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    いなばリチウム

    @inaba_hondego

    小説メイン
    刀:主へし、主刀、刀さに♂
    mhyk:フィガ晶♂
    文アル:はるだざ、菊芥、司♂秋
    文スト:織太

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    POIPOI 52

    いなばリチウム

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    デキてるけどえっちなことはまだな主へし 催眠術ネタ
    https://poipiku.com/IllustDetailPcV.jsp?ID=594323&TD=8385890
    これと同じ二人だけど読まなくても多分大丈夫

    催眠主へし へし切長谷部という刀剣男士は、一見生真面目そうでとっつきにくそうな印象があるが、一度身内とみなすと、急に色んなガードが緩くなるかわいいやつだ。

     今日も戸を開け放したまま、机の上に広げたままの本を見て、そんなことを思う。実質長谷部の個室みたいになっている近侍部屋とは言え、俺を含め出入りは自由なんだからもう少し気を付けたらいいのに。とはいえ、せっかく緩んだガードをまた強固にさせるのも、もったいないような。見るのも悪いなと思いつつ、何せ堂々と広げてあるのでつい表紙を見てしまう。

    『素人にも刀剣男士にも簡単にできる!害のない催眠術のかけかた』

     ……これまたあやしい本を手に入れたもんだ。政府の公認マークが入っているから、万事屋あたりで買ったんだろう。公認マークが入っているからって信用しすぎるのもよくないぞ。
    彼が『これで貴方も審神者と恋仲!政府特別監修刀別解説完全収録パーフェクトマニュアル』というふざけたタイトルの本に付箋を付けてまで愛読していたことを思い出す。俺にバレて顔を真っ赤にしていたのは記憶に新しい。少し、考えるが、まあいいか、と触れずにおくことにした。あまりあの手の本に書いてあることを鵜呑みにするなよ、と前も伝えているし、主であり恋仲でもあるとはいえ、娯楽にまでいちいち首をつっこまれてはさすがに鬱陶しいだろう。

     と、結論付けたのは、正直俺には関係ないだろうと高を括っていたからだった。
     本は公認マークが入っていたとは言えジョークグッズの一種のようだったし、机の上に粗雑に置かれていた。真剣に読むようなものじゃないものな、と思って、その瞬間まで存在も忘れていたくらいだ。

    「主、ちょっと、よろしいですか」
    「ん、なに?」

     一日の仕事を終え、明日の予定を確認し、さあそれぞれの部屋に戻るか、というところでおもむろに長谷部が紐にくくった五円玉を目の間にぶら下げる、その瞬間までは。

    「……なに?」

     躊躇ったのも、また一瞬だけだった。長谷部は緊張した表情で、ゆっくり五円玉を揺らしている。

    「ええと、この五円玉を、見ていて下さい」
    「……うん」

     長谷部、嘘だろ、という気持ちはもちろんあった。真に受けちゃったのか、あんなに怪しい本の内容を。
     しかし、長谷部が俺に催眠術をかけてなにをするつもりなのか、そっちの方が気になる。

     五円玉はゆっくりと、右、左、右、左と揺れている。長谷部は真剣そのものという顔で五円玉を目で追っている。なんだか長谷部の方が術にかかりそうだな、と笑いそうになるのを我慢して、俺もその五円玉を、というより長谷部の目線を追いかける。

    「主は、段々……段々……ええと……」

     決めてなかったのか。何でこういう時に急に手際が悪くなるんだ。

    「っ段々、俺と……手を繋ぎたくなる……!」
    「……」

     噴き出さずに済んだのはほとんど奇跡といってもいい。どうにか、声が漏れる前に俺は五円玉をぶら下げてない方の長谷部の手を握った。膝の上で、硬く握りしめられていた拳の上から、そっと自分の手を重ねる。

    「! !!」

     長谷部はみるみるうちに真っ赤になって、五円玉も不安定に揺れた。
     恋仲になったのはつい最近のことで、主と臣下である時間の方が長いということもあって、あまりそれらしい触れ合いはまだしていなかった。俺はもっと触れたいし色々したいと思っていたけど、なんだ、長谷部も同じ気持ちだったのか。面映ゆい気持ちになりながら、俺はそっと長谷部の顔を覗きこんだ。長谷部は、口元を綻ばせ――それからさっと手を退けた。
     え、と声に出す暇もなかった。揺れていた五円玉を素早く懐にしまい、呆然とする俺の目の前でぱん! と手を叩く。はい、おしまい、とでもいうように。実際、それが本に書かれている手順の最後なのだろう。あとは何事もなかったように、
    「それでは、おやすみなさい、主」
     そう言っていつものように立ち上がろうとするので、今度こそ「おい」と声が出る。立ち上がりかけた長谷部の腕をしっかり掴むと、明らかに狼狽した様子だった。
    「ななななな何か?」
    「何、今の」
    「はて……? なんのことやら……」
     大根演技すぎる。
    「いくらなんでも本に書いてあることを鵜呑みにし過ぎだろ。そう簡単に催眠術かけられてたまるか」
     狼狽していた顔がみるみる内に真っ赤になっていく。
    「で、では先程は、術が効いたわけでは……?」
    「ない。というか、手くらい、いつでも繋ぐし……」
     へなへなと力が抜けたかのように座り込んだ長谷部の腕から手を滑らせ、もう一度手を掴み、指を絡ませる。びく、と肩が揺れた。
    「……変な本に頼る前に、言って欲しいんだけどな」
    「も、申し訳、」
    「あっ、いや、違う、謝って欲しいわけじゃない……俺も言葉が足りなかった」
     目を離すと変な方向に振り切るのはこれが一度目ではなかった。もちろんそんな長谷部を揶揄うのも嫌いじゃないけど、そればかりなのもよくはない。
    「……他に、俺にして欲しいことないの」
     いい機会だし、と手をにぎにぎと戯れるように握ってみる。長谷部は恐る恐るといったように顔を上げ、俺を真っ直ぐに見つめた。
    「して欲しいこと、ですか」
    「何でもいいよ」
    「なんでも……」
     視線がまたそらされ、うろうろと彷徨う。数秒考えた後、「では」と長谷部は再び口を開いた。
    「だ、」
    「だ?」
    「抱き、しめて頂けませんか、こう、ぎゅっと」
     短刀にたまにそうしているのが羨ましかったと、照れたように言う。
     抱き締めるだけ? それだけ? 何でもって言っているのに???
     そう、考えたのもほんの数秒だった。何でもいい、と言った手前、他にないのかなんて言えない。
    「……こう?」
     短刀を抱きあげることは確かにあるけど、ほんの戯れというか、遊びの延長というか……とにかく、羨ましがられるようなものではない。そう思いながら長谷部の背中に手を回し、ぎゅうと抱き寄せると、腕の中からは「ひぇ」と声にならない声がして、やはりこれが本当に望まれていることなのかはよく分からなかった。


    おしまい
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    いなばリチウム

    TRAININGhttps://poipiku.com/594323/10668650.html
    これの続き。騙されやすい審神者と近侍の長谷部の話。
    だまされやすい審神者の話2 疎遠になっても連絡をとりやすい、というタイプの人間がいる。

     それがいいことなのか、はたまたその逆であるなのかはさておき、長谷部の主がそうだった。学校を卒業し、現世を離れてから長いが、それでも時折同窓会やちょっとした食事会の誘いがあるという。ほとんどは審神者業の方が忙しく、都合がつかないことが多いけれど。今回はどうにか参加できそうだ、と長谷部に嬉しそうに話した。
     もちろん審神者一人で外出する許可は下りないので、長谷部が護衛として同行することになる。道すがら、審神者は饒舌に昔話をした。学生の頃は内気であまり友人がいなかったこと、大人しい自分に声をかけてくれたクラスメイトが数人いて、なんとなく共に行動するようになったこと。卒業する時に連絡先を交換したものの、忙しさもありお互いにあまり連絡はしていなかったこと。それでも年に一度は同窓会や、軽く食事でもしないかという誘いがあること。世話になっている上司を紹介したいと何度か打診され、気恥ずかしさはあったものの、紹介したいと思ってもらえることは嬉しかったこと。今回やっと予定が合い、旧友とその上司に会えること。
    1820

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    厨に行くと珍しい姿があった。
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    あっという間に白くなった桃が切り分けられていく。
    「ほれ口開けろ」
    「あ、ああ頂こう」
    意外な手際の良さに見惚れていると、桃のひとつを差し出される。促されるまま口元に持ってこられた果肉を頬張ると軽く咀嚼しただけでじゅわりと果汁が溢れ出す。
    「んっ!」
    「美味いか」
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    「ならよかった。ほら」
    「ん、」
    主も桃を頬張りながらまたひとつ差し出され、そのまま口に迎え入れる。美味い。
    「これが最後だな」
    「もうないのか」
    「一個しか買わなかったからな」
    そう言う主に今更になって本丸の若鳥たちに申し訳なくなってきた。
    「まあ共犯だ」
    「君はまたそう言うものの言い方を……」
    「でもまあ、らしくないこともしてみるもんだな」
    片端だけ口を吊り上げて笑う主に嫌な予感がする。
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    小腹が空いて厨に行ったらひとり夏蜜柑を剥いていた大倶利伽羅に出くわす話
    夏蜜柑を齧る

     まだ日が傾いて西日にもならない頃、午後の休憩にと厨に行ったら大倶利伽羅がいた。
     手のひらに美味しそうな黄色を乗せて包丁を握っている。
    「お、美味そうだな」
    「買った」
     そういえば先程唐突に万屋へ行ってくると言い出して出かけて行ったのだったか。
     スラックスにシャツ、腰布だけの格好で手袋を外している。学ランによく似た上着は作業台の側の椅子に引っ掛けられていた。
     内番着の時はそもそもしていないから物珍しいというわけでもないのだが、褐色の肌に溌剌とした柑橘の黄色が、なんだか夏の到来を知らせているような気がした。
     大倶利伽羅は皮に切り込みを入れて厚みのある外皮をばりばりとはいでいく。真っ白なワタのような塊になったそれを一房むしって薄皮を剥き始めた。
     黙々と作業するのを横目で見ながら麦茶を注いだグラスからひと口飲む。冷たい液体が喉から腹へ落ちていく感覚に、小腹が空いたなと考える。
     その間も手に汁が滴っているのに嫌な顔ひとつせずばりばりと剥いていく。何かつまめるものでも探せばいいのになんとなく眺めてしまう。
     涼やかな硝子の器につやりとした剥き身がひとつふたつと増えて 1669

    いなばリチウム

    DONE情けない攻めはかわいいね お題ガチャより
    https://odaibako.net/gacha/1462?share=tw
    >長谷部に告白している最中、好きすぎて感情が溢れて泣き出す審神者
    情けない攻めの審神者×長谷部シリーズ① 長谷部のことが、ずっと好きだった。顕現した瞬間に綺麗で頼りになりそうな人が来てくれて良かった、好き、って思ったし、出陣すれば、時には無茶することもあったけどいつだって部隊長として他のみんなを引っ張ってくれたし、戦う姿は凛々しくてかっこよくて好き、って思ったし、近侍になって細かな事務作業やサポートを丁寧にしてくれる上にいつも俺のことを気遣ってくれて優しい、好き、って思ったし、とにかく好きじゃない瞬間がなかった。最初は、単純に臣下への好意だと思っていたけれど、そうじゃないよこしまな気持ちが溢れてくるのを止められなくて、枕や下着を濡らすことも一度や二度じゃなくて、そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。俺は主で、長谷部は臣下なのに、いわば上司が部下によこしまな気持ちを抱いているなんて、それも抑えられている内はいいけれど、いつか勢い余って長谷部を押し倒してしまいそうでこわかった。こわいのは、そんな自分もだけど、超絶仕事が出来て優秀で気遣いの天才の長谷部のことだから、主の俺に対しても気遣って拒絶しないかもしれないことだ。そんなの、長谷部が可哀想だし、俺は世界一最低の主だ。だから、せめて勢い余らない内に長谷部に心の内を明かして、落ち着いて話が出来るうちに長谷部を遠ざけるしかないと思ったのだ。理由を言わずにそうすることも出来たけど、長いこと近侍を務めている彼を急に遠ざけたりすれば彼自身が自分の中に非を探して気落ちしてしまうと思った。長谷部は全然悪くないのだから、理由を言わないのはあまりにも自分勝手だ。嫌われてもいい。気持ち悪がられてもいい。俺の耳に入らない範囲なら、「上司に性的な目で見られてるらしくてまじさいあくきもい」みたいな陰口叩いててもいい。一方的な好意の吐露って時点で絶対きもいよなとは思うけど、俺が過ちを犯す前に手を打つしかない。
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