬りナギリ)の事しか考えてない!…だから、やめとけ、こんな男」
俺は本当に何を言ってるんだ
なんで知らない女に、こんな事言ってるんだ
沈黙が痛い
この辛い沈黙を破ったのは女だった
「…ッ!ありがとうございます!!!」
「は?」
なんで礼を言われたんだ俺は
「私は!貴方の邪魔はしないので!!安心してください!!」
「は?邪魔??え??」
「はい!私がカンタロウさんに伝えたのは、お二人が好きなので応援したく、私がくっつけるお手伝いをしたいと!申し出ようとしていたのです!」
「????応援??くっつける??」
女が何言ってるかまったくわからん
頭の中で???がとまらない
「ですので!お二人で続きをどうぞ!!!私は遠くから見てます!」
「は???お、おい待て、」
「では〜!」
勝手にそう言って去ってく女に苛つきながら立ちすくんでいるとカンタロウがやっと喋った
「…辻田さん、辻田さんは何故あの女性に諦めるよう勧めたのですか?」
「何故って…」
なんでだ?俺だってわからん
ジリ…とゆっくりカンタロウが近づいてくる
「辻田さんは本官を取られたくなかったのですか?」
「は、取られ、」
「辻田さん、本官は、俺は貴方が好きです、愛してます。」
突然なにわけわからん事
「辻田さんは?」
「…」
そう言いながら俺の肩を掴んだカンタロウは俺に顔を近づける
こいつはいつだって距離が近い
今更この距離にきても何も感じないはずなのに、
「辻田さんは?教えて下さい」
「…ッ」
「お願いします」
カンタロウが告白されてると分かった時、咄嗟に体が動いたのは俺のカンタロウが知らない女に取られると思ったからで、本当は、女をその場で斬り刻んでやりたかったんだ
「…ッ、ここでは嫌だ。」
「えっ」
「…あの女が、見てるんだろ」
「!…わかりました!!仕事終わらせてすぐ帰りますので!!!続きはお家で必ず!!!必ずですよ!!!」
「うるさい!!!…わかったから!」
「絶対ですよ!!!」
何度もそう叫びながら仕事に戻るあいつを、俺はどんな顔で見送っていたのか、知りたくもない。
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早く終わらせて帰る為、文字通り、仕事に没頭した
室内業務もテキパキとこなし、ポンチが出ても迅速に対応し、サギョウ先輩からは「いつもこうならいいのに。静かすぎて怖いですけど。」と言われた
早まる気持ちを抑え、家に帰る
ドアノブを勢いよく捻り開けると、いつも通り辻田さんが迎えてくれてホッとした。もしかしたらいなくなってるかも。と少しだけ、不安だった。
「おかえり」
「ただいまであります!!!!」
「うるさい!!せめて扉閉めてからにしろ!!」
「はい!!!」
早く続きが聞きたくて、急いで靴を脱いで側に寄ると、鞄を引ったくって辻田さんは洗濯物を洗濯機に放り込み、弁当箱を持って台所に移動した
慌てて付いていくと辻田さんに「先に風呂入ってこい。飯温めておくから」と言われしぶしぶ風呂に入った
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お風呂から上がるとホカホカのご飯が用意されていて、心なしか本官の好物が多いように感じた
ご飯を食べて食器を本官が洗っている間、辻田さんは逃げずにリビングのソファでテレビを見ながらジョンくんのぬいぐるみを抱きしめていた
辻田さんのお耳がソワソワと動くのに気づいて(あ、テレビを見るフリしてたんでありますか…可愛い…)と愛しさで今すぐ抱きしめたい気持ちを押し込めて急いで皿を洗った
皿を洗い、流しをきれいに拭いて、辻田さんの元に向かう
それに気づいた辻田さんが一瞬ピクッと動いて固まった
固まるナ辻田さんの横に座り、辻田さんの方を向く
「辻田さん、さっきの続き、良いですか」
漸くこっちを向いた辻田さんがお耳を真っ赤に染めながら頷いた
その様子が可愛くて可愛くて今すぐ飛びつきたい
そう思いながらジョンくんのぬいぐるみを取り上げ、辻田さんの手を握った
「先程もお伝えしましたが、本官は貴方が好きです。ずっと一緒にいたいです。辻田さんは本官の事、どう思ってますか?」
とうとう顔まで真っ赤になった辻田さん
本官が握った手から震えが伝わってきて、おそらく答えはもう出ているのに、それを恥ずかしいのか伝えられずにいた
「辻田さんの口から聞きたいであります、お願い、教えて下さい」
顔を近づけて追い打ちをかけると小さい声で「…ッ、俺も、好きだ」と言ったので思いっきり抱きしめて好きです、好きですと俺からいっぱい伝えた
「辻田さん、キス、していいですか」
「え、き、きす」
「はい、キスしたいです。」
腕の中でまた顔を真っ赤にした辻田さんに近付きながら「嫌だったら、突き飛ばして下さい」といってキスをした
一緒に住むようになってどんどん健康的になっていった辻田さんの唇はふわふわで気持ち良くて、何度も触れるだけのキスをして、最後に少しだけ、深いキスをして口を離した
後日、件の女性にはお礼の言葉とお礼の品をお渡しし、「くれぐれもストーカーだけはしないように」と釘をさしておいた