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    いっぱい食べる君が好き。スーパーのカツでつくるカツ丼は各家庭の味が出る気がして好きです。

    #0514K暁ワンライ
    0514kDawnWanLai

    ご褒美は?0514ワンライ K暁

    お題:食べ物


    暁人の大学生活ももうすぐ終わる。そのための研究とやらが、まだかかるが今日でひと段落するらしい。今日は発表だからとスーツを着込んで妙に緊張した面持ちをしていたのを、年相応の顔もするもんだと思いながら送り出した朝のことを思い出す。スーパーに来た目的は、今日頑張ってきたらご褒美を用意して待っててやる、という約束を果たすためだ。お目当ては……これだ。惣菜コーナーのど真ん中で主役を張っているトンカツ。トンカツを食うなら揚げたてが一番美味い。それならそれで作る。だが、今日作る料理はこれで十分だ。カゴに4枚放り込んで、そのほかの買い物も済ませて、帰宅したら下準備だ。
    暁人は、俺が作るカツ丼が好きだという。調味料の配分が絶妙なんだとかで、なるべく再現できるように細かく覚えるようになった。今じゃ、毎回ほぼ同じ味付けで作れる。買ってきたトンカツに味をつけただけの料理で喜んでもらえるなら、いくらでも作ってやる。
    ただ、今日はご褒美だからな。午前中、暁人がいない隙にと買ってきたオーブントースター。これで揚げ物温め直しのクオリティが上がる。卵とじのカツ丼にするなら温め直す必要はない。何をしたいかと言えば、カツ丼の邪道とも言われるソースカツ丼も作る。食べ盛りの大学生にはこれでいいだろう。今日のサラダは千切りキャベツにして、添えられるようにしておく。まぁそのまま食っても美味いからな。添える漬物もちゃんと漬物屋で買ってた上質なやつだ。これなら、十分ご褒美としての役割を果たすだろう。
    薄切りの玉ねぎを出汁でくたくたに煮込んで、そこに調味料を投下。カツを潜らせながら足して、カツ3枚分を玉ねぎと一緒に卵で閉じて、仕込みを終える。時計に目をやれば19時を回る頃。そろそろ暁人が帰ってくるだろう。玄関に目を向けたタイミングでドアノブが回った。
    「はぁ……ただいま、KK」
    「おかえり。米炊けたぞ」
    「うん、お腹空いてクタクタだよ」
    「どうだった?上手くできたか?」
    「あー……わかんない、あればよかったのか……うーん、よかったのか?」
    「俺に聞くな」
    納得が行かなそうな顔をしながらもだもだとしているから、とりあえずスーツから部屋着に着替えさせ、食卓に座らせる。辛気臭い顔してないで、飯だ飯。
    「今日はご褒美用意してるって言ったろ」
    「うん、楽しみに帰ってきた。すごいいい匂いがしてるね」
    「用意するから、キャベツ摘んで待ってろ」
    背後では温め直しているフライパンがくつくつといい音を立てている。それを止め、暁人用の馬鹿でかい丼に盛り付けた白米の上に、カツ1枚分を乗せて少しつゆをかける。暁人はこれが好きだから。そのまま振り向き様に目の前においてやれば、見るからに嬉しそうに目を輝かせる。箸とスプーンを用意しておいたのはそういうことだ。
    「……KK!」
    「いっぱい食えよ。お前の分、まだあるからな」
    「嬉しい……!ありがとう!いただきます!」
    「火傷すんなよ」
    自分の分をよそいながら、勢いよく食らいつく音に思わず頬が緩む。そんなにがっつかなくても、誰もとらねぇよ。ガキかって。
    「美味しい……!」
    でかいはずの丼はもう半分がなくなっていた。やっとお腹が落ち着いたのか、話す余裕が出てきたらしい。俺はいつもの茶碗に小さく作って、一緒に食卓についた。
    「カツはスーパーのだからな」
    「それがまたいいよね」
    「手軽が一番だ」
    「この絶妙な衣が出汁を吸って、フワッとして美味しい」
    「そうだな、ゆっくり食えよ。今日はまだあるからな」
    「うん!」
    目の前でぱくぱくと丼が空になっていくのは、見ていて気分がいい。すっかり空にしたら、チラッとこっちを見るのも可愛いんだよな。
    「おかわりは?」
    「いる!」
    聞いてやればガキらしい笑顔で差し出されるガキらしくない丼にもう一度同じだけ盛り付ける。あ?ああ、3枚が暁人の分だ。俺はそんなに食えない。
    「今日はパーティーだね」
    「パーティー?」
    「美味しいものがいっぱいあったらパーティーだよ」
    「そうなのか」
    その理屈はよくわからないが、お茶を飲みながらなんだか楽しそうにしているからそれでいいかと思う。帰ってきた時のどんよりした顔に比べたら、ずっといい顔してる。
    「今日は味変の3杯目もあるが、食えるか?」
    「えっ、そんなに食べていいの?!」
    「今日は特別だからな」
    「味変?なんだろう?食べたい」
    「そうかそうか。なぁ暁人。キッチンに何か増えてないか?」
    「増えて……あ!あれなに?」
    レンジの上に鎮座させたオーブントースター。その中にはもうカツがセットしてある。つまみを回すと、ブンッとオレンジの光が灯る。
    「今日買ったんだ。揚げ物温め直しに特化したトースター。もちろんトーストも焼けるぞ」
    「今度から2枚一度に焼けるね」
    「そうだな」
    ジリジリとカツが温まる間に、暁人の手元の丼はまた空になった。早いな。
    「ただのカツだけど、味変なの?」
    「これを浸るくらいつけてから食べるんだ」
    「えっ?ソース?」 
    「ソースカツ丼、食ったことあるだろ」
    「実はないんだ。卵とじのカツ丼ばっかり食べてた。ソースカツ丼って美味しいの?」
    「俺は好きだな」
    「そうなんだ。じゃあ食べないと」
    チンっと終わりを告げたトースターを開けると、カツの表面はシュワシュワと音を立てている。うん、美味そうだ。
    「KKも食べる?」
    「いや、俺はいいかな」
    「えー、一緒に食べようよ」
    「じゃあひときれだけな」
    取り皿に乗せ、少し多めのソースを纏わせる。それを白米の上に薄くしいたキャベツの上に乗せ上げていく。ひときれだけ残して、それは自分の米の上に。
    「ほらよ」
    「わー、初めて食べる!いただきます!」
    3杯目とは思えない食いっぷりだこと。よく食うね。眺めてるだけでお腹いっぱいになりそうだ。
    「これ、キャベツがいいね。ソースが濃くてカツの油もこってりしてるところを軽くしてくれる」
    「おじさんになると、そのキャベツでも騙せなくなるんだよ」
    「もったいないね」
    「だから今のうちに食っとけよ」
    「うん」
    ソースカツ丼もヒョイとその腹の中に消えていく。よくそんなに食えるな……どうなってんだ、その腹は。一口食べるごとにテンポが落ちてもいいはずなのに、ままだ勢い衰えず、もぐもぐとその頬が膨らんでは戻るのを眺めていた。
    すっかり炊飯器も鍋も空になった。食後のアイスものんびりと楽しんで、あとは皿洗って風呂。
    「先入っていいぞ」
    「うん。でも何かお礼がしたいな、こんな美味しいの作ってもらったんだもん」
    「お礼ぃ?お礼なぁ……体で返してくれりゃいいぞ」
    使い古された表現をあえて使って揶揄うと、文句の一つでも飛んでくるかと思ったのに、少し黙ったあとにチラッとこっちを伺う。
    「じゃあ、返そうか」
    「いいのか?」
    「……先にお風呂行ってくる!」
    少しだけにやけた口元と赤みのある頬を残して、そそくさと風呂に逃げたのを確認する。手元にある皿を落とさないように集中し直す。先ほどのセリフと顔を頭の中で反芻して、つい口元が緩んだ。据え膳食わぬは男の恥、って知ってるか、お暁人くん?返そうか、って返してくれるならありがたく、いただきますけどねぇ?
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