雨宿り「ピッコロさん!」
ぼつ、ぼつと大きくなる雨粒を受けて組手の手を止める。
遠くから気を放っていた悟飯が、駆け寄ってきて、俺の手を掴んだ。
普段は上げている髪がぐしゃりとへたって目にかかっている。
それをかき上げてやれば、うちで雨宿りしましょうと手を引かれ、悟飯の家へと向かった。
玄関先でぎゅっと胴着を絞ると家の中に吸い込まれて行く。
中からばたばたと走り回る音を聞きながらマントを絞っていると、お待たせしました、と悟飯がひょっこりと顔を出した。
「いま、お母さんと悟天もいないみたいで。これ、使ってください」
差し出されたタオルで軽く身体を拭う。
服も新しいものを出してしまおうとした瞬間、ずい、と緑色の服を渡された。
「なんだ、これは」
「僕のジャージです。ちょっと大きいの買ったのがそれしかなくて。」
俺は自分の服は自分で出せる!と叫ぶ前に、僕とお揃いですいません、と申し訳なさそうに眉を下げられ、ぐっとその言葉を飲み込んだ。
致し方なく着たその服は、確かに悟飯よりは大きいが、俺には少し足りない。
想定通りの展開に顔を顰めてみても、悟飯は気にする様子もなく、どころか何処か嬉しそうに笑う。
「すいません、少し小さいですね」
「……ふん」
満足そうなその顔を崩したくなった。
タオルに包まれる頭をかき混ぜると、わっ、と俺の手に伸ばされる悟飯の手は裾から少ししか出ていない。
「お前の方は随分でかいようだな」
「もう…これから大きくなるんで!」
不貞腐れたように膨れる顔に満足して、にっと笑えば、悟飯もつられたように笑った。