黒塗りのラブレター拝啓
君があんな風に泣くなんて、知らなかった。
いや、僕は君のことなんて、何も知らないんだ。
どんな風に笑うのかも。何を思っているのかも。どうやって生きてきたのかさえ。
ずっと僕の心の中に君という存在が、何かしらの形で居たということは。紛れもない事実だと言い切りたいが、これまで君のために何もできなかったことを思えば、近づくことさえできない。
何故そんな風に泣いているのか、胸が引きちぎられるほど苦しくて、気になって目に焼き付いて離れないけれど。
泣いている姿に、生きているという鼓動と躍動を感じて、崩れ落ちそうなほど安堵している自分もいる。
君がそんなに素顔を晒せているのが。誰がいるからなのか、誰の前なのか、誰のためなのか。そんなことさえ気になってしまうけれど。
生きて。泣いて。笑って、悲しんで。そこに未来があればいい。
苦しんでも一握りの希望がその手にあって、君の目の前を照らしてくれればいい。
ここまで生き抜いてくれた君には。君の手には、きっと確かにその希望や愛があるはずだから。
泣いてる君に。全てをかなぐり捨ててもこの手でかばいたい、突き抜けるような衝動はあるけれど。
この手には、そんな資格もないんだ。
だから。
君だけは。生き延びて。
敬具