💜「ねえ不良くん。泥水を常飲しているわたしにとって、紅茶の種類って未知の領域なのだけれど、よく聞くダージリンとかアールグレイっていったい何がどう違うの?」
❤️「泥水を常飲するな。腹を壊す。せめて川の水にしろ。まあ、当たり外れはあるけどな」
💜「なんだか実体験を聞かされているような気がしていじりにくい……。紅茶の話をしましょう」
❤️「あー……ダージリンとアールグレイの違いだったな。そうだな、白米とチャーハンくらい違う」
💜「目つきの悪いただの真面目男子かと思ったら、なかなか面白い例えを披露してくれるじゃない。美食を冠するだけあるわ。侮っていたことを認める」
❤️「お前は何目線なんだよ」
💜「いいから続けてちょうだい」
❤️「……ダージリンは茶葉の銘柄だ。白米っつったけど、厳密には『コシヒカリ』とか『あきたこまち』とかみたいなもんだな。で、アールグレイってのは、茶葉にベルガモットの香りをつけたフレーバーティーの一種だよ。だから茶葉にベルガモットの香りをつけたら、それはみんなアールグレイだ」
💜「なるほど、コシヒカリだろうがあきたこまちだろうが、中華だしとか塩コショウとか諸々を混ぜればチャーハンと呼ばれる食べ物になるのと同じってことね」
❤️「まあ、そういうことだ」
💜「不良くんはアールグレイが好きらしいけれど、それってつまりベルガモットの香りが好きってことなの?」
❤️「香りが好きってのもあるけどよ、ベースにどの茶葉を使うかによって味が変わるのが面白いんだ。飲み比べると楽しいぜ。多いのはキーマンベースだけど、セイロンベースや緑茶ベースなんてのもある。ダージリンベースは珍しいな」
💜「不良くんが饒舌に喋ってくれてわたしもとっても楽しいんだけれど、普段お願いしなくても勝手に饒舌に東西東西しだす先輩くんが必死に笑いを堪えて震えてるのが気になって気になって心から楽しめないの」
🤍「…………フフッ…………」
💜「あ、笑った。なんか白米とチャーハンにツボったみたいだけど……」
❤️「こいつの笑いのツボはよくわかんねぇんだよな。たまにああなる。命に関わらない発作みたいなもんだから、ほっとけばいつもの澄ました副団長さまに戻るぜ」
💜「じゃあ心置きなく放っておきましょう」
💜「ねえねえ、これからは『チャーハン』がわたしたち3人の中でアールグレイの隠語にできるわね。今日はチャーハンだぞ〜って言ってアールグレイが出てくるの」
❤️「ふざけんな俺は料理に嘘はつかねえ。チャーハンだと言ったら出てくるのはチャーハンだ」
💜「わたしって不良くんを怒らせる天才かもしれない」