精神的主高な高主を捻出したい 常ならば、任意の時分に目を覚ますことが出来る。あるいは、害意を静穏に包んだ足音一つでも身体が反応する。
そんな『刀』が、雀の囀りを聞くまで起きずに寝入るのは、宿で睦言を交わした時だけだ。
「……」
屡叩きの先、差し込む薄日が、穏やかに寝息を立てる高杉の頬に当たる。病の影響で以前より痩せはしたが血色は良く、毎度それに安堵している。 気怠さの残る身体を静かに起こし、喉の渇きを自覚した。身体を捻り、枕元の先の福梅盆に用意された鉄瓶を目指し、膝を滑らせる。
間もなく手が届く―
「っ」
というところで、襟肩明きが、くんと後ろに強く引かれる。浴衣の造りから息苦しさは無いものの、完全に油断していた身体は簡単に転がった。
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