今日の自分はどこかがおかしい。
「テラさん、もっと腰上げて」
「あ、待っ……!」
深夜のシェアハウスの一室で、ぐ、と強引に彼の腰を持ち上げる。返事は端から聞くつもりはなかったし、例え聞いたとしても待つつもりなどなかった。奥の奥まで自身で満たすと、組み敷いている背中が甘い悲鳴と共に弓なりに反る。ぱさりと美しい金の髪が宙に舞い、同じく美しい裸の肩が露わになる。
今日、ホテルのラウンジでテラさんが知らない男とお茶をしていた。あとで聞くと、ただの取引先の重役、つまりビジネスパートナーだという。ただの、という割には、明らかに彼からはテラさんへの仕事以上の感情が漏れ出ていた。テラさんも気づいていたが、他人から好意を向けられるのが当然の彼にとって特に騒ぎ立てることでもなかったらしい。
(でも、僕にとっては違う……)
テラさんはとても美しい。それに、万人を惹きつける華もある。以前はそれを誇らしく思っていたが、自分以外を好きになったことがないテラさんをなんとか口説き落とし、ようやく恋人同士になれた今、僕の中で初めての感情が渦巻いている。
嫉妬、それに独占欲。全く、もう子供でもないのに、いい大人なのに。恥ずかしい。でも、行き場のないこの苦しみをどうすればいいのか分からない。だから。
「っ、ひ――――!?」
だから、僕はその肩に歯を立てた。陶器のように滑らかな、柔肌へ。
より一層高い声を上げ、テラさんはガクガクと大きく体を震わせる。あまひこ、あまひこと懇願するように何度も僕の名前を叫ぶも、吐息と混じり合いほとんど言葉にならない。更に深く歯を食い込ませると、とうとう彼はその場に崩れ落ちた。
なんで……と目に大粒の涙を溜め、テラさんが力なく振り返る。僕だって本当はこんなことはしたくない。いつだってテラさんには優しい自分でありたい。そう思うのに、もう、止まれなかった。