地面から陽炎が立ち上り、景色を歪めて見せている。ゆらゆら、ゆらゆら、……ぽたり、汗が流れ落ち、顎を伝って地面に落ちた。ジュッと、音を立てて蒸発してしまいそうだ。
「やってみろ、」
アッシュは陽炎のその先にいる人物を真っ直ぐに見据えて弓を引き絞った。
「僕はもう、あの頃の僕じゃない……弱い自分を、変えるんだ!」
矢を放つ瞬間、手が震えそうだった。相手の紫色の美しい髪が真っ赤なマグマの光に反射して、熱風にマントが翻る。ああ、楽に避けられてしまった。新しい矢をつがえて、すぐに構える。キッとアッシュを睨みつけたままだった彼が、部下たちに向かって剣でクイと指示を出した。まずい。そう思う間もなく、彼の、ユーリス=ルクレールの部下たちが怒号を上げて武器を構え、突撃してくる。アッシュの周囲にいたローベ家の騎士団はすっかり引き付けられて、アッシュはいよいよユーリスと二人きりで対面した。
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