3章 エピローグ「おう、お疲れさん」
桜夜が天界に戻ると、一番最初に出迎えてくれたのは空希だった。
「……空希さん? どうしてここに」
「んーや、なんとなくな。にしたって、お前ちょっとお人好しが過ぎるんじゃないか?」
「……それを空希さんが言いますか」
桜夜が目を伏せて小さく笑うと、空希クックと笑い返す。
「魂の持ち主たちのことも、未来がどうにかよくなるように動いてくれていたんでしょう?」
「……バレてたか。まあな、色々と動いてたぜ」
「少し不自然さを感じるところはありましたけど、アズリカや梓が違和感を感じるほどではないと思います」
「……それより、あの呪いを受け継いだやつ」
「……」
少しだけ黙って、桜夜は天を仰いだ。
「……可哀想だ、って思ったんです。あの人と同じだから」
「……あの女性(ひと)と重なって見えたんだな」
「……はい」
悲しそうな顔をしてから、空希を見つめ直す桜夜。
「……だから、あんな無茶を?」
「はい、時神には怒られるかもしれませんが……俺がなんとかしてみます」
「……にしても、本当に無茶したな。肉体が消滅してから転生までに50年しかかからないとは」
本来の輪廻転生ならば、2000年〜3000年が基本だ。
桜夜は、その魂の時間の法則や魂の浮遊時期など全てを無視してアズイルの番の彼だけ、死してから転生まで50年の短さで出会えるようにしたというのだ。
このような芸当は、彼にしかできない。
「……ホント、変に体張るな」
「……まあ。でも、後悔はしてないんです。きっと、皆が幸せになれたろうから」
そう言って、桜夜はふと最初行く時に空希からもらった紙を思い出す。
が、どこを探してもないため首を傾げているのを空希はクスクスと笑って見ていた。
………………。
「ママー、はやくはやくー!」
「あ、待って待って……今弾いてあげるから」
「あれ? まま、ここになんかあるよ?」
「……え? 紙……?」
そこには、こう書かれていた。
『がんばれよ!』
「……僕、頑張ってるよ。桜夜さん」
彼女は、懐かしさに泣きながら微笑んだ。
終