固く尖ったページの端を捲る指が静かに空を切る。
飲んだり騒いだりが実体のイベサー、ケルティックサークルが勝手に部室という名の溜まり場にしている小規模の廃講義室。フィンは再び指に摘んだ紙をそろりと離してから次の見開きをそっと手で押さえた。手に触れたそのページの中では制服姿の少年と少女が光の差し込む二人きりの教室で向かい合っている。
「ね、そこなんか特に良いでしょう!?憧れるわよねこういうの!」
本の中に吸い込まれそうになっていた意識は、明るく華やかな声によって途端に現実に引き戻された。
メイヴはフィンが読んでいた漫画のページを覗き込む。
「私とクーちゃんの出会いだって運命的だったからこっちのが良かったってわけじゃないけど…でもこれはこれで捨てがたいわけ!わかる!?」
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