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    くまだ

    @enbun_yum

    文章のみです。主に、ぴくしぶにあげられないような、書きかけて力尽きたもの、短すぎるものを投稿します。

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    くまだ

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    モブ霊が書きたいけど上手く書けないので練習。年齢操作モブ霊が好きです。

    #モブ霊
    MobRei

    Galapagos「今まで、本当にお世話になりました、霊幻師匠」

    こんなありきたりな言葉に心中を引っ掻き回されるのは、後にも先にもこの時だけだろう。

    「こっちこそ、長い間世話になったな、モブ」

    そう言って霊幻は、茂夫が差し出した手のひらサイズの端末を受け取った。使い古されたそれは、スマートフォンが主流の現代において、ほとんど廃れてしまったガラパゴス携帯だ。時代から置いてけぼりにされたガラケーを大切に握りしめながら、霊幻は目の前の青年を見つめた。
    新品のスーツを着込んだ茂夫は、眩しいほどに初々しい。

    「入社式は明日だったよな」

    「はい。まだ、実感が湧かないけど」

    俺も実感湧かないよ、と霊幻は内心で呟く。初めて会った時は、ランドセルを背負った小さな子供だったのに、今や、身長は僅かばかり霊幻を越してしまったし、ガタイも昔より良くなったし、声も当然、低くなった。

    「………………大人になったんだなあ、お前」

    「寂しくなりましたか?」

    茂夫の問いに、霊幻は微笑みだけを返した。流れていった時の膨大さを思い知って、少し打ちのめされてしまいそうだった。

    「また会いに来ますから」

    「おう、ありがとな」

    そう答えつつ、茂夫が新生活に忙殺されて、格段に会う機会が減るであろう将来は容易に想像がついた。故に、後悔しないうちにと口を開く。

    「頑張れよ、モブ。応援してるからさ」

    もうきっと、応援以外に己にできることなんて無いのだろうから。

    「今は不安だろうが、努力家なお前を見ていてくれる人は必ずいる。だから、お前はいつものように、目の前のものと真摯に向き合えばいい。そうすれば、必ず付いてくるものはあるよ」

    「はい」

    眩しい笑顔。随分と表情が豊かになった。そんな茂夫を見ていると、やっぱり少し寂しいな、と思ってしまう。
    けれど、その言葉は飲み込んだ。それが、師としてできる、最後のことだと思ったから。


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    humi0312

    DONE2236、社会人になって新生活を始めたモブくんが、師匠と通話する話。
    cp感薄めだけれどモブ霊のつもりで書いています。
    シテイシティさんのお題作品です。

    故郷は、
    遠くにありて思うもの『そっちはどうだ』
     スマートフォン越しの声が抽象的にしかなりようのない質問を投げかけて、茂夫はどう答えるか考える。
    「やること多くて寝るのが遅くなってるけど、元気ですよ。生活するのって、分かってたけど大変ですね」
     笑い声とともに、そうだろうと返って来る。疲労はあれ、精神的にはまだ余裕があることが、声から伝わったのだろう。
    『飯作ってる?』
    「ごはんとお味噌汁は作りましたよ。玉ねぎと卵で。主菜は買っちゃいますけど」
    『いいじゃん、十分。あとトマトくらい切れば』
    「トマトかあ」
    『葉野菜よりか保つからさ』
     仕事が研修期間のうちに生活に慣れるよう、一人暮らしの細々としたことを教えたのは、長らくそうであったように霊幻だった。利便性と防犯面を兼ね備えた物件の見極め方に始まり、コインランドリーの活用法、面倒にならない収納の仕方。食事と清潔さは体調に直結するからと、新鮮なレタスを茎から判別する方法、野菜をたくさん採るには汁物が手軽なこと、生ゴミを出すのだけは忘れないよう習慣づけること、部屋の掃除は適当でも水回りはきちんとすべきこと、交換が簡単なボックスシーツ、スーツの手入れについては物のついでに、実にまめまめしいことこの上ない。
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