週末会える?と軽い口調で問われ、自分とミスタの配信スケジュールを頭の中で思い出した。俺も彼も土曜の夜から日曜の昼までは空いているはずだ。日付と時間を提案すればうんうんと笑みが返ってくる。
「じゃあその日、ホテルに一緒に泊まらない?」
「……もしかして今俺は誘われているか?」
「……そっちのほうが良ければ、そういうことにしても良いけど?」
「……。……会ってから決めよう。それで、本当はどういう予定で?」
「ごはん一緒に食べたーい! そんで、クーラーの効いた涼しい部屋でさ、気持ちよく寝たいわけ。抱き枕が欲しいからおまえは抱き枕役」
「おまえに抱きしめられて何もせず眠れと?」
「抱き枕だからな」
「ひどい男だ」
「へへへ」
ここ最近の暑さでミスタが参っていたのは知っている。たしかに空調の整った場所で気持ちよく眠るというのはとても良い提案に思えた。なんの下心もなさそうな純粋な笑みを見せるのはどうかと思うけれど。
「ホテルを取るのはこれから?」
「うん。ヴォックスって気に入ってるホテルとかある?」
「ラブホテル」
「以外で」
「もっと可愛い反応をしてくれ。んー、オーケー、俺の贔屓のホテルがおまえの家の近くにもあったはずだからそこにするのはどうかな」
「こっち? ヴォックスの家の方でいいよ」
「暑い中移動させたくない。まだ体調が万全ではないだろう」
「……あー、……さんきゅう」
「オーウ……、可愛い反応をありがとう、好きだよ」
「うるせー!」
小動物のような威嚇の声をあげ、ミスタは顔を顰めて見せた。喉を鳴らして笑ってやれば余計にぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。分かりやすい照れ隠しは可愛くて大好きだ。けれど、今すぐ抱きしめたくなるから程々にしてほしい。
「そうだミスタ、キングサイズのベッドで眠ったことはあるか?」
「へ? キング? それってどんなやつ?」
「おまえが横向きに寝ても落ちないくらいの大きさだよ。大きなベッドでのびのびと眠る快感をキミに教えてあげよう」
「まじかよ、それ誰が使うの? デカすぎない?」
「俺とおまえが一緒に眠るのに使えるさ」
「ふーん? そんなデカくなくても良くない? どうせくっついて寝んだから」
「……なるほど、狭いベッドでくっついて眠るのもいいかもしれない」
「うん」
「でもせっかくだからキミに俺の好きなものも知ってもらいたい。今回は俺のお気に入りを教えるから、次はキミのお気に入りを教えてくれ」
「ん、ふふ、オーケー。俺のお気に入りなんてヴォックスには驚かれちゃうだろうけどな?」
「ああ、ぜひ驚かせてくれ」
ニヤリと怪しげに笑う顔も大好きだ。週末の逢瀬が余計に楽しみになって俺も意識せず笑みが溢れた。抱き枕役になんて収まってやらないから、ミスタも週末を楽しみにしているといい。