宗みか「奏汰と小僧め……、容赦無く吸い付いてくるから……」
入浴時に慎重に尚且つ丁寧に洗ったもののまだヒリヒリと痛む胸部の中心を擦りながら自室で管理している塗り薬を探すが見つからない。
「おかしいね、ここに置いてあるはずなのに」
自室でも衣装作りをやっている為布やら装飾品こそ多いが、保管場所や位置を決めている為、物を無くすほど把握してない訳では無い。
「そういえば、影片に渡したのだった…」
皿洗いのバイトを始めたと聞いて手が荒れる前にと渡した事を思い出した。
影片の事だからまだ起きているだろうっと塗り薬を取りに行こうっと思った矢先、部屋に扉をノックする音が響く。
「入っていいよ」
「おこんばんわぁ。お師さん、今大丈夫やろうか?」
ノックの主は今し方向かおうとした部屋の主、影片みかだった。
おずおずっと入室してきた影片は入浴を済ませた後らしく、僕が見立て選んだパジャマを着用している。
「丁度良かった。今し方、君の部屋に塗り薬を取ろうと向かおうとしていた所なのだよ」
「んあ、そうやったんか。ごめんなぁ、お師さん。俺、気ィ使えへんから持ってこぉへんかったわ」
「後程取りに行くから構わないよ。っで、君は何の用だったのかね?メンテナンスはこの間済ませたばかりのはずだよ」
影片が22時を過ぎた夜更けに僕の元に訪れる事は滅多になく、メンテナンスを行う時や僕が呼び出す時、後は情事を行う時くらいだ。