Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    かづき@FF14そうさく

    @azeosaru

    ねちねちとしょうせつかくひと。
    基本うちの子ばなしばっかり。よそのこもかりることある。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 58

    前に書いたやつ。
    創作キャラ?である現代日本で生きている人間の梓と、FF14の自機であるアズイルがクロスオーバーする話。

    #梓アズ

    プロローグ──やっぱり、弾けなかった。

    あれ程までに大好きなピアノが、手が震えて弾けない。
    椅子から立ち上が^ベットに乗り壁に背をつけ膝を抱えると、顔を俯かせる。

    ……ああ、まただ。
    また、喧嘩している。

    父の怒鳴る声と母の叫ぶ声。どちらもうるさい、僕の大好き『だった』音楽にはいらないものだ。

    消えてしまえ、消えろ。


    ……違う。

    消えてしまえばいいのは、僕の方だ。


    「もう嫌だ……何もかも……」


    居なくなってしまいたかった。

    目尻に滲む涙を強引に擦って、必死に泣かないようにする。
    誰も信じられない、誰も信じたくない。

    外から聞こえる雨の音と共に、顔を上げた。
    何の色もない、真っ白な世界だ。

    つまらない、苦しい。

    何より、寂しいと思うのはどうして──。
    ……ふと、琴の音が聞こえる。

    どこからだろう、とぼんやりした瞳で探すと……祖母からもらったドレッサーからのようだ。
    聞いたことのない旋律に、つい耳を傾けた。
    心地の良い音色だ……ずっと聞いていたくなる。
    だが、次に聞こえてきたのは。


    『♪僕は〜時をぉ〜旅ぃ〜するぅ〜吟遊〜詩人んん〜♪』
    「ヘッタクソだなぁ!」

    聞こえてきた歌に思わずツッコミを入れる。
    すると、鏡の向こうに奇妙な光景が写っているのに気付いた。驚いて、ドレッサーに近づく。
    夜の森の中、風に揺られて葉っぱが優しく音を立てて揺れている。
    明らかに、僕の部屋とは違った。

    「……僕の部屋じゃ、ない……」
    『……誰だ?』

    ビクッと身体を震わせながら、鏡を見ていると視点が移動していき、映るのは僕とそっくりな……猫耳を生やした人間だった。

    「……僕……だ……」
    『……は?』


    向こうも、僕とそっくりなことに驚いたのか目を見開く。



    これは──僕、華月 梓(かづき あず)の摩訶不思議な出会いの話だ。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works