成長と共に近づく距離休憩に入り、悟飯が差し出した水を岩に座って飲む。
悟飯は立ったまま俺を見ながら、何かに気がついたように首を傾げた。
「…ピッコロさんて…」
あれ?と顎やら頭やらに手を回しながら俺の周りをぐるぐると回る。
いい加減それも鬱陶しく、なんだと呼び止めればうーん、と唸って指を立てた。
「なんか、身長低くなってますか?」
「は?」
「いや、なんかもっとこう、座ってても僕より目線が高かった気がして…」
立ってる時は気が付かなかったけど、と呟きながらまた、俺の背中の方をきょろきょろ覗き込む。
「なんだそんなことか。そうだな。パンが生まれた時だから3年ほど前か。あの頃よりは低くしている。」
「している?」
「あぁ、そうだ。お前のところだと何かと不便だろう」
俺の言葉に大方察しがついたのか、ああ!と手を打って俺の横に座った。
「そっか。ピッコロさんは身体の大きさを変えられるんでしたね」
「ああ」
傾けられたペットボトルから水がどぷどぷと吸い込まれるように消えていく。
何処にそんな空きがあるのか。
こいつらの食事はいつ見てもそう思わされる。
「…でも、そう言われてみれば僕も結構背が伸びたけど、ピッコロさんとの差ってあんまり変わらなかったかも。あれもわざと伸ばしてたんですか?」
「ああ。あれは…」
ピッコロさん!と俺を仰ぎ見る少年。
期待と尊敬に満ちた眼差しではにかむ表情。
屈託のない純真すぎるその瞳があまりにも近くにくれば、思わず目を細めずにはいられなかった。
だから逃げるようにそうしたのだとでも言えば、また調子に乗って俺を揶揄うように笑っては、そんなんじゃない、嬉しいだけだとはにかむんだろう。
「ピッコロさん?」
座り込んでちょうどの位置にくる視線。
覗き込んだ顔が近い。
今ではその顔も見慣れたものだ。
近すぎる距離感の掴み方も、その愛情の受け取り方にも。
無防備なその後頭部を掴み唇を奪う。
「ふ、これくらいがちょうどいいだろう」
「…つ、ツボがわかんないなぁ」
困ったように照れ笑い、もう一度顔を寄せる。
触れるだけのそれで、どれだけ満たされるか。
あの頃の俺は想像もつかないだろうなとおかしくなった。