意識してくれないか「レン、おはよう。あ、髪の毛ちょっと跳ねてるぞ。またアドラーに起こされたのか?」
ウィルは俺に会う度笑顔で姉貴面をしてくる。
(もちろんアキラや他の年下にもそうだけど)
別に気にしてなかったんだ、昔は。世話焼きなのは小さい頃から変わらなかったし、ウィルだから嫌ではなかった。
だけどルーキーとしてエリオスに来た頃からだろうか、俺を見掛ける度に姉貴面して世話を焼くウィルを見るととてもイライラして仕方なかった。
アキラに世話を焼くように、まるで弟に接する様に、…他の奴らにもそういう態度を取っているんだろう?
「…俺に触るな、」
「そんな事言ったって…。仕方ないだろ、レンは私の…」
「弟みたいだ、って言うんだろ?」
俺の髪に触れようとするウィルの白くて綺麗なその手を思いっきり払う。
そして払ったはずのその手をギュッと握りしめた。
「痛、」
「…俺は」
俺は、そんなのじゃ足りない。
姉弟なんて関係じゃ、足りない。
いつになったら俺を男として見てくれるんだ、ウィル。
「っ、レン…?」
「ウィル、俺は」
「い、言わないでっ!」
決死の覚悟で吐き出そうとした言葉はウィルの大きな声に掻き消された。
「…なんでだ」
「だっ、て…こんな廊下で、まだ仕事があるし…。それに、この関係を壊すのが怖い、から」
「俺は、もうとっくに変わった。ウィルの思ってる様な昔の俺はもう居ない。…このままの関係じゃ、いられないんだ」
「ひゃ、っ!」
伝われ、と願いを込めてウィルに跪いて手を取り、キスをした。
「わ、レンってば…っ!」
「俺は、ウィルを愛してる」
「ひぇ、…そんなの…狡いよぉ」
ウィルの瞳にキラキラとした薄い水の膜が張る。
…この関係が変わるまで、あと数秒。